更新日: 2020.06.01 子育て
私立高校の授業料実質無償化って?その内容をおさらいしよう
特に教育費は自分自身ではなく、次世代を担う子どもに費やすお金であることから、節約や削減することが難しい、いわば聖域ともいえる資金です。
教育費の特徴として、「必要となる時期が定まっている」ことと「大学・専門学校などの高等教育に要する費用が大きなウェイトを占める」といった点が挙げられます。
そこで、教育費の準備には長期的な資金計画が欠かせません。このため、子どもの誕生とほぼ同じタイミングで高等教育機関への進学に向けて貯蓄や学資保険などで準備を始めることが一般的です。
しかし、独力で教育費の全額を賄うのは負担が大きいため、児童手当などの公的制度が整備されています。
今回は、子どもにまつわる公的制度であり、高校在学時の経済的負担の軽減を行うことができる「高等学校就学支援金制度」について解説させていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
高等学校就学支援金制度のあらまし
高等学校就学支援金制度は、高等学校等の授業料の支援を行う制度であり、全国の8割の生徒が利用しています。本制度を利用するには、次の3つ要件をすべて満たす必要があります。
≪受給要件≫
1 在学要件(国立・公立・私立は不問)
全日制・定時制・通信制を含む高等学校や特別支援学校の高等部や高等専門学校、専修学校の高等課程、告示で指定した外国人学校に在学していること。
2 在住要件
日本国内に住所を有していること。
3 所得要件
世帯の所得要件があり、両親・高校生・中学生の4人家族で両親の1人が就労というモデル家族では、年収910万円が制度利用の可否を左右する年収といわれています。しかし、所得の判定基準は、正確には世帯年収を用いるのではなく、以下の計算式で判断されます。
・2020年6月まで
両親2人分の道府県民税と市町村民税の所得割の合算額が50万7000円未満であること。
・2020年7月以降
両親2人分の市町村民税の課税標準額×6%-市町村民税の調整控除の額が30万4200円未満であること。
新しい所得要件の判定に用いる課税標準額などは「マイナポータル」から確認することができます。所得要件の判定額は同じ世帯年収であっても世帯人数や年齢構成、世帯内で就労している人数などによって変化するため、一概に世帯年収のみで判断してしまわないように注意しましょう。
≪支給額≫
支給額は、公立高校の授業料相当額である、月額9900円(年額11万8800円)が基準額となりますが、授業料がより安い国立高校や定時制・通信制の場合は支給額が抑制され、授業料が比較的高い私学では支給額が加算されることになります。
2020年4月より、高等学校就学支援金制度の私学の加算額が一定の所得以下の場合以前よりも強化され、私立高校の授業料に関しても実質無償化が行われる運びとなりました。
・2020年3月まで(年収目安はモデル家族による)
年収目安270万円未満:月額2万4750円(年額29万7000円)
年収目安270万円から350万円未満:月額1万9800円(年額23万7600円)
年収目安350万円から590万円未満:月額1万4850円(年額17万8200円)
年収目安590万円から910万円:月額9900円(年額11万8800円)
・2020年4月以降(年収目安はモデル家族による)
年収目安590万円未満:月額3万3000円(年額39万6000円)
年収目安590万円以上:月額9900円(年額11万8800円)
給付金はさかのぼって支給されませんので、受給要件を満たした場合は速やかに申請を行うことが大切です。
また、都道府県ごとにそれぞれ支援制度が整備されており、例えば、東京都では年収910万円未満の世帯までは、私立高等学校等授業料軽減助成金という制度を活用すると私立高校が無償になりますので、お住まいの自治体で実施されている制度を確認することも大切です。
まとめ
大学や専門学校などの高等教育を修めることによって、生涯賃金にも差が生じるといわれています。しかし、高等教育機関への進学は多額の費用負担が生じるため、教育費が計画通りに準備できなかった場合、奨学金などを利用することになります。
しかし、返済が必要な貸与型奨学金を利用した場合、返済が子どもに大きな負担としてのしかかってしまう恐れもあります。
高等教育機関への進学を間近に控えた高校時代は資金準備の最後のチャンスです。返済が不要な高等学校就学支援金制度を確実に利用し、以後の大きな支出に備えるようにしていきましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表