更新日: 2019.12.09 子育て
大学・高校・幼児教育……無償化ってどういうこと?
高校や大学、幼児教育・保育の「無償化」という言葉を耳にされる方も多いでしょう。
無償化と言っても、全てがただになるわけではなく、制限もあるので、それぞれの制度について、対象や額などを整理しておきましょう。
執筆者:柴田千青(しばた ちはる)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
2級DCプランナー/精神保健福祉士/キッズ・マネー・ステーション認定講師/終活アドバイザー
小美玉市教育委員
出産を機にメーカーの技術職から転身。自身の資産管理や相続対策からお金の知識の重要性を知り、保険などの商品を売らないFPとして独立。次世代に伝えるための金銭教育活動とともに、セミナー講師・WEB記事を中心とした執筆・個別相談などを行う。
大学教育の無償化ってなに?
2020年4月から始まる「大学の無償化」と言われているのは、「高等教育支援制度」によるものであり、大学だけでなく短大や高専、専門学校も対象になっています。
ただし、対象となっていない学校もあるので、支援の対象校かどうかは最新のリスト(※1)を見て確認してください。
また、この支援制度は、住民税の非課税世帯やそれに準じる世帯の学生が対象です。非課税世帯では満額の支援を受けられますが、非課税に準じる世帯では、年収に応じて満額の3分の2または3分の1の支援になります。
家族構成にもよりますが、年収の目安として、非課税世帯は年収約270万円までの世帯、非課税に準じる世帯は年収約380万円までの世帯とされているので、それ以上の年収のご家庭はこの制度の対象外となります(※2)。
支援の内容は、入学金・授業料の免除・減額と、給付型の奨学金の二本立てです。授業料・入学金の減免は進学先の学校で行いますが、給付型の奨学金は独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)から支給されます。
給付型の奨学金なので返還する必要はなく、授業料・入学金は減免されるので、奨学金の方は学生生活でかかるその他のお金を支給していることになります。
入学金・授業料の減免額の上限や、給付型の奨学金の額は、進学する学校の種類や公立・私立の別などにより異なるので、文科省やJASSOのHPで確認してください(※3)。
一例として、非課税世帯で自宅外から通う私立大生の場合、入学金が26万円(1回だけ)と授業料が70万円減免され、給付型奨学金が月額7万5800円(年額約90万円)支給されます。
高校の無償化ってどういうこと?
高校の授業料無償化は2010年から始まり、2014年には所得制限が加わり、「高等学校等就学支援金制度」として既に行われています。
2020年4月からはその制度が拡充されます。
私立高校の場合に、今までは年収に応じて公立高校の授業料相当額の1~2.5倍だった支援金が、目安として年収590万円未満(課税所得を基準とし、世帯構成により異なる)の世帯は、私立高校の平均授業料を勘案した水準まで引き上げられます。
年収による制限はありますが、私立高校でも授業料が無償になるのです。
幼児教育・保育の無償化とは?
大学や高校の無償化の話とは異なり、幼児教育・保育の無償化は2019年10月から既に始まっています。また年収による制限もありません。
その内容としては、3~5歳児の幼稚園や保育園の利用料が無料になりました。住民税非課税世帯なら0~2歳児も対象です。ただし、幼稚園の場合は無償となるのは月額2.57万円が上限です。
また、保育の必要性によっても変わってくる部分があります。
幼稚園の預かり保育や認可外の保育施設は、保育を必要としない人でも利用することができますが、無償化の対象となるのは、保育の必要性があると市区町村で認められた場合で、その上限額も定められています。
保育の必要のない人が利用する場合は無償とはならないので、同じ施設を利用していても保育の認定により負担が変わるということになります。
なお、無償になるのは利用料の部分なので、通園費や食材料費、行事費などは、これまで通り保護者の負担になるため、まったくお金がかからなくなるわけではありません。
まとめ
無償化と言うと、一律お金がかからなくなるようなイメージを持つかもしれませんが、その対象や範囲は限られていることが多いです。
制度をよく知り、自分にとってはどのように負担が変わるのかよく確かめて、必要な手続きをとれるようになりましょう。
【出典】
※1 文部科学省 支援対象となる大学・短大・高専・専門学校
※2 文部科学省 学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度 どのくらい支援してもらえる?(支援の金額)
※3 文部科学省 授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額
執筆者:柴田千青
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者