更新日: 2019.07.04 その他

増え続ける「空き家」、進まない老朽家屋の「解体」

増え続ける「空き家」、進まない老朽家屋の「解体」
親の家を「相続」したものの自分で住む意思がなく、しばらく処分するのをちゅうちょしていたため、時間だけが経過し放置された老朽化した空き家が目立っています。
 
場合によっては、人が住まないために朽ち果て「倒壊」の危機にひんしている空き家が、全国に数多くあります。どうしてこうなってしまったのでしょうか。
 
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

全国の空き家は急速に増加

総務省統計局が2015年に調査し公表した「住宅・土地統計調査」によると、日本全国で空き家の数が急増しています。住宅総数6063万戸のうち、空き家の総数は820万戸を超え、全体の13.5%に達しています。
 
ただし空き家には、賃貸用で空室になっている、別荘として定住はしていない、といったタイプも含まれます。これは5年前の1.5倍に増えており、さらに現在も空き家は増加していると思われます。
 
少子高齢化と大都市への人口集中が進行し、居住できない空き家の急増をもたらしています。特に過疎化に悩む地方では、深刻な事態になりつつあります。
 
確かに住宅として利用可能な空き家もある半面、老朽化が進み倒壊しかねない危険な空き家が増えていることが大問題です。こうした空き家には、自治体が所有者に対し助言や勧告をしたうえで、最終的な手段として強制撤去も可能にする「空き家対策特別措置法」が2015年から施行されています。
 
ただ、強制撤去されたケ-スは多くはありません。個人財産権にあまり立ち入れないことや、撤去のための費用の多くを行政が負担するのは問題になるからです。
 
そのため、倒壊の危険がありこのまま放置できない、悪臭を放つなど衛生面で周囲に非常に悪影響がある、といった際の最後の手段として「強制代執行」が行われています。
 
しかしここ数年、その件数は全国で年間50件にもなりません。かなり傷みがひどい状態であっても放置されているケースも目立ちます。全国に増え続ける空き家を、行政の手によって解体を進めることには限界があるのも事実です。
 

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なぜ老朽空き家の解体が進まないのか

実際に人の住まない空き家が、これだけ多数放置されるには、いくつか理由があります。まず考えられるのは、相続した時点で処分が頭の中になく、取りあえず「今後利用するかもしれない」という気持ちで行動する傾向が強いことです。
 
親が長く住んでおり自分にも思い出のある家だから、「いま売らなくても将来何とかなるだろう」と考え、そのままにしてしまうのです。それがしばらくたっても、売却がなんとなく面倒になり放置し、売る機会を失ってしまうのです。
 
次に考えられるのが、解体にはかなりの費用が掛かることです。100万円から200万円程度ならともかく、5000万円以上の解体費用がかかることもあります。
 
そのため、解体のためにムダな費用をかけたくなくなり、「いつか売れればいい」とちゅうちょしてしまいます。それが結果として長い間放置されてしまいます。
 
もう一つの理由は、建物がある土地のほうが、建物がないさら地よりも「固定資産税」が安いことです。土地を持つのであれば、さら地にしないほうが、税金面では有利です。解体費用をかけてさら地にし、さらに高い固定資産税を払いたいとは誰も思いません。
 
もしさら地にすれば売却先も決まる、との見通しがあれば、解体に向けて動くことができますが、そうでないとなかなか解体という選択肢は取れません。
 
「土地は値下がりしない」という神話は崩れているにもかかわらず、何となく「持っていればそのうちに値上がりするかも」という期待感で行動してきた人が多かったと思われます。
 
しかしこれだけ「空き家」が増えてくると、深刻な社会問題になりつつあります。地方の過疎の集落の問題ではなく、大都市の近郊でも空き家問題は深刻化しています。
 
都心の高層マンションは人気がありますが、通勤に時間のかかる大都市郊外の戸建て住宅やマンションが、次第に広大な空き家群に変貌しつつあります。
 

望まれる有効な空き家対策

さすがに行政サイドも、これだけ増え続ける空き家に対して、このまま放置はできないとして、重い腰を上げようとしています。
 
これまでは、土地や住宅が私有財産であるため、下手に手出しをして民事訴訟に巻き込まれたくない、との判断から尻込みをしていたことは事実です。所有者のみならず行政サイドにも、土地は売れる、土地は値上がりする、との思い込みがあったことは否定できません。
 
対策として打ち出した、利用可能な空き家に対して「空き家バンク」をつくり、買い手とのマッチングを図る努力が実をむすびつつあります。また一部の自治体で、利用頻度の低い土地・住宅を所有者から無償で譲り受け、公共目的に利用する試みも進んでいます。
 
利用可能性の低い土地・住宅の所有者からすれば、固定資産税を納める必要がなくなるメリットがあり、同時に、行政は無償で譲り受けた土地を、公共目的に活用できるメリットがあります。
 
しかし、すべての土地・住宅がこの対象になるわけではありません。行政による強制撤去は最終手段ですが、空き家の所有者に対して、修繕・管理など個人の責任で倒壊の危険に至らないよう、徹底した対応を求めることが重要です。
 
それと同時に、空き家を所有し放置し続けることが、有利にならないような制度設計が求められます。
 
その代表例が現行の固定資産税制の変更といえます。空き家を放置していたほうが、解体してさら地にするよりも、固定資産税が安くて済む現在の制度では、今後ますます空き家は増え続けます。
 
長期に放置し住居として適さない空き家に対して、課税措置などが必要かもしれません。また、相続時点で未登記の土地や住宅が増えることを防ぐために、相続時点での登記の義務化も課題になります。
 
これまで対応が遅れてきたことを踏まえ、こうした制度変更が、いま求められています。
 
執筆者:黒木達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
 

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