更新日: 2020.05.13 その他
専業主婦の『離婚後のお金』、どうやって暮らしていけば良い?
30歳の時に、同じ会社の3つ年下の同僚との間に子どもを授かり、結婚しました。長女を出産後、その後32歳で次女、35歳で長男が生まれ、今では3人の母親です。
長男が中学生になるので、仕事をしようと思っていた矢先にまさかの夫の浮気。どうしても許せません。忙しい夫に代わり、家はしっかり守ってきたつもりです。離婚したいのですがお金が心配です。年金などはもらえますか?
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
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目次
泥沼の家族の中で板挟みの妻
この方の夫は保険営業マン。大変優秀な成績を収め、毎年表彰をされて海外へも行くような方です。人当たりが良い分、つき合っていた当時からモテモテだったようですが、遊びはしても、家庭を不幸にするようなことはしないと思っていたそうです。しかし、浮気をして、帰宅をしないこともあり、子どもたちも巻き込んでしまいました。
妻は何より「子どもが悲しんでいるのがつらい」とのこと。高校生になる長女と次女は、非常に難しい年頃です。好き勝手な行動をする父親に対して日増しに嫌悪感がでてきて、ろくに口も聞きません。このままでは子どもたちに悪い影響がでるのではないかと悩んでいました。
娘たちは、大好きなおばあちゃんに言いつけ、実母も「田舎に帰ってくれば良い」と言います。長女からは「高校卒業し、東京で一人暮らしするまで離婚は待って」と言われました。次女は「私はママが大好きだから、ママと田舎に行くよ」と言ってくれます。
長男は「父さんと離婚したら俺は大学に行けなくなるから困る」と言います。ママ友に相談したら「そんな夫とは、慰謝料をたくさんもらってとっとと別れたら良い」と言われましたそうです。
本当は、裏切られた自分が一番つらいのに、みんなの言うことがバラバラで、もう頭がどうにかなりそう……と悲憤している様子でした。しかし、長年専業主婦で暮らしてきたので、離婚後のお金がとても心配とのことで、ご相談にいらっしゃいました。
まずは冷静に! 離婚後の人生は長い
いろいろな人に相談をしすぎて、かえって迷うケースがとても多いのが夫婦問題。なぜなら、人生は長く、生きていくためには生活があり、心と経済と健康のバランスが大切だからです。まずは冷静に、自分自身を客観的に見ることが必要です。
浮気には一過性のものと、継続性のものと二種類あります。どうもこのご主人は継続性のようで、一年ほど前から浮気をしていたのですが、最近明らかになりました。妻は夫のことを愛しており、話していても終始泣いてばかりいます。経済的には申し分ない夫です。
しかし自分のキャリアを捨てて、子育てを頑張ってきた妻。子どももようやく手が離れ、自分の時間と夫婦の時間を楽しもうと思った矢先の出来事でした。
幸いに、夫は家へ入れるお金を減らすようなことはしません。しかし、離婚が決まった今、夜遅く帰宅して自室へこもり、翌朝は子どもがでかけた後に起きてきます。無言で遅い朝食を済ませて無言で外出する夫。「もう終わりだとわかっていますが、どうしたら良いのか……何も手につきません」と妻は言います。
妻はやや感情的な性格のようです。夫にきつく当たることもあったとか。また、浮気されたことに腹を立て、毎日ご主人をガンガンに責め立てたそうです。その度に夫の態度はかたくなになり、帰宅する足も遠のいてしまいました。
言葉で責めて夫の心が妻に戻るのであれば、いくらでも責めれば良いのですが、それは逆効果。イソップ物語の「北風と太陽」のよう。ご主人も、どこかで反省しているのかもしれません。しかし、北風を吹かされているばかりでは、かたくなな心は固まったままで、妻の元には帰らないかもしれません。
妻にはまず冷静になっていただき、「もし離婚をした場合、どのような生活になるのか」を一緒にシミュレーションすることにしました。
ライフデザインを描き将来を考える
夫婦問題を抱えている妻、特に浮気をされている妻は、先のことを考えるのが苦手な傾向にあります。FP(ファイナンシャルプランナー)として、ライフプランニングを作成するために、「ライフデザイン」を描いていただく際はご自身で行っていただきます。
しかし今、妻にはその余力がありません。まずは、子どもの「ライフデザイン」を描いていただくことになりました。
長女の夢は「IT企業への就職」。システム開発をしたいそうです。英語力をつけて外資系で働きたいと言います。そのために、本当はやりたいことがいくつかありました。その結果、さまざまな理由から「パパの力が必要だよね」という結論に至りました。
次女の夢は「畑作り」。だから妻の実家へ行くのも構わなかったそうなのです。しかし、「畑作り」の先には何があるのか聞いたら、「カフェをやりたい」という夢がありました。
それならば、調理学校に入学して、卒業後にどこかのお店で修行をするのもありだよね、そうしたら東京にいた方が良いよね、という結論に至りました。
長男は「将来については、まだわからない」とのこと。まだ中学1年生、無理もありません。長女と次女とはスムーズに会話ができたのに、長男とは話が進まず焦ったそうです。この時はじめて「男の子にはこれから父親が必要だろう」と強く思ったそうです。
子どもたちへのヒアリングを元に、子どもたちの夢を数字化しました。長男は一般的なお金のシミュレーションを立て予算組みをしてみました。妻は「算定表」では25~26万は受け取れそうですが、はたしてその金額で子どもたちの夢を実現してあげられるのでしょうか?
お金のことを考えると、人生の答えがでることもある
妻は「おそらく、養育費をもらっても、満足に3人の子どもを育てることはできません」。妻は自ら方向性を決めました。とはいえ、まだ夫へ温かい心を向けることはできないそうです。
そこで筆者からは「今度はご主人がお子さん一人ずつと話し合ってみたらいかがでしょうか?」というご提案をさせていただきました。これも意外な効果があったのです。
まず、長女は元々パパっ子で、本当は誰よりも夫の浮気に傷ついていました。父親と二人のデートが相当うれしかったようで、上機嫌。英語が得意な夫から勉強法も教えてもらい、教材も買ってもらえるようです。
次女は、子どもの頃から父親と姉の間に割り込むのを遠慮していたようでしたが、今回の父親の申し出がとてもうれしかったそう。
夫はおしゃれで料理がおいしいカフェをよく知っていたので、最低月に1回は一緒にでかけることになりました。次女は、カフェで食べた料理を家で作るようになり、その料理を自分なりにアレンジもするようになりました。
長男は、今後や将来についての話し合いをしなかったそうです。何を話したのかを問うと、夫は、子どもの頃にどのような生活をしていたのか、どんなことを考えたのか、どうして今の仕事についたのかなどを話してくれたそうです。
家族の会話が生まれたところで、筆者からご夫婦で話し合うよう提案をしました。場所は自宅ではなく、ラグジュアリーなホテルにしました。場の力ってとても大切なので。
素直な気持ちを伝えてみたら、夫の本音がでてきた
妻からは「本当は許したくないけど、子どもの将来を聞いたら自分一人ではやっていけないと思ったわ」と。
夫は、「浮気のことは申し訳なかった。もう相手の女性との関係は清算をしている。家に帰らなかったのは、カプセルホテルに泊まっていたからだ。浮気をしてしまった理由は、仕事が忙しく、契約が大変な時にあなたから責められたことがあり、プライドが傷つき、そうした中、子どもたちの態度にも腹が立ってしまい、過ちを犯してしまった」とのこと。大いに反省し謝罪をしてきたそうです。
妻は「自分は気がつかないうちに、夫が大変な時に北風を吹いていたみたいです」と、自分の至らなかったところに気がつくことができました。
夫は、「妻にはもう数年は、子どもたちのために家にいてほしい」ということ、将来的には働きたい妻に対し、資格を取得する時間を与え、費用は夫が全面的にバックアップするという約束ができました。
二人とも反省し、「チーム夫婦」という意識も芽生えました。妻は精神的に自立することができ、自分の役割をしっかりと認識することができたのです。
とても基本的なことなのですが、夫婦にとって「話し合い」と「歩みより」は大切なことです。「夫婦会議」はとても重要で、場所をかえて定期的にすることをオススメします。
長い人生、さまざまなことがあると思いますが、溝が深くなる前に、微調整ができれば大きなもめ事になることは少ないと感じます。「夫婦会議」、ぜひ定例会にしてください。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士