2020年4月から始まる「私立高校の授業料の実質無償化」ってどんな制度なの?
配信日: 2020.04.24
「子どもには好きな道、好きなことを学んでほしい」と思いながらも、公立と私立ではかかる費用は大きく差があり、親として非常に悩むことではないでしょうか。
2010年4月に創設された「高等学校等就学支援金制度」における支援金が2020年4月より、さらに充実されることになりました。
執筆者:西川誠司(にしかわ せいじ)
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)
ウェディングドレスショップ「Atsu Nishikawa」を17年間経営。
接客の中でこれから結婚するおふたりのお金の不安や子供を授かったときの給付金や育児休業のこと、また親からの贈与や年金のことの悩みを伺い、本格的にファイナンシャルプランナーとして活動を始めました。
みなさまの「小さな疑問や不安」を分かりやすく解決していくことを目指しています。
目次
「高等学校等就学支援金制度」って何?
「高等学校等就学支援金制度」は経済負担の軽減と教育の機会均等を目的に、2010年4月よりスタートした制度です。授業料に充てる支援金を支給することで、国公私立問わず、高等学校等の教育費の負担の軽減を図り、それによって教育の機会均等を実現するために作られた制度です。
具体的には、年収約910万円未満の場合、全日制の高校で、国立は年間11万5200円、公立・私立は年間11万8800円の支給がされています。
公立高校の授業料は年間11万8800円なので公立の無償化となり、同じ金額が私立に通う家庭にも支給されます。私立の場合は学校によって授業料が異なるため、11万8800円を超えた金額は個々が負担することになります。
2020年4月から始まる「私立高校の授業料の実質無償化」とは?
2020年4月からは支給額の上限が引き上げられ、私立高校の平均授業料まで支給額が上がります。平均授業料なので授業料の高い学校ではやはり自己負担分はあります。では、どのように変わるのかを図1をご覧ください。
(図1:文部科学省「令和2年4月から私立高等学校授業料の実質無償化がスタート!」リーフレットより)
上の図のように、現在は世帯収入で270万円未満は29万7000円まで、350万円未満は23万7600円まで、590万円未満は17万8200円まで、910万円未満は11万8800円までと段階に分けて支援金が支給されます。
今回の改正では、世帯収入590万円未満の場合は一律の支給額になり、私立高校の平均授業料39万6000円までと大幅に支給額が増えます。
都道府県によってさらに支援金額に違いがあるって本当?
上記の支援金額は国からの金額です。実は、各都道府県によって支援金がさらに上乗せされることがあります。では、実際の金額について、東京都を例に見てみましょう。
図2:東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業(令和2年度改正)」を基に筆者作成
東京都の場合を見ていただくと、収入910万円未満の家庭は一律で46万1000円の支援を受けることができます。厚生労働省の調査「II所得の分布状況 所得金額階級別世帯数の相対度数分布収入(※1)」によると、900万円未満の家庭は全体の83.8%を占めます。
このように、国の支援金(図1)に加え、都道府県(図2・東京都の例)により支援金を上乗せすることがあります。
授業料無償化の申請時期、申請方法は?
授業料無償化の支援金を受け取るには、決まった時期に申請をしなければなりません。申請しなければ受け取ることができないのです。申請は毎年行われ、高校1年生のみ4月と7月の2回、2年生・3年生は7月です。
1年生の手続きに必要な書類や説明資料は、合格発表後に学校から配布され、書類提出は入学時の4月に学校より提出の案内があります(各学校により案内方法は変わりますのでご確認ください)。在校生は6~7月頃に学校から案内があります。
まとめ
この制度は授業料が対象なので、学校によっては支給上限金額より授業料のほうが低い場合があります。その場合は授業料分までしか支給されません。
また、学校ごとに入学金や寄付金、制服など授業料以外にかかる費用がありますが、それらの費用は自己負担となりますので準備しておく必要があります。授業料も学校によって前期後期分での支払い、学期ごとの支払いなどさまざまです。これらの授業料は先にまとめて支払う必要があります。
収入による学歴や教育の格差があることは否めません。ただ、2020年4月より始まる私立高校の授業料無償化は、教育の格差を縮めることができる制度です。
前述のとおり、該当の世帯が申請しなければ支援は受けられず、全額自己負担になってしまいます。申請時期や方法は学校よりご案内がありますので、資料をしっかり確認してください。また、都道府県別の問い合わせ先(※2)がありますのでご確認ください。
(参考)
(※1)厚生労働省 II所得の分布状況「図9 所得金額階級別世帯数の相対度数分布」
(※2)文部科学省 公立高等学校における就学支援金(現行制度)の問い合わせ先
文部科学省 私立高等学校における就学支援金(現行制度及び旧制度)の問い合わせ先
東京都私学財団 私立高等学校等授業料軽減助成金事業
執筆者:西川誠司
2級ファイナンシャルプランンニング技能士・AFP認定者、終活ライフケアプランナー、住宅ローンアドバイザー(一般社団法人住宅金融普及協会)