奨学金の返済ができなくて自己破産。知っておきたい奨学金の基本
配信日: 2019.10.17
執筆者:伏見昌樹(ふしみ まさき)
ファイナンシャル・プランナー
大学卒業後公認会計士試験や簿記検定試験にチャレンジし、公認会計士試験第二次試験短答式試験に合格や日本商工会議所主催簿記検定1級に合格する。その後、一般企業の経理や県税事務所に勤務する。なお、ファイナンシャル・プランナーとして、2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP合格した後、伏見FP事務所を設立し代表に就き今日に至る。
奨学金の基本
・奨学金の基本種類
日本学生支援機構の奨学金には、第一種(無利息)、第二種(利子が付くタイプ)、入学時特別増額付与奨学金があります。
また、地方自治体や民間企業が独自に設けている奨学金があります。地方自治体の奨学金支援制度の一例としては、山口県の奨学金返済補助制度などがあります。さらに、各新聞社による新聞奨学生制度などもあります。
加えて、大学などでは独自の奨学金制度があります。返済免除される「給付(給与)型奨学金」の制度がある大学も多くあります。
・どのくらいの金額を返済しないといけないのか
日本学生支援機構の奨学金の貸与総額は、第一種奨学金なら、144万円から460万円。第二種奨学金なら149万円から1162万円になります。ただし第二種奨学金の場合は有利子であるため、借入限度額が増えるとその分、総返済金額も増えます。
・いつから返済がはじまる?
貸与終了月から数えて7ヶ月後に口座振替により返済が開始されます。
・どのくらいの学生が借りているの?
大学生の約半数以上が何らかの奨学金を利用しています。
奨学金の返済はじわじわと効いてくる
奨学金を利用すると、返済の義務があります。この義務を履行とした場合、家計に対して影響を与えることになります。以下のモデルケースで、家計に与える影響を書いてみることにします。
(1)モデルケース1
・住まい:一人暮らし
・雇用形態:フリーター
・奨学金総返済額:約355万円(利子込み)
・返済までの期間と回数:18年間で216回払い
・奨学金返済後の手取り金額:14万円
大学卒業後からフリーターにならざるをえない状況にあると、収入が不安定になります。また、病気や事故、会社倒産などの不測の事態に陥った場合に、奨学金の返済が滞る危険性があります。このため、毎月の返済額を期日までに支払うことができないことがあるかもしれません。
(2)モデルケース2
・住まい:実家暮らし
・雇用形態:正社員
・奨学金総返済額:約200万円
・返済までの期間と回数:14年間で168回
・奨学金返済後の手取り金額:18.8万円
ケース1と異なり、奨学金総返済額が少なく、奨学金返済後の手取り金額が多いです。そして、定職についている状況で、実家暮らしということなので、年収から引かれる家賃や食費がかからない分、一見、楽に奨学金の返済を行うことができるように思われます。
しかし、病気などの理由で休職した場合に、返済が困難になる場合が想定されます。
奨学金の返済が難しい場合の対処法
奨学金を借りたはいいが、何らかの経済的理由により、奨学金の返済が困難になる場合があるかもしれません。そうなった場合、下記のような対処法があります。
・返還期限猶予
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、返還期限の猶予を願い出ることができます。
・減額返還制度
減額返還制度は、災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難な方の中で、当初約束した割賦金を減額すれば返還可能である方を対象とし、適用期間中、当初割賦金を減額して返還することができます。
奨学金の返済額は抑えられる
多額である奨学金の返済総額を少しでも抑えるためには、以下のような方法が考えられます。
・一括返済
日本学生機構の第一種奨学金、第二種奨学金ともにインターネットを利用して、「スカラネット・パーソナル」より申し込みます。
奨学金の一括返済の利点と注意点としては、一括返済をするとその後の奨学金の返済にかかる支出を抑えることになります。しかし、一括返済をした場合は、通常の生活をしているときよりも、かなり多額の支出になるため、家計の収支の悪化に注意する必要があります。
・繰り上げ返済
繰り上げ返済をする場合も、一括返済と同様の手続きを取ることになります。
奨学金の繰り上げ返済の利点と注意点は、第二種奨学金の人は、元本と利息を合わせた総返済額が減ることになります。しかし、一括返済ほどではないですが、繰り上げ返済をしたときの家計の収支が悪化することに注意する必要があります。
まとめ
奨学金は、原則返済義務があるものです。返済を滞らせると返済の督促を受けることになり、延滞金が発生することになります。奨学金が、本当に必要なのか、いつ、いくらまで返済することが可能なのかを十分把握して利用したいものです。
【出典】
山口県高度産業人材奨学金返還補助制度について
独立行政法人 日本学生支援機構
公益財団法人生命保険文化センター
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー