更新日: 2019.06.16 その他
【FP解説】お金の面から8050問題を考える
川崎市での殺人事件を起こしたのは50代のひきこもりで、80代の親族に養われていました。その後に起きた、親が息子を殺害した事件では、親が70代、子は40代でした。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。
子どもが働かなくても生活していける資金計画
ひきこもりと言えば、以前は20代などの若者が想定されており、国や自治体による支援は39歳までを対象としていました。
しかし、時間の経過とともにその子たちが高齢化し、40代、50代になっています。今では、ひきこもりとされているのは、30代以下の年代よりも、40代以上の方が多いという状況になっています。
私はファイナンシャル・プランナーとして、働けない子どもを抱えるご家族の家計相談を受けています。ひきこもりのご相談も多く、ひきこもりが高齢化しているのを実感します。
私がご提案しているのは、「子どもが生涯働かなくても生活していけるような資金計画」です。こう言うと、「子どもの回復をあきらめるのか?」と驚かれることがありますが、そうではありません。
ひきこもりのお子さんの状況が改善し、収入が得られるようになれば、それに越したことはありません。お子さんの就業が安定し、状況が改善したら、その時点でまた資金計画を修正してもよいでしょう。
しかし、最初からそれを期待して将来の資金状況を考えると、就労できなかった場合に資金不足となってしまいます。
将来の状況が見通せない今の段階では、悪い状況を想定して資金計画を立てておく方がよいでしょう。最悪の場合を想定して準備しておけば、状況の変化があっても心配ありません。
8050が近づくと、親の不安は大きくなる
20代など、まだお子さんが若いうちは、将来の資金計画とは言っても、なかなか考えたくないという親御さんも少なくありません。
20代、30代であれば改善が期待でき、就労してくれることを望むのです。「このままの状態」が今後も続くことは考えたくない、というのが正直なところです。
一方、子どもが40代、50代になると、就業するまでの改善は難しいと、親も認識するようになります。このままの状態で親亡き後も生活していけるか、不安が生まれます。そうして、子どもがある程度の年齢になってから、私へ相談に来るケースが増えています。
ただ、40代以上になるとまったく就業できない、というわけではありません。私が相談を受けたケースでも、それまで無職が続いていたのに、40代で正規雇用に至ったケースもありました。
もちろん、収入面から考えると正規雇用が望ましいのですが、そうでなければダメ、というわけではありません。月3万円でも5万円でも収入が得られれば、将来の家計の状況は大きく変わります。
「子どもが生涯働かなくても生活していけるような資金計画」を立てながらも、子どもの回復をあきらめずに見守りたいものです。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト