娘が夏休み中「通学定期」をバイトや遊びに使用しています。「学校に通う」以外で使って問題ないですか?“不正乗車”になる場合もあるのでしょうか?
配信日: 2025.08.04

また、問題ない場合でも、金銭面から見て夏休み中に定期券を買うのが適切なのかも悩みどころではないでしょうか。本記事では、通学定期の利用ルールと、夏休みに定期を買うべきかの損得判断について解説します。
通学定期を通学以外に使うのは問題ない
通学定期券(通学定期乗車券)は、学生が自宅から学校まで通うための合理的経路に対して発行される、割引価格の定期券です。通学定期券の購入には、学校が発行する通学証明書が必要であり、区間はあくまでも自宅の最寄り駅から学校の最寄り駅までに限られます。
つまり、夏休みだからといって、購入区間を自宅の最寄り駅とアルバイト先の最寄り駅に変更することなどはできません。
一方、すでに購入した通学定期券を使って、バイトや遊び、通塾などを目的に乗車すること自体は違反ではないと考えられています。
JR東日本の旅客営業規則第168条では、通学定期券が無効となるケースとして、「通学資格を失った後に使用した場合」や「証明書を携帯していない場合」が明記されていますが、「通学以外の目的で使用した場合」という理由で無効になるとは書かれていません。
実際にも多くの学生が放課後や休日に、通学定期を使って私的な目的で電車を利用しています。
通学定期券でやりがちな不正乗車
通学定期を使用する際には、証明書(学生証と一体型のケースが多い)の携帯が義務づけられている点に注意が必要です。
通学のない日であっても、通学定期を利用する際には証明書を持っておかなければなりません。持っていない状態で使用した場合、規則違反と見なされる可能性があります。通学定期券と一緒にパスケースに入れておくなど、常に携帯する工夫が必要です。
当然ですが、「自分は夏休みには使わないから」といって友人に通学定期を貸してはいけません。不正乗車として非常に重く扱われます。
旅客営業規則によると、定期券を無効として回収した上で、「定期券が有効となった日から、定期券表示区間を毎日1往復した場合の運賃」と「その2倍に相当する増運賃」を請求するとしています。
例えば、片道230円の区間で、定期券の使用開始日から5ヶ月(約150日)経過後に不正乗車が発覚した場合、以下のような請求が発生する可能性があるのです。
●通常運賃(往復×150日):230円×2×150日=6万9000円
●増運賃(2倍分):13万8000円
●合計:20万7000円
非常に高額な請求になるため、「友人に貸すくらいなら大丈夫」といった軽い気持ちでも絶対に避けなければなりません。家庭内であらかじめルールを共有しておくことが大切です。
夏休みは定期券を買うべき? 何回使えば元を取れる?
夏休みに定期券を買うべきかどうかを判断するための、金銭的な目安を確かめましょう。例えば、JR東日本の230円区間の通学定期は次の金額で販売されています。
●1ヶ月:5020円
●3ヶ月:1万4300円
●6ヶ月:2万7100円
ここで夏休み分も含めた6ヶ月定期券を買う場合と、半年のうち4月から6月は3ヶ月定期券、7月、9月分は1ヶ月定期券を買い、8月は普通乗車券を購入する場合に分けましょう。2パターンの料金を比較します。
●6ヶ月定期の場合:2万7100円
●8月は定期券を買わない場合:1万4300円+5020円×2=2万4340円
この差額は2760円となり、これは230円区間の6往復分に相当します。つまり、8月中に6往復以上その区間を利用するなら、6ヶ月定期を買っておいたほうが得になるのです。
逆に、8月に数回しか乗らない見込みであれば、定期は買わずにその都度運賃を支払ったほうが割安になるケースもあります。部活、遊び、バイトなど夏休み中の予定をあらかじめ確認し、見込み回数が6往復を下回る場合で、6ヶ月定期券を買っている場合は払い戻し(手数料220円)し、夏休み明けに改めて定期券を購入するのもいいでしょう。
まとめ
通学定期券は、学校への通学経路であれば通学以外の目的でも使えます。ただし、証明書の携帯を忘れると規則違反となるため注意が必要です。
夏休み中も定期券を買うのは一見無駄に思えますが、半年定期であれば数回使うだけで元が取れるケースもあります。どの程度電車を利用するかを事前に確認し、上手に判断したいところです。
出典
東日本旅客鉄道株式会社 通学定期券に関するご案内
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士