賃貸住宅の退去時にエアコン交換費用として「10万円」を追加請求されました。退去費用は「敷金だけ」で収まると聞いたのに、なぜ?

配信日: 2025.08.05

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賃貸住宅の退去時にエアコン交換費用として「10万円」を追加請求されました。退去費用は「敷金だけ」で収まると聞いたのに、なぜ?
「敷金で退去費用はまかなえると思っていたのに……」そんな思いとは裏腹に、退去時に「エアコン交換費用」などとして10万円を追加で請求されたというトラブルが起こっているようです。果たして、これは妥当な請求なのでしょうか?
 
本記事では、賃貸契約における原状回復のルールやエアコン交換費用の扱い、追加請求への対応法について解説します。
柘植輝

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

原状回復の原則と「経年劣化」の考え方

国土交通省が発行する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によれば、原状回復とは「借主が入居時の状態に戻すこと」ではなく、通常使用における経年劣化や損耗は、借主の責任とはならないとされています。
 
つまり、退去時にかかる費用は、借主側に故意や過失などがない限りは、通常貸主が負担することになるのです。
 
今回の例でいえば、日常的に使用されることが想定されるエアコンが古くなったり、通常の利用によって劣化したり故障したりするのは、貸主側の負担とするのが、基本的なルールなのです。
 
ただ単に、設備交換をするなどといった理由で、借主に退去費用を請求することはできないと考えられます。
 

エアコン交換費用が「請求される」3つのパターン

エアコンの交換費用は、特例的な条件下において、経年劣化であるにもかかわらず、請求が認められる可能性があります。
 
例えば、「エアコンの設置および退去時の撤去は借主負担とする」などと契約書にあり、実際に、入居者がエアコンを設置した場合、その撤去や交換費用は、当然借主負担になります。
 
また、「貸与された設備であっても、故障時は借主負担とする」など、特約がある場合は、その内容が優先されることもあるため、契約時の確認が重要です。
 
契約は、当事者が合意する限り自由です。それが国土交通省のガイドラインと反する内容であっても、基本的には契約の内容が優先されます。
 
そのほか、故障の原因が借主にあると判断されたケースも、請求が妥当であると判断される可能性もあります。
 
例えば、エアコンでいえば、フィルター掃除の怠慢やたばこのヤニ、ペットの毛詰まりなどが原因で、エアコンに故障や一般的な範囲を超えた清掃の必要が生じた場合は、通常使用の範囲を超えた損耗と判断され、修理・交換費用が請求される可能性があります。
 

敷金の役割もおさらい

では、仮に、エアコンの交換費用の請求が法的に妥当であったとして、その金額が10万円という金額は妥当なのでしょうか。
 
その点については、妥当でない可能性は低いと考えられるものの、明確な答えを一概には出せません。答え合わせをするには、管理会社などに見積もりを出してもらい、確認することが必要です。
 
また、敷金を差し入れていても、別途請求されることもあります。例えば、敷金が不足している場合です。その場合、不足分が10万円あり、10万円の請求がなされていると考えられます。
 
敷金は、退去時に残っている支払い関係を精算し、余った部分が返還されるという仕組みのお金です。そのため、エアコンの交換費用のほか、家賃の滞納など何かしら退去時に未払いで残っているものがある場合、それが差し引かれた結果、10万円が不足してしまった、それゆえに、10万円の請求がなされたという可能性はあり得るのです。
 
不動産賃貸サイトを見てみると、敷金は家賃の1ヶ月分程度の額とされている物件が目立ちます。そのため、1ヶ月でも家賃の未払いがあったり、エアコンが故障していて交換が必要となったりする場合は、10万円という額が敷金のほかに請求されても妥当である可能性は決して低くはないのです。
 

まとめ

退去時のエアコン交換費用として10万円を請求された場合でも、それが通常の使用による消耗や経年劣化によるものであれば、借主が負担する必要は基本的にありません。契約書を見て、そこに特約が設けられておらず、日々の利用で過失などもない限り、法的にも正当性のない請求は拒否できます。
 
不当な請求から身を守るためには、賃貸借契約における「原状回復」のルールを理解し、契約書の内容を見直すことが大切です。
 
とはいえ、もしトラブルに直面した場合には、1人で悩まず、弁護士や自治体の設置する相談窓口をはじめとした専門機関などに相談することをおすすめします。
 

出典

国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版) 表2 原状回復の定義(8ページ)
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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