日本の食料自給率が低下!何が問題?私たちにできることは?

配信日: 2017.10.26 更新日: 2019.08.30

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日本の食料自給率が低下!何が問題?私たちにできることは?
8月上旬、農林水産省が2016年のカロリーベースの食料自給率が前年度よりも1ポイント低下して38%だったと発表しました。
毎年マスコミを賑わせる食料自給率の発表は、農業にさほど関心のない人でも、何となく気にはなる話題なのでしょう。

「低下したのはたったの1%」とは言っても、農林水産省は2025年にはカロリーベースの自給率を45%にすることを目標にしてきたわけですから、ショックは大きかったはずです。
食料安全保障という言葉があるように、不測時にも国民が最低限必要とする食料を確保・供給することは、国の重要な施策だからです。
だとすると、自給率はある意味、国力の一端を表す数値のようにも思えます。

自給率向上に果たす国の役割とともに、私たちの暮らしと自給率がどのように関係しているのかを考えてみましょう。
毛利菁子

執筆者:毛利菁子(もうり せいこ)

農業・食育ライター

宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。

2016年の自給率が低下した理由は?

ここ6年間(2010〜2015年)、食料自給率は何とか39%を保っていました。
それでも「低い」、「低すぎる」という声が上がっていたのです。ところが今回、38%になってしまいました。米の大凶作で37%になった1993年に次ぐ低さです。どうしてこんなことになったのでしょうか。
 
大きな要因は、北海道の特産品の不作でした。
北海道を襲った6月の断続的な長雨と日照不足、8月に襲来した4つの台風による大雨や水害などで、小麦とテンサイ(砂糖の原料)、馬鈴薯(ばれいしょ)の生産量がそれぞれ2割ほど減ってしまったからです。
農業とは、天候に翻弄される産業なのだとつくづく思い知らされます。
 
合わせて、ほぼ100%自給できている主食用米の1人あたりの年間消費量が54.6kgから54.4kgに減ったからだとされています。しかし、1年間に減少した200gの米をご飯に換算すれば、茶碗2杯程度に過ぎないのですが・・・。

  

自給率の低下を招いているのは、畜産物や油脂類の消費量増加

古い話ですが、1965年にはカロリーベースの自給率は73%もありました。
品目別に見ると、いも類と野菜、豚肉、鶏卵は100%、みかんは109%、食用の魚介類は110%、きのこ類は115%もありました。この頃の第一次産業は、名実ともに国を支える産業だったと言えます。
 
それから半世紀の間に、自給率は減り続けました。
長期的に自給率が低下している主因は、どこにあるのでしょうか。

米を食べる量が減ったことも大きいですが、何よりも飼料(エサ)を輸入に依存している畜産物や、原料を海外からの輸入に頼っている油脂類の消費量増加にあります。
例えば、農水省の試算によると牛肉1㎏の生産に必要な穀物量は11kg、豚肉で7kg、鶏肉で4kg、鶏卵で3kgだそうです。
飼料のほとんどは海外からの輸入に頼っていますから、なるほど自給率が下がるのも無理はないなと感じます。

  

国内農地面積の2.4倍、1,080万ha分の農産物を輸入している日本

農水省の試算によると、畜産物、小麦、とうもろこし、大豆、なたねや大麦などの作物だけでも、海外に依存している農地面積は1,080ha(2011〜2013年)にもなるのだとか。2013年の国内農地面積は454haですから、2.4倍弱の農地を海外で“占有”していることになります。
 
日本が農産物の輸入大国であることはよく知られています。輸入量世界7位の日本は、農産物純輸入額(輸入額−輸出額)では中国の689億ドルに次いで世界2位の582億ドルなのです。片や人口14億を超える国、片や1億2675万人の国なのに、です。
 
ほとんどの先進国は高い自給率を堅持しています。カナダ、オーストラリアは200%を越え、フランス、カナダは120%台です。日本は先進国のなかで最低水準なのです。

世界の人口は増加の一途をたどっており、食糧が逼迫することが予想されています。お金を出せば食料が手に入る時代は終わりつつあります。やはり、38%まで下がってしまった自給率のままで良いはずはないと、思わざるを得ません。

  

自給率を高めるために私たちにできること

自給率の低下に、国は手をこまねいていた訳ではありません。数々の施策を行ってはきました。

しかし、残念ですが決定打に欠けてきました。さらに、猫の目のように変わる農政は、当事者である農家の不信感を高める結果になってしまった感もあります。
 
ただ、主食用米から飼料用米への転換は成果があった、と思います。飼料用米は農家のやる気を高め、荒廃した農村の休耕田を生き返らせつつあります。そして、何よりも食料自給率低下の懸案であった畜産飼料の国産化に道を拓きました。
 
でも、農政だけに任せていては、自給率アップは望めません。
私たちに、無理なくできることはないのでしょうか。

 
例えば毎日、ご飯を今までより1杯分増やして、その分の輸入食材の量を減らすという方法もあります。
店頭で豆腐や納豆を選ぶときには、国産大豆製のものにする、食パンや麺を買うときには国産小麦や国産米粉のものを選ぶ、日本酒は国産米を原料にしたもの飲むなど、できることは意外に多いのです。
 
ここ2〜3年、大手製パンメーカー各社は国産小麦使用をアピールした食パンを作って人気商品にしています。製パンメーカーによると、消費者の国産志向は高まっているのだとか。そんな“国産気分”を追い風にして食を選んでいけば、自給率も高まっていくと期待します。
 
※本文中の数値は、すべて農林水産省のHPの資料をもとにしています。

Text:毛利 菁子(もうり せいこ)
宮城県の穀倉地帯で生まれ育った農業・食育ライター。
 


 

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