更新日: 2020.04.09 その他
個人の方向け・新型コロナウイルスに関連する資金貸付制度って?
本稿では、個人の方向け緊急対応策である「生活福祉資金制度」についてご紹介します。また、フリーランスの方等といった個人事業主の方については、公的な事業資金の融資制度が複数ありますので、どのような場所に相談すれば良いかという点についても簡単に触れることとします。
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。
税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。
中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。
生活福祉資金貸付制度について
「生活福祉資金貸付制度」は、必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(住民税非課税程度とされます)等のために、資金を貸し付ける公的な制度で、都道府県の社会福祉協議会が実施主体とされています。
この制度は、新型コロナウイルス感染症の流行前から存在するものです。そして、新型コロナウイルス感染症の流行によって、この制度に特例が設けられることとなったという点が、本稿でお伝えしたい内容です。
生活福祉資金貸付制度の特例
生活福祉資金貸付制度の特例では、従来の制度と比較して、対象者、貸付上限額、据置期間、償還期間といった点について、取り扱いを拡大することとされました。
なお、この貸付制度には、主に休業された方向けの「緊急小口資金」制度と、主に失業された方向けの「総合支援資金」制度の2つがあります。それぞれの内容は、以下のとおりです。
(出典:社会福祉法人全国社会福祉協議会ウェブサイトから引用)
特例の内容
まず、対象者について「新型コロナウイルス感染症の影響で収入の減少があれば、休業状態・失業状態になくても対象となる」とされています。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方々を、幅広く救済する趣旨であるといえるでしょう。
「緊急小口資金」と「総合支援資金」の違いは、前者が「緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯」で、後者が「生活に困窮し、日常生活の維持が困難になっている世帯」とのことですので、後者がより深刻な状況下に置かれている想定といえるでしょう。
次に、貸付上限額・据置期間・償還期限についても一部取り扱いが拡大されています。
「据置期間」とは、お金を借りてから元本の返済開始までの期間のことで、据置期間中は元本返済義務がありません。
本来であれば据置期間中は利子のみを支払うことになりますが、新型コロナウイルス感染症の特例では貸付利子は無利子ですので(保証人も不要)、据置期間中の支払が元利ともになくなります。
「償還期限」とは、借りたお金を最終的に完済するまでの期限です。例えば、「据置期間6ヶ月・償還期限2年」とされた場合は、お金を借りてから6ヶ月間は元利ともに支払がなく、最終的には借りてから2年以内に完済すれば良い、ということです。
返済の免除
この制度は貸付制度ですから、原則として返済をすることが必要です。ただし、新型コロナウイルス感染症による特例では、所得減少が続く住民税非課税世帯については、返済が免除される場合があるようです。詳しくは、市区町村社会福祉協議会へお問い合わせください。
申請方法
申請は、お住まいの市区町村社会福祉協議会へ行います。令和2年3月25日(水)から申請受付が開始されています。
申請の際には、運転免許証等の本人確認書類や住民票、給与明細書や預金通帳等の書類が必要になります。申請に関わる詳細についても、市区町村社会福祉協議会へお問い合わせください。
■市区町村社会福祉協議会へのアクセス
市区町村社会福祉協議会の連絡先を知るには、以下のサイトが便利です。
・市区町村社会福祉協議会のホームページ(検索方法)(※1)
フリーランスの方向け。経営相談窓口について
フリーランスや店舗を経営している等の個人事業主のなかには、売上減少に伴う資金繰りに危機感を抱いている方も少なくないでしょう。
資金繰りをつなぐために、政府系金融機関や保証協会を通じた無利息・低利の融資による支援策が準備されています。また、自治体独自の支援制度もあります。
「複数の支援制度が存在するなかで、どの制度を使ったらいいかよくわからない」といった方は、まずは国が設置している新型コロナウイルス感染症対策のための無料経営相談窓口(※2)へ相談されることをお勧めします。
特に、各都道府県に存在する「よろず支援拠点」(経済産業省が設置する無料の相談拠点)では、地域や事業主の方の特性に合わせたアドバイスをもらえると思いますし、相談は無料なので、ぜひ早めに相談をしてみてください。
資金不足の際に気をつけていただきたいこと
資金不足の際には思考が制限されてしまいがちですので、信頼できる第三者の助言を聞くことが大切です。特に、よくわからない金融業者から貸付を受けるようなことは、絶対に避けてください。
苦境に陥った場合、平常時では考えられない高リスクな選択をしてしまうことがあります。これを防ぐためにも、1人で悩んでしまわずに、まずは社会福祉協議会等へ相談してみましょう。
【出典】
(※1)全国社会福祉協議会「市区町村福祉協議会のホームページ(検索方法)
(※2)経済産業省「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口で土日も相談を受け付けます」
【出典・参照】
全国社会福祉協議会ホームページ
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))