共働き世帯が多数派になったけど、専業主婦(夫)世帯って実際にどれくらいいる?

配信日: 2025.08.05

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共働き世帯が多数派になったけど、専業主婦(夫)世帯って実際にどれくらいいる?
共働き世帯は増加を続け、現在は夫婦のいる世帯全体で多数派になりました。では、「専業主婦(夫)世帯」は実際にどの程度いるのでしょうか?
伊藤秀雄

CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち合う中で、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後は仕事に生かすとともに、地元でのセミナー登壇や日本FP協会主催の個別相談会、ワークショップなどに参画し活動を広げている。

日本の世帯構造は大きく変わった

共働きと専業主婦(夫)の世帯数比較をする前に、まず日本の世帯構造全体の変化を確認しておきましょう。図表1は、65歳未満の現役世代の世帯構造を分類し、その構成割合の推移を示したものです(※1)。
 
図表1

図表1
 
約40年弱の間に「夫婦またはひとり親と未婚の子のみの世帯」が大きく減少し、「単独世帯」は大きく増加しました。
 
65歳以上の高齢者を含む全世帯で令和5年の割合を見ると、「夫婦またはひとり親と未婚の子のみの世帯」の割合は31.7%とさらに少なくなり、「単独世帯」の割合が34.0%で最も高くなります。また、「夫婦のみの世帯」が24.6%まで増加することから、「夫婦のみの世帯」全体に占める高齢者の割合が高いことが分かります。
 
高齢夫婦世帯は、その後配偶者との死別を迎えますが、「単独世帯」の割合は図表1の割合からほぼ変わりません。子の世帯に入るなどの選択も考えられますが、「単独世帯」の増加に影響を与えるのは、高齢者よりも現役世代といえそうです。
 
また、同じ調査では、昭和28年から令和5年までの70年間の世帯数と世帯人数の推移を調べています。その結果、全世帯数は約1700万世帯から約5400万世帯と3倍以上になったものの、平均世帯人数は5.00人から2.23人と半分以下に減少しています。ここからも、「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」の割合が増え続けていることを見て取れます。
 

専業主婦(夫)世帯数の推移

このように世帯バランスの大きな変化が起こったなかで、共働きと専業主婦(夫)という夫婦の働き方の違いはどのように変化してきたのか、図表2で確認します(※2)。なお、この調査では雇用されている者を対象に集計しています。
 
図表2

図表2

(厚生労働省「令和5年版 厚生労働白書」(※2)から転載)
 
約30年前には、「共働き」と「専業主婦」の世帯数はすでにほぼ互角であり、以降は共働き世帯が大きく引き離していることが分かります。
 
なお、本調査に専業主夫は含まれませんが、平成27年の国勢調査では、夫婦のいる世帯総数に占める「夫が非就業者のうち妻が就業者」の割合は4.1%です。調査母体が異なるので単純比較はできませんが、専業主夫は微増傾向ながら少数にとどまっています(※3)。
 
図表1と重ねると、共働きと専業主婦の世帯数がほぼ互角となった90年代から近年まで、子がいる世帯の割合はほとんど減っていませんが、その間に妻が働きに出る世帯が一気に増え、最新の2022年では専業主婦世帯の2.3倍となっています。
 
妻は非正規雇用であるケースも多いと考えられますが、今後も専業主婦世帯数との差が広がっていくことが予想されます。
 

専業主婦を支持する意識の変化

では、このような傾向の裏には、どのような意識の変化があるのでしょうか。性別の役割分担に関する意識調査を見ると、「夫は仕事、妻は家庭を守る」という考え方に反対する割合が、男女とも一貫して増加し続けています(図表3)。
 
図表3 

図表3

(内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」(※4)から転載)
 
令和元年のデータで、「賛成」「どちらかといえば賛成」の割合が男性は約4割、女性で約3割いますが、「賛成」の割合は男性の70歳以上で最も高く、「反対」の割合は女性の60歳代以下と男性の30歳代で高くなっています(※5)。
 
男女雇用機会均等法が施行されてから約40年たち、女性の就業環境は法律や社内制度の面では大きく進展してきたといえます。それでも、企業の慣習や上司の理解・価値観など、個々の職場特有の理由から、女性の就く職種や、正社員としてキャリアを継続できる土壌などには、まだまだ現場の温度差が残っているように感じます。
 

最後に

共働きと専業主婦(夫)、どちらの働き方も可能な時代に変化してきました。ただ、共働きの増加は、当事者の自由な選択以外に、お互いの雇用形態や家計の事情など、経済的な必要性が後押ししている面も大きいと考えられます。
 
一方、夫婦で長期の雇用期間を得ることは、将来の老後資金、老齢厚生年金を増やすメリットにつながります。さまざまな背景や動機がありますが、当面、共働き世帯の割合が増え続けていくことでしょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況 結果の概要 I 世帯数と世帯人員の状況
(※2)厚生労働省 令和5年版 厚生労働白書 図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移
(※3)総務省統計局 平成27年国勢調査 調査の結果 就業状態等基本集計結果
(※4)内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 令和4年版 第2節 仕事と生活の調和
(※5)内閣府 男女共同参画社会に関する世論調査(令和元年9月調査) 世論調査報告書
 
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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