「夫と離婚したい」知っておくべきお金のこと(前編)離婚手続きと支払われるお金

配信日: 2019.06.29

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「夫と離婚したい」知っておくべきお金のこと(前編)離婚手続きと支払われるお金
現在、日本では三組に一組の夫婦が離婚すると言われています。離婚を考える時に避けて通ることができないのがお金に関することでしょう。
 
特に女性の場合は、小さいお子さんがいる、専業主婦の期間が長いといった事情から、「離婚したいけれどできない」「離婚後のお金に困る」といったことも多くあります。
 
新たな人生を前向きに歩むために、まずはお金の不安を少しでも解消し、今後の生活の計画をしっかり立てることが重要ではないでしょうか。
 
そこで、離婚に関するお金と、離婚後の生活を考えるうえでのポイントについてご紹介したいと思います。前編の今回は、離婚手続きと離婚時に支払われるお金についてお伝えします。
 
藤丸史果

執筆者:藤丸史果(ふじまる あやか)

ファイナンシャルプランナー

相続、投資信託など、身近なファイナンスを中心に活動している。

離婚手続きにかかるお金

離婚をするための手続きには、費用がかかるのでしょうか。一般的に離婚には次の三つのパターンがあります。それぞれ費用面についても見ていきましょう。
 
・協議離婚
日本では、離婚する人のうちの9割前後がこの協議離婚により離婚しています(※1)。お互いに離婚の意思や条件がまとまれば、役所で離婚届をもらう、またはホームページからダウンロードした書式に記入、提出するだけなのでお金はかかりません。
 
・調停離婚
家庭裁判所に調停の申し立てをして、「調停委員会」に第三者の立場で間に入ってもらい、離婚に至るのが調停離婚です。
 
調停の申し立てをおこなうには、申立書などの必要書類を裁判所へ提出します。かかる費用は収入印紙1200円と連絡用の郵便切手代のみですが、弁護士を雇う場合は、弁護士費用が必要です。
 
・裁判離婚
家庭裁判所に訴えを起こして離婚原因を主張、立証することによって判決が確定し、離婚が成立するのが裁判離婚です。お子さんがいれば親権者が決められ、養育費、財産分与、慰謝料といったお金に関することも判断されます。
 
費用については、郵便切手代として数千円。また、裁判所に納める手数料がかかります。
 
この手数料は請求する利益の額によって決まりますが、離婚のみを請求する場合は金銭的な算定ができません。算定不能の場合は、訴額を160万円とみなす規定があるため、訴額160万円の手数料として裁判所の算定表により1万3000円となります(※2)。
 
つまり、離婚だけ請求する際の手数料は1万3000円。ほかに慰謝料を請求する場合は、請求する慰謝料の額と、160万円のどちらか高いほうが基準となって決まります。
 
養育費や財産分与、年金分割などを請求する際には、それぞれについて手数料が1200円かかります(養育費はお子さん一人につき1200円ずつ)。
 
また、裁判となれば弁護士を雇うことが一般的ですので、弁護士費用が必要です。法律事務所によってかなり異なりますが、相談料は30分5000円(+消費税)のところが多く、着手金、成功報酬などを含めて合計50万円~100万円ほどと考えておきましょう。
 
最近は相談料無料の事務所も増えていますし、法テラスを利用する方法もあります。 
 
なお、かなり稀ですが、調停離婚において調停委員と当事者がいくら調停をおこなっても離婚が成立しない場合、裁判離婚に至る前に裁判官が職権による審判で離婚を成立させることもあります。これを、「審判離婚」と言います。
 

離婚によって支払われるお金とそのポイント

次に、離婚により支払われるお金について見てみましょう。
 
・財産分与
財産分与にはいくつか種類があります。婚姻生活中に夫婦が共同して築いた財産を、寄与に応じて分配することを「清算的財産分与」と言います。財産分与というと、通常はこの清算的財産分与を指します。
 
妻が専業主婦で高齢、または病気など、離婚後も扶養が必要な状況であるといった事情があれば「扶養的財産分与」が認められることもあります。また、「慰謝料的財産分与」と呼ばれる、実質的に財産分与が慰謝料の意味を持つものもありますが例外的です。
 
財産分与の対象は、不動産や預貯金などの財産的価値のあるものに限られ、離婚の翌日から2年経つと請求できなくなります。妻が専業主婦でも、財産分与の割合は原則2分の1です。
 
「婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産を分ける」ということから、結婚前からある財産や、別居後に築いた財産は対象外です。親からの相続も対象となりません。住宅ローンや借金がある場合は、これらの負債を財産の額から控除した金額が財産分与の対象です。
 
また、加入中の生命保険については、貯蓄型の生命保険には財産的価値があるため財産分与の対象となります。離婚時の解約返戻金のうち、婚姻期間中の増加分から分与を受けることになります。
 
・年金分割
結婚していた期間のうちの、厚生年金部分の半分の金額が支払われるのが年金分割です。夫の年金の半分が、丸ごと支給されるわけではありません。
 
基礎年金部分は含まれないため、元夫が自営業者やフリーランスで厚生年金が無い場合には、そもそも年金分割を受けることはできません。財産分与と同様、離婚の翌日から2年経つと分与を請求できなくなるので気をつけましょう。
 
・慰謝料
慰謝料は、配偶者の違法な行為に対する精神的苦痛に対して支払われるお金を指します。
 
その金額は、50万円くらいから、多くとも300万円程度が一般的です。芸能人などの離婚の際に、「慰謝料、数千万円!」などと報道されることがありますが、特殊なケースもあるものの、ほとんどが財産分与と合わせた額であることが多いようです。
 
・養育費
夫婦に子どもがいる場合、どちらに離婚の原因があるかに関わらず、親権者は一方の配偶者に対して子どもの養育費を請求する権利があります。その金額は双方の収入などにより定められています。
 
よく、「離婚しても養育費をもらえるから自分に収入が無くても大丈夫」と考える人もいます。
 
しかし、2016年に株式会社リングオフが10代~60代のシングルマザーを対象におこなった「離婚後の生活に関するアンケート調査」では、きちんと教育費をもらっている人は約3割に満たないことが分かりました。
 
さらに、もらっていない人の約5割が、「公正証書をかわしていなかったために、養育費が途中で支払われなくなってしまった」と答えています。養育費や慰謝料については、口約束で済ませず、公正証書を作成しておくことが重要なポイントと言えるでしょう。
 
なお、公正証書は「公証人役場」で作成します。公正証書の作成費用は支払われる金額の総額によって異なり、たとえば「200万円を超え500万円以下」ならば1万1000円。
費用はかさみますが、後のためにしっかり公正証書を作っていくことをおすすめします。
 
次回は、離婚後に必要なお金と、使える公的資金について詳しくお伝えしたいと思います。
 
出典:
(※1)厚生労働省「平成21年度「離婚に関する統計」の概況 (7)離婚の種類別に見た離婚の年次推移」
(※2)裁判所「手数料」
PRTIMES『「離婚後の生活に関するアンケート調査」離婚後に生活費が必要も7割以上の人が教育費をもらってない 現状株式会社リングオフ』
 
執筆者:藤丸史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー
 

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