更新日: 2019.06.13 その他

自宅処分後の選択肢 分譲マンションVS 賃貸マンション

自宅処分後の選択肢 分譲マンションVS 賃貸マンション
私も70歳代になり、考えることはさまざまありますが、健康、生活資金と住まいのことが多くなりました。
 
90歳代まで生きることが普通になった今日、多くの人は年金では足りない資金をそれぞれの方法でカバーしています。長生きは、生活資金確保の点で新たなリスクになってきたと言えます。
 
今回は、個人資産の中で最大のウエイトを占める自宅を、どのように保有、売却、運用するかについて、考えてみることにしましょう。
 
植田英三郎

執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)

ファイナンシャルプランナー CFP

家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。

高齢期は自宅をどうしますか

60歳代から70歳代前半の家計主の持ち家率は、平均で79.1%となっており(※)、10人中約8人が自宅を所有していることになります。80歳代・90歳代以降、その持ち家をどのようにするかは、時代と共に変化していると思われます。
 
「子どもたちが住む」「売却する」「空き家になる」の3つが考えられますが、空き家率の上昇が話題となる一方、「子どもたちが住む」という選択をする可能性も高くないと思われます。
 
最近は、若いうちに自分の家(マンション中心)を持つ傾向が強いだけに、立地の良い一戸建ての場合などを除いて、結果的に売却するケースが多いでしょう。
 
親の側の事情としても、思っていた以上に長生きするため、当初考えていた以上の老後生活資金が必要となるかもしれません。多くの子どもたちの独立志向と相まって、自宅を処分して資金を確保するという選択も多くなりつつあるのではないでしょうか。
 
例えば、80歳前後で高齢者住宅や施設入所を考えると、その際の入所一時金が必要になります。子どもたちに依存せず、自分の判断で老後の住まいを考えるとなると、遅くとも70歳代前半にはこうした問題に取り組む必要が出てくるわけです。
 
ここでは、「売却をする」場合にどんな選択肢があるか、考えてみましょう。
 

自宅を早めに売却する

「自宅を早めに売却する」理由は、80歳代への備えです。
 
80歳代になってからでは「できないこと」が増える可能性が大きいからです。「自分で正しい判断ができるか」「契約の当事者になれるか」「引っ越しなどの作業や環境変化に耐えることができるか」などは、「できなくなる」ことの例です。
 
そのために、少し早め(60歳代後半から70歳代前半)に着手しては、というのが本稿の趣旨です。
 

自宅処分後の選択肢

少し早めに自宅を処分する場合には、どんな選択肢があるのでしょうか。
 
「今より狭い分譲マンションに転居する」「賃貸マンションに転居する」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームに入所する」「今の自宅に住み続ける」の4つが主に考えられますので、比較してみましょう。
 
・今より狭い分譲マンションに転居する
この場合は、自宅の売却差額の資金が入ります。夫婦のうちどちらかが先に死去した後も自分たちの所有ですから、安定的に住むことができます。
 
現状より狭小なマンションのため、固定資産税や光熱費など生活コスト減らすことができますし、その先に施設入所が必要になった際の一時金は、そのマンションの売却で調達可能です。
 
・賃貸マンションに転居する
自己所有マンションなどを売却するので、手元資金が一時的に多くなりますが、毎月の家賃が必要なため、生活コストは増えます。10年・20年間の計画的な生活費管理が大切です。また予算に合う適当な賃貸物件を探せるかも、ポイントになります。
 
夫婦のうちどちらかが先に死去した場合は、年齢によっては退去を求められるケースがあることも想定しておく必要があります。
 
施設入所に切り替える際は、賃貸の場合は身軽なため、売却時の資金をうまく残していれば入所一時金もまかなえるでしょう。元々80歳代に施設入所を考えている場合の選択として、よいのではないかと思われます。
 
また、賃貸に入居する場合は保証人を求められますので、子どもや親族のいない世帯では「全保連」の保証を使うなどを検討しておく必要があります。
 
・高齢者住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームに入所する
自宅・マンションを売却し、高齢者向けの住宅や施設入所に踏み切る選択もあります。自宅の売却額と入所一時金の額によって、手持ち資金をどれだけ残せるかが問題ですが、先々の安心感は最もあると言えるでしょう。
 
この場合、夫婦で同じ施設に入居できればベストですが、一時金や毎月の費用が高額となるため、相応の資金の準備が必要になります。さらに、個人の専有スペースは相当狭くなることを覚悟しなければなりません。
 
また、社会との接触が少なくなるため、年齢以上に老化しないよう心がけることが必要となります。
 
・今の自宅に住み続ける
自宅に住み続けることが最も穏当な選択なのですが、その場合は生活資金を切り詰めるほかに新たに資金を調達するという選択も考えられます。
 
自宅に住み続けたまま、自宅を担保に融資を受けることができる「リバースモーゲージ」を利用する選択肢もありますが、現状の自宅が一戸建てであることや、地域が限られるなどの条件があります。
 
決断を先送りすると、結果として自力では対応策を実行できず、自宅を残してしまうことになります。後を託す子どもがいない場合は、やはり少し早めに前の3つから選ぶことが望ましいかもしれません。
 

まとめ

親の住まいや生活を子どもがみるという価値観や習慣は、大きく変わりつつあります。4つの選択肢を挙げましたが、どれを選ぶかは人それぞれです。ただ、このようなテーマについて、60歳代初めから研究しておいて損はないのではないでしょうか。
 
出典:
(※)総務省統計局「日本の住宅・土地-平成25年住宅・土地統計調査の解説-結果の解説」
 
執筆者:植田英三郎(うえだ えいざぶろう)
ファイナンシャルプランナー CFP
 

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