更新日: 2020.03.08 その他

「病院のオムツ代って、こんなに高いの?」知っておきたい大人用オムツの4つの事実

「病院のオムツ代って、こんなに高いの?」知っておきたい大人用オムツの4つの事実
Kさんのお母さまは、要介護認定を受けている85歳。これまで近所のグループホームに入所していましたが、入所から2年がたったある日、心筋梗塞を起こして倒れてしまいました。現在は、高齢者専門病院で胃ろう処置を受けています。
 
お母さまが倒れて以来、混乱した日々を過ごしたKさん。追い打ちをかけたのが、病院からの請求書でした。「え、オムツ代って、こんなに高いの?」
 
入院翌月の請求額は約8万円。その内の4.5万円がオムツ代でした(図1)。実に、支払った医療費の半分以上です。それから2年がたった現在もお母さまは入院中で、毎月5万円近くのオムツ代を払い続けています。
 
酒井 乙

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

(図1)Kさんのお母さまの医療費の内訳(※1)


 
なぜ、支払った医療費の中で、オムツ代がこれだけ高額なのでしょうか?本稿では、「大人用オムツ」に関する4つの事実から、その理由を解説します。

1.病院や施設が独自にオムツ代を決める

お母さまがグループホームにいた頃、Kさんはパンツタイプのオムツと尿取りパッドをお母さま用に自分で購入していました。そのときの1日のオムツ代は、せいぜい300円程度(※2)でした。一方、Kさんが病院で請求されたオムツ代は、1日当たり1500円。実に5倍です。
 
患者に請求するオムツ代は、病院や施設が独自に設定しています。そのため、その詳しい内容については明らかではありませんが、自分で購入するより非常に高額になることがあります。
 
オムツを1日の間に何度も交換し、かつ使用済みオムツの廃棄処理などの手間を考えると、オムツ代が高額になるのは仕方ないことかもしれません。しかし、支払う当人にとっては、重い負担であることに変わりありません。

2.大人用オムツ代には、健康保険が適用されない

オムツ代は、差額ベッド代などと同じく、健康保険が適用されません(※3)。よって、健康保険適用の病院や施設で使用したオムツ代は、すべて利用者の実費負担です。
 
一方、特別養護老人ホーム(特養)などの「介護保険施設」などの介護保険適用施設では、オムツ代の費用負担はありません(※4)。よって、特養から医療保険適用の病院や施設に移った場合、今まで負担のなかったオムツ代がすべて自己負担になります。

3.オムツ代は、医療費控除の対象になる

もし、高額なオムツ代を支払うことになった場合、確定申告をして、医療費控除を使えば、所得税を軽減できます。
 
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に、自分や生計をともにする配偶者や親族等のために支払った医療費を、所得税の算出の元になる所得から控除できる制度です。ただし、オムツ代を医療費控除に含めることができるのは「医師が必要と認めた」場合に限ります。
 
初めてオムツ代を医療費控除に含めて確定申告する場合、確定申告書に、病院が発行する「おむつ使用証明書」を添付する必要があります。2年目以降であれば、「市町村が主治医意見書の内容を確認した書類」または、「主治医意見書の写し」で代用も可能です。(※5)
 
「おむつ使用証明書」の発行費用は、病院によって異なりますが、おおむね数千円程度かかります。よって、2年目以降は、上記の代用書類を市町村で発行してもらうのが良いでしょう。費用は実質無料の場合が多いようです(※6)。

4.オムツ代は、自治体独自の補助制度を利用できる場合がある

助成内容や要件は、各自治体によって変わりますが、お住まいの市区町村に、「オムツ代助成」の制度があれば、ぜひ利用しましょう。図2は、助成制度の一例ですが、要介護3以上の方だけが対象であったり、在宅介護のみ対象であったり、現金支給は行っていない自治体もありますので、注意してください。
 
ただし、仮に助成を受けることができたとしても、実費に対して少額であることは否めません。
 
(図2)助成制度の概要(※7)


 

予期せぬ出費なら1人で悩まず相談を

要介護認定を受ける方の数は年々増加しています(※8)。こうした方々が介護保険施設以外の施設や病院に入ることで、大人用のオムツ代の費用負担に悩む方が、今後ますます増える可能性があります。
 
民間の医療保険や介護保険に加入していたり、十分な貯蓄があれば良いのですが、準備もないまま、突然多額の請求に対応せざるをえない場合もあります。そんなときは1人で悩まず、病院やお住まいの市区町村で、利用できる助成制度などがないか、まずは相談してみましょう。
 
(出典および注釈)
(※1)医療費・その他は、国民健康保険の高額療養費制度適用後の金額です。なお、支払った医療費に占めるオムツ代の割合は、患者さまによって変わります。
 
(※2)Kさんのお母さまの場合、大手製紙メーカー製の大人用オムツを平均で1日2回、尿取りパッドを1日4回替えていたことによる概算です。オムツを替える回数や、購入するオムツやパッドの種類により、1日当たりの費用は変わります。
 
(※3)相模原市「健康保険適用外の料金」より 『差額ベッド代やおむつ代、入院着のレンタル料等は健康保険が適用されない料金ですので、減額する制度はありません』
 
(※4)厚生労働省「平成12年3月30日老企第54号厚生省老人保健福祉局企画課長通知 通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて」より
『介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護療養施設サービスの入所者等並びに短期入所生活介護及び短期入所療養介護の利用者のおむつに係る費用については、保険給付の対象とされている』
 
(※5)厚生労働省「おむつに係る費用の医療費控除の取り扱いについて」(平成14年7月1日)
 
(※6)いくつかの自治体へ筆者が問い合わせた結果ですので、すべての自治体が無料かは確認できていません。自治体によっては、コピー代を徴収する所もあります。また、郵送の場合も郵送代はかかりますが、いずれにしても「おむつ使用証明書」を発行するより費用は安く済みます。
 
(※7)東京都板橋区「高齢者紙おむつ等の支給 総合案内」を元に、筆者作成
(※8)厚生労働省「平成29年度 介護保険事業状況報告(年報)のポイント 2要介護(要支援)認定者数」
 
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員


 

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