夫と離婚予定だけど、財産は自宅であるタワーマンションのみ。財産分与はどうすればいい?
配信日: 2020.05.11
45歳の同級生の夫と離婚を決めました。数年前にタワーマンションを購入、預貯金はすべてそちらに使ってしまいました。
夫はこだわりのあるこのマンションを手放したくない模様。給与はそこそこあるのですが、分ける財産はほぼありません。しかし、財産分与してもらわないと、私は気がすみません。
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』 https://www.voicemarche.jp/advisers/781
共稼ぎ夫婦にみられる住まいのセレブ化
近年、都心部を中心にマンションの高級化が進んでいます。ブランドマンションに住むと、まるで若い時に見た「トレンディドラマ」の主人公になった気分になれるかもしれません。ブランドマンションは、今でも人気が高いようです。
確かに、部屋のデザイン、機能性、付加サービス等……また、老後を考えたバリアフリーの室内は、一般のマンションと比べたら大違い。
しかし、こういった物件は高級なことが多いですから、誰でも購入できるわけではありません。とはいえ、最近では『共働き』が増えたので、世帯当たりの収入がアップし、購入できる層がかなり広がりました。
今回のご夫妻もこのパターン。夫900万円、妻700万円、夫婦合算で1600万円の収入があります。マンションは高層階になるほど、同じ間取りでも価格はアップします。
内装も高層階の方がハイグレードになることが多く、ホテルライクな雰囲気を味わえるようです。ストレスフルな現代に、毎日ホテルライクな生活を送れることは、大きな満足感に浸れることでしょう。
このご夫妻も10年前に、合算で8000万円代の3LDKを購入しました。また、購入前5年間に両家の親が亡くなり、まとまった相続金が入ってきました。そのおかげで、相続金を頭金に使ったので、グレードの良い物件を手に入れることができたようです。
マンションを購入するまでは、夫婦同じ目標があり、仲が良かったそうです。休日のたびに内覧へ行ったり、ファニチャーショップへ足を運んだりする住活が、夫婦のコミュニケーションとなっていたそうです。
不動産しかない「財産分与」の問題
入居後3年ほどは幸せだったとか。しかし、管理費・修繕費を含めた住居費が高く、また、このようなご家庭の場合は生活全般がブランド化しがちです。子どもの塾や習い事、日常の生活費、身の回りの品々。もはや、ラグジュアリーのスリム化は困難な状態になりました。
共働きの夫婦は、どうしても妻の負担が大きくなりがちです。上記のように、ご夫婦の生活がブランド化したという理由から、妻は仕事を継続しているので、日常生活が大変になってきたそうです。
フルタイム勤務に子どもの世話、ペットもいます。休日は子どもの習い事につき合い、自分の趣味も楽しむ。そして家事をこなすのですから、スーパーウーマンです。
しかしながら、こんな生活は長く続くわけがありません。妻のストレスは日に日に増えてしまったのです。
そして、夫婦はけんかが日常化。夫の最大の不満は「料理とアイロンがけがおろそかになった」こと。妻は忙しく、テイクアウトのお総菜が食卓に並ぶことが増えました。義母は料理が上手で、子どもの頃から手作り料理を食べてきた和食党の夫は、おしゃれなお総菜が苦手でした。
不満がたまった夫は激怒しました。しかし、妻にも不満はあります。自宅が相当気に入った夫は、休日は一日中自宅で過ごしています。ルーフバルコニーでガーデニングをはじめ、以前のように休みに外で楽しみません。
結局、話し合いは決裂。離婚することになったのです。一体、二人にとってのラグジュアリーなマンション生活は何だったのでしょうか?
そこからが大変です。贅沢三昧のこの夫婦、自分たちには厚生年金があることを良いことに、資産運用には積極的ではありませんでした。というのも、「人生100年というけど、うちは80歳まで生きたら御の字だね」と日頃言っており、資産形成はせず、目の前の生活を楽しむ方針にしていたそうなのです。
しかし、夫婦生活が破綻した今、財産分与は必要です。それでも夫は、この家は手放せないと言い張ります。
夫が育てたバラはとても見事で、「こんなにルーフバルコニーが広く、バラにとって環境が良い場所はない」というのが大きな理由です。「毎月、財産分与相当分のお金を支払う」としましたが、妻は納得できません。「子どもはまだ高校生。大学の費用も援助してほしい」と、二人の話し合いは平行線のままでした。
こだわりの自宅を売却して……でも住み続ける!
はたしてこのご夫妻には落としどころはないのでしょうか。いえ、あります。このご夫妻への提案は『リースバック』でした。リースバックとは、今の自宅に住みながら、不動産物件をリースバック取扱業者へ売却し、家賃を支払っていくというものです。ローン残高は、売却した金額で支払います。
このご夫妻の場合は、相続金で頭金が多かったのも幸いしました。また、人気物件なので、10年前以上の価格がついたのです。さらに家賃は相場より安め。ご主人もすんなり受け入れてくれました。
家賃を一生払い続ける負担はありますが、「バラと一緒にこの家に住みたい」という気持ちが優先事項でした。今のマンションは、夫の職場へのアクセスも良く、内装もご主人好み。また、息子さんが高校を卒業したら、大学へ通うために夫と二人で住むそうです。
一方妻は、離婚を機に人生を大きく変える予定とか。趣味のヨガインストラクターの資格を取得し、田舎暮らしを目指すそうです。キャリアアップして、外資系の企業への転職も視野に入れ、テレワークをして自分の生活費は稼ぐとのことです。
リースバックは、離婚時や相続時において『リバースモーゲージ』と共に最近注目をされています。マンションは不利と言われていますが、ブランドマンションは別。資産価値があれば、融資や売却の対象となるそうです。
ブランドマンションにこだわったこのご夫婦。救われたのかもしれません。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士