更新日: 2019.06.30 その他

今だからこそ考える。そもそも、区民交通傷害共済とは?

今だからこそ考える。そもそも、区民交通傷害共済とは?
少し前にはなりますが、「区民交通傷害共済」についてのお問い合わせやご相談をいただくことがありました。
 
その内容は、「区民交通傷害共済について、どのように思われますか?」というものでした。募集期間(=梅の花がほころぶ頃)がとっくに終わっている今だからこそ、区民交通傷害共済について筆者なりの考えを述べてみたいと思います。
 
大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

そもそも、区民交通傷害共済とは?

東京23区の内、一部の区では「区民交通傷害保険」という団体傷害保険を取り扱っています。
 
申し込みの窓口は(いずれも実施している区の)区役所や区民センター、そして、実施している区内にある取り扱いの金融機関です。
 
掛け金と補償内容が異なる3つのコースが用意されています。その3つには、それぞれ「自転車賠償特約」がセットされたコースもあります(含めると全部で6コースです)。
 
以下、筆者が考える区民交通傷害共済のポイントを述べてみたいと思います。
 

申し込みの時期が限られている

区民交通傷害共済に限らず、団体の保険によくあるのが「申し込みの時期が限られている」ということです。
 
区民交通傷害共済の場合、実施している区にもよると思いますが、例年2月から3月に掛けて募集を行い、4月~翌年3月までが保険期間になっています。この保険期間の途中での加入はできません。
 
大人ならともかく、子どもなら成長に伴い自転車に乗り始める、自転車で遠出する楽しみを覚える、ということもあるでしょう。そのため、「夏や秋に区民交通傷害共済に入りたかったのに」と残念がる方もいらっしゃいます。
 
「申込時期が限られている」という点には注意が必要です。
 

引き受け保険会社が存在する

ホームページやリーフレットには、引き受け保険会社が明記されています。しかし、ホームページなら割と下のほうまでスクロールしないと引き受け保険会社の名前が分かりませんし、リーフレットのほうでも目立ちません。
 
なので、「区民交通傷害共済は区民のため、区が全てを行っている公的な制度」と誤解する方が少なくありません。
事実、「区がやっているから信用できると思って入った」「民間の保険会社が絡んでいるとは知らなかった」という声も聴きます。
 
引き受け保険会社については、「なぜこの保険会社なのか」ということを、どの自治体も明記していません。また、入札などを行って選定したのかも分かりません。この点には注意してください。
 

自動更新ではありません

自動更新ではないので、毎年、申込手続きが必要です。
 
加えて、これは損害保険「あるある」なのですが、掛け金が同じでも補償内容が大きく変わったり、コースの名称は同じでも掛け金と補償内容の両方が変わってしまうことがあります。また、実施している区が突然、実施を取りやめてしまうことも。
 

自転車賠償責任プランには示談代行サービスがありません

賠償責任プランはあるのですが、賠償補償の対象となる事故が自転車事故に限られています。
 
そして、この自転車賠償責任プランには、示談代行サービスがありません。なので、相手方との示談交渉は、ご自身が行わなくてはなりません。区役所や区民センターなどで扱っている区民交通傷害共済だからといって、「区が間に入ってくれる」わけではないのですね。
 

特筆するべきは

自転車賠償責任プランの自転車の範囲に「身体障害者用の車いす」が含まれています。
 
言うまでもありませんが、車いすは法的には車両ではありません。なので、「賠償責任補償」などの、いわゆる「車いす保険」は非常に限られています。そのため、区民交通傷害共済の自転車賠償責任保険プランに車いすが含まれていることは特筆に値します。
 

まとめ

いかがでしょうか?
 
「示談代行サービスがない」という点を踏まえると、個人的に区民交通傷害共済をおすすめすることはできません。しかし、「お子さまを含めて、家族が皆、自転車を利用する」ということでしたら、 家族ぐるみでのご契約を検討されるとよいのではないでしょうか。
 
ご家族の自転車の利用の状況、そして、他の損害保険(特に個人賠償特約など)の加入状況を踏まえて、ご検討してみてください。
 
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役

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