私立高校の「授業料無償化」は“全国一律”だと思っていましたが、都道府県ごとに補助内容が違うと知りました。都内の私立の場合、自己負担は生じますか?
配信日: 2025.08.07

本記事では、「私立高校の『授業料無償化』は“全国一律”ではないのか?」「都内の私立の場合、自己負担は生じるのか?」について解説します。
「授業料無償化」の仕組みについて分かりやすく解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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私立高校の「授業料無償化」は“全国一律”ではないのか?
まず、私立高校の「授業料無償化」は、厳密には「授業料実質無償化」であり、授業料が無償化されたわけではない点に注意が必要です。実質無償化とは、授業料は発生するものの、支援金制度などを利用することによって無償化と同じ効果があるという意味です。
実質無償化の基礎となっているのが、国の制度である「高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」といいます)」です。制度の概要は、図表1のとおりです。
図表1
※出典:文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」
この制度を利用すると、年収約590万円未満の世帯の方が私立高校(全日制)に通う場合、最大で年間39万6000円の支援を受けることができます。つまり、通学する私立高校の授業料が年間39万6000円以下であれば、全額を支援金で賄うことができるため、実質的に無償化になるというわけです。
就学支援金は国の支援金制度のため、全国一律です。年間の授業料が39万6000円以下であれば、全国どこの私立高校であっても「実質無償化」となります。しかし、実際には就学支援金だけでは足りないケースもあります。
各都道府県では、国の就学支援金に加えて独自の授業料補助事業を行っています。ご相談内容(タイトル)にある「都道府県ごとに補助内容が違う」とは、この部分のことでしょう。
都内の私立の場合、自己負担は生じるのか?
東京都は、私立高校などに通う生徒の保護者に対し、経済的負担を軽減するための支援として「私立高等学校等授業料軽減助成金(以下「授業料軽減助成金」といいます)事業」を行っています。生徒と保護者が都内に住所を有している場合に、都内の私立高校の平均授業料と就学支援金の差額分を都が助成する制度です。
この助成金制度は、都内の私立高校の平均授業料に合わせて、授業料軽減助成金の上限が変わるという特徴があります。例えば、就学支援金と授業料軽減助成金を合わせた上限額(全日制の場合)は、令和6年度が年額48万4000円であったのに対し、令和7年度は49万円です。
ご相談内容の「自己負担は生じますか?」という点については、年度ごとに回答が異なるかもしれませんが、結論としては「都内の私立高校の平均授業料を超えた分について、自己負担が生じる」ということになります。
まとめ
本記事では、「私立高校の『授業料無償化』は“全国一律”ではないのか?」「都内の私立の場合、自己負担は生じるのか?」について解説しました。まとめると以下のとおりです。
●国の制度である「高等学校等就学支援金」は全国一律だが、これとは別に都道府県ごとに補助制度があり、この補助内容が都道府県により異なる
●東京都の助成金は、都内の私立高校の平均授業料を上限に、国の支援金に上乗せする形で支援する仕組みとなっているため、子どもの通う私立高校の授業料がこの平均授業料を上回る場合は自己負担が生じる
「授業料無償化」とよく耳にしますが、実際は「実質」無償化です。この実質無償化のベースにあるのが国の「高等学校等就学支援金」であり、これを補う形で自治体(都道府県など)ごとに助成制度があります。
これらの制度を利用することによって授業料が実質的に無償になるわけですが、制度を利用するためには申請が必要ですので、注意が必要です。
本記事では東京都の助成金制度について触れましたが、補助内容は自治体によって異なります。ご自身の場合はどうか、一度確認してみてはいかがでしょうか。本記事を読んで、高校の授業料実質無償化への理解が深まれば幸いです。
出典
文部科学省 2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット
文部科学省 令和6年度 都道府県別 私立高校生(全日制)への修学支援事業調査結果
公益財団法人東京都私学財団 私立高等学校等授業料軽減助成金事業(都の助成制度)
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー