【相談】大学まで私立に行かせると1人2000万以上かかるって本当?嘘?
配信日: 2019.06.07 更新日: 2019.06.13
しかし、文部科学省の「平成28年度子供の学習費調査」によると、幼稚園、小中高すべて私立に通わせると、お子さま1人あたり約1800万円かかります。それに私立の大学の費用を加えると、2200万円を超えます。
お子さま2人で4400万円以上、もし3人なら6600万円以上。住宅購入資金と同じか、それを超える金額が教育費にもかかることになります。子どもを私立に通わせてよい教育を受けさせたくとも、それは無理ということになりかねません。
ここでは少し落ち着いて教育費の内容を分析し、どうしたらもっと効果的によい教育を受けさせることができるか考えてみましょう。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
国公立と私立で教育費はどのくらい違うか?
下の表を見てください。これは文部科学省のデータから筆者がまとめた、大学までの教育費の一覧表です。
幼稚園から大学(4年制)まで、すべて私立に行った場合は約2222万円、国公立に行った場合は約791万円。その差は約1431万円となっています。
教育費には入学金、授業料、通学費などの学校教育費といわれる費用だけでなく、学校給食費および学校外教育費と呼ばれる学習塾代、参考書代、ピアノやスポーツなどの習い事費用も含まれています。つまり子どもの教育に関するほとんどすべての費用だということが分かります。
小学校だけで比較してみると、一年間の教育費は私立と国公立で約723万円もの差があります。なぜ、これだけ大きな差が生じるのでしょうか?
その理由のひとつは、学校納付金等(入学金、施設整備資金、PTA会費など)入学金・授業料の差です。これが406万円あります。国公立の小学校は授業料が無料ということに起因します。
もう一つは学校外活動費です。残りの317万円のうち、237万円が学校外活動費の差です。これは、私立の小学校に通わせている家庭は経済的にも豊かな家庭が多く、塾や習い事についても費用をかけているということです。
学校外活動費を中学、高校それぞれでかかる費用で比較してみても、国公立と私立の差はそれぞれ約6万円、約33万円と小学校ほどの差はありません。これは、私立小学校に通わせている家庭では、塾やピアノ、スポーツなどの習い事をかなりさせているからだと推測されます。
どうしたら子どもに効率的に教育を受けさせることができるか?
基本的な学力が育成される時期は、小学校後半から中学・高校時代といわれています。
この時期に私立に行かせようと思うなら、幼稚園、小学校は国公立に通わせ、中学から私立に通わせる、そして大学は国公立でも私立でもどちらでも対応できるようにしておく、というパターンがあると思います。
私立と公立の小学校の、一年間の教育費の差が約723万円もあることを考えると、経済的にもそのような選択をすることは費用対効果の観点からも有効です。 小学校は国公立で授業料を節減し、学習塾や習い事にある程度お金を使い、私立中学受験の準備もさせるというやり方です。
これだと、教育費の総計は、
幼稚園・小学校は国公立、中学・高校は私立、大学は国公立: 1222万円
幼稚園・小学校は国公立、中学・高校・大学は私立 : 1424万円
となり、すべて私立の場合の約2222万円と比べて798~1000万円程度安くすることができます。小学校時代に塾代や習い事にある程度の費用が掛かることを考慮しても、この大きな差は基本的に変わりません。
まとめ
今回は、小学校の一年間の教育費の差が、私立と公立で約723万円もあることに着目して、どのような進路を選ぶのが効果的かという問題を取り上げました。
その差の一番の要因は、やはり授業料です。しかし、それだけでなく、学習費全体に占める学校外活動費の金額の大きさにも注目する必要があります。
幼稚園から高校まですべて私立の場合、教育費計1772万円に対し、学校外活動費計590万円(33%)。すべて国公立の場合は、教育費計542万円に対し、学校外活動費計301万円(56%)となっており、金額的にも比率的にも大きな割合を占めています。
これは授業料と違い、必ずそれだけかかるものではありません。また、内容も親御さんが吟味して比較的費用が安く、質的に優れたものを選ぶことも可能です。ここをどうマネージするかで、費用対効果の観点から見て効率的な教育を行えるかどうかが決まるのです。
出典:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査の結果について」
文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
文部科学省「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー