更新日: 2019.01.10 その他
奨学金を滞納する前に知っておきたいこと
日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金の滞納が社会問題になっています。滞納し続けると、いわゆるブラックリストに載り、最悪、自己破産することになります。
滞納する前に知っておきたいポイントをお伝えします。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
滞納し続けるとどうなる?
機構奨学金は貸与終了(卒業など)後7か月目から返還が始まり、3か月延滞すると、個人信用情報機関に登録(いわゆるブラックリストに載る)され、さらに、延滞が続くと4か月目から債権回収会社に回収が委託され、9か月を過ぎると、返還未済額等の一括請求がなされ、最終的には法的措置がとられ、強制執行に至ります。
ブラックリストに載ると、クレジットカードやローンの利用が制限されます。登録情報は返還完了後5年後に削除されます。
なお、機構の資料によると平成27年度、3か月延滞している人は16万5千人います。けっして少ない人数ではありませんが、返還者数全体(約393万人)からみると4.2%にしかすぎません。
自己破産するとどうなる?
自己破産の最大のメリットは奨学金の返還が免責されるという点です。自己破産すると、人生が終わると思う方が少なくないようですが、実は、一般の人とって、デメリットは思っている以上に大きくはありません。
主なデメリットは、一定期間、ローンを組んだり、クレジットカードを作れない、自己破産手続き中は、弁護士、公認会計士などの「士業」、警備員、生命保険募集人、損害保険募集人など一定の職業に就けない、ことです。戸籍に載ることもありませんし、選挙権も失いません。自己破産手続き中でも、裁判所の許可があれば、転居も長期の旅行もできます。
ただ、本人が自己破産しても、保証人の責任は免れませんので、人的保証の場合、本人が自己破産することをためらうようです。万一を考えたら保証制度は機関保証を選択すると良いでしょう。
機構奨学金のセーフティーネットを活用しよう!
奨学金の返還が困難な方に3つの救済措置が用意されています。滞納する前に早めに日本学生支援機構に相談することが重要です。
1.減額返還
毎月の返還額を減額して返還する制度です。毎月の返還額を2分の1にして2倍の期間で返還する、あるいは、毎月の返還額を3分の1にして3倍の期間で返還することができます。通算適用期間は15年間です。返還方式として「所得連動返還方式」を選択している場合は利用できません。
2.返還期限の猶予
通算10年間、返還を先送りできます。つまり、その間の返還額はゼロ円です。猶予期間中は無利息です。仮に10年間返還を先送りすると、その分、返還期間も延びます。
3.返還免除
本人が死亡又は精神・身体障害により、労働能力を喪失した場合、返還未済額の全部または一部を免除する制度です。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。