更新日: 2019.09.02 その他

企業内学校(1)高校進学か就職か、どうせなら両方(トヨタ、デンソー編)

企業内学校(1)高校進学か就職か、どうせなら両方(トヨタ、デンソー編)
中学卒業後、高校に進学するのが一般的ですが、この他にもさまざまな選択肢がありますで、検討してみる価値があると思います。

高校ではないのに、給料がもらえ、「高卒」資格が取れる企業内学校などを紹介します。

機械いじりなどが好きな中学生におすすめします。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

さまざまな中学卒業後の進路

 
中学校卒業後の進路は、大きく分けて、進学と就職の2つがあります。
進学の場合、高校や高等専門学校、専修学校・各種学校、職業能力開発校など色々な種類の学校があります。
 
就職の場合は、中学校を通しての公共職業安定所の紹介による方法や縁故就職という方法があります(中学校を通して公共職業安定所に届けます)。進学と就職、この2つを実現できるユニークな学校が企業内学校です。
 

企業内学校とは?

 
企業内学校は、企業が社内に社員の教育(企業内教育)のために設置し学校と呼称しているものです。
 
企業内学校の中に、数は少ないですが、通信制高等学校と技能連携(※)し高等学校卒業の資格を取れるようにしている学校があります。
 
給料(手当)も支給されます。卒業後(または入学後)は、正社員として就職できます。寮も準備されています。いくつか紹介しましょう。

※技能連携制度
2重に学習することなく3年間で2つの学校の卒業資格を得られる制度です(学校教育法55条)。
 
・トヨタ工業学園の高等部(愛知県豊田市)
 
トヨタ工業学園は、トヨタ自動車(株)の企業内訓練校です。3年間のカリキュラムを通して、トヨタを支えるモノづくりのプロを目指します。

社会人・企業人としての基礎や、約2,000時間の技術教育を通して、トヨタのモノづくりの基礎を身につけます。

トヨタ生産方式や「改善」、「品質管理」など、職場実習で実践します。
 
また、国家資格、実用資格などたくさんの資格が取れるのも特徴です。筆記試験(国語・数学・英語)、適性試験、面接により選抜されます。
学園に入学すると同時に、科学技術学園高等学校通信科に入学し、卒業時には高卒資格が取れます。
 
クラブ活動は「心身教育」の一環として、全員が入部することになっています。夏休み等は、トヨタ自動車の社員と同じカレンダーを採用しているので、高校のような長期休暇はありません。
 
勉強しながら、生徒手当(学年により月額約13万円~約14万円)のほか、年2回の特別手当(学年により年額約12万円~約30万円)が支給されます。
 
ただし、入寮費等月額約7万円が生徒手当から控除されます。
卒業後は、トヨタの正社員となります。勤務地は豊田市周辺の10工場が中心になります。
 
学習意欲の旺盛な生徒には豊田工業大学(※)への進学の道も開かれています。
 
ただし、トヨタ学園卒業後、直接、大学へ進学することはできません。トヨタ自動車に入社・職場配属後に豊田工業大学への進学支援制度(大学在学中に、トヨタから奨学金を支給)を利用できます。
 
配置職場の推薦および社内選抜試験に合格後、大学受験に必要な学力を身につけるための支援セミナーの受講が必要になります。
 
※豊田工業大学(工学部)
トヨタ自動車から財政面でのバックアップを受けているので、授業料は60万円(初年度学納金は約94万円)。私大の理系の初年度納付金(入学金、授業料、施設設備費)の平均が約150万円なので、格安です。就職決定率はほぼ100%です。
 
・デンソー工業学園の工業高校課程(愛知県安城市)
 
デンソー工業学園は、自動車部品大手の(株)デンソーの企業内訓練校です。
筆記試験(国語・数学・英語)、適性試験、作文、面接により選抜されます。
 
採用試験に合格すると(株)デンソーまたはグループ会社の社員になります。社会人の待遇(手当・賞与・福利厚生等)を受けて勉強します。
 
休みはデンソー社員と同じ日数です(完全週休2日)。年末年始、夏季休暇は、各2週間程度、GW・春期休暇は各1週間程度あります。仕事は免除され、「訓練生」という立場で学びます。入学金・授業料は一切不要です。
 
教科書等の必要な費用は、毎月の手当より天引きされる「クラス会費」(月額1万5千円~2万円程度)から支払われます。全員いずれかのクラブ活動に参加します。寮は通学が困難な方が利用できます。
 
自宅から通う方には定期券が会社から支給されます。
 
工業高校課程では、科学技術学園高等学校との技能連携により、工業高校機械科の卒業資格を取得します。
卒業後は、選抜により、豊田工業大学への進学の道も開かれています。
 
ほかに自動車関連では、日野自動車が運営する日野自動車学園(東京都日野市)があります。
 
一方、企業内学校ではありませんが、学費と寮費が無料になる日立工業専修学校(茨木県日立市)などがあります。次回は、これらについて紹介します。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/


 

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