更新日: 2019.06.14 その他
【相談】いらなくなった農地を売りたいけど、必要な手続きが分かりません
農地や採草放牧地の売買について、農地法はどのように保護をしているのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
農地を売りたくなったらどうしよう?
Aさんは農地を所有しているのですが、ここ2年ほどは手入れすらまともにできておらず、特に直近数ヶ月は仕事で使う資材の保管場所となっています。
そのため、いっそ農地をBさんに売却してしまおうと考えました。
売却に向け、AさんとBさんはどのように手続きを進める必要があるのでしょうか。
農地の売買は農地法により制限がされます
農地と採草放牧地(以下農地など)の売買は農地法によって制限されます。
規制の対象となる農地と採草放牧地とは農地法2条1項において次のように定義されています。
農地…耕作の目的に供される土地
採草放牧地…農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるもの
また、現実には耕作されていなくとも、耕作しようとすればいつでもできるような状態にある土地も上記の農地などに含まれるとされています。(「農地法の施行について(抄)」昭27.12.20付け 27農地5129号農林事務次官通達)
そして、上記の定義に当てはまる農地などの権利を移動させるためには、対象となる農地などを管轄している各市町村の農業委員会の許可が必要とされています。(農地法3条1項)
農業委員会が置かれていない場合は農業委員会に変わり町長の許可となります。
ここでいう権利移動とは、売買による所有権の移転や賃借権の設定、賃借権の移動など実際に農地を使用収益できる権利を移動させたり、新たに設定させる行為をいいます。
ただ、今回AさんとBさんが売買する農地は2年ほど放置された土地であり、かつ現状は資材の保管場所となっていました。
そのため、農地には該当しないのではないかとも考えられます。
しかし、過去の判例では2年間程度耕作されないまま放置され、直近2ヶ月ほどは材木置き場として利用されていた土地について、いつでも耕作できるとして非農地とはいえないとされた事例があります。
つまり、AさんとBさんが売買しようとしている土地は農地とみなされ、売買契約をする前に農業委員会などの許可を得なければならない可能性が高いのです。
農地について売買をする場合、早めに農地を管轄する市区町村役場に問い合わせるようにしてください。
無許可で売買などをするとどうなる?
では、万が一AさんとBさんが農業委員会などの許可を得ないまま農地について売買してしまったらどうなるでしょうか。
この場合、その売買契約は無効となります。(農地法3条7項)
また、契約が無効となるだけでなく、3年以下の懲役または300万円以下の罰金といった処分を受ける可能性もあります。(農地法64条1項)
仮に農業委員会などから許可を得ていたとしても、申請内容を偽ったり、その他不正な手段で許可を得ていた場合も同様の処分を受けることがあります。(農地法64条2項)
農地についての権利移動は専門家へ相談を
農地や採草放牧地について権利の移動や設定などをするには、農地法により定められた手順によらなければなりません。
農地や採草放牧地についての相談は当該農地などを管轄する農業委員会や専門の行政書士に相談するとよいでしょう。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士