国の予想より「14年」も早く、出生数が70万人割れ! 今の生活では実感がわかないけど…… 将来、何が起こるの?

配信日: 2025.08.03

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国の予想より「14年」も早く、出生数が70万人割れ! 今の生活では実感がわかないけど…… 将来、何が起こるの?
昨今の日本は、出生数の減少が止まりません。2024年に生まれた子どもの数は、国の推計より14年も早く70万人を割り、少子化に歯止めがかからない状況です。
 
しかし、「今の生活は変わりないけど……」という思う方も多いでしょう。少子化になると将来どのようなことが起こるのか、FPである筆者が考察します。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

今、何が起きているのか?

厚生労働省の「令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、日本の出生数は以下のとおりに推移しており、予想以上のペースで減少しています。

1995年:118万7064人
2005年:106万2530人
2022年:77万759人
2024年:68万6061人(概数)

また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口 ―令和3(2021)~52(2070)年― 令和5年推計」による将来人口年表では、70万人を下回るのは2038年ごろとされていたことを考えると、現実には14年も前倒しになっています。
 
これは単なる人口の数字ではなく、将来の「社会の形」や「お金の流れ」に直結する問題です。
 

なぜ実感がわかないのか?

現在、働き盛りの世代(30~50代)は、物価は上昇しているとはいえ緊迫感を持つほどではなく、比較的経済は安定しています。
 
また、子育てや住宅ローン返済という日々の家計運営に集中しているので、将来を見通すという余裕がないという事情もあるでしょう。さらに、実際に年金や医療・介護といった社会保障制度の恩恵もまだ受けていないため、「受給額が少ない」という実感がないということもあります。
 
この3つの理由から、少子化による生活の変化を「まだ感じていない」という人が多いのです。しかし、実際には経済・財政状態は悪化しており、将来じわじわと確実に影響が実感としてのしかかってきます。
 

将来、私たちの社会はどうなっていくのか?

「将来、どのようになるのか」予想される社会の変化をあげてみました。
 

1. 社会保障制度の「逆ピラミッド化」

現在、現役世代1人で1.8人の高齢者を支えていますが、2040年には1人で約2.2人以上を支えるといわれています。それに伴って、年金・医療・介護の「自己負担増」や「受け取る金額の減少」の可能性が高くなります。
 

2. 働き手不足 からサービスのクオリティーが低下・価格が上昇

医療・介護・物流・保育など、人手がいなければ成り立たない業界において業務継続が難しくなります。
 
継続するために手厚いサービスの質を提供することはできなくなる、あるいは従来と同程度のサービスを提供するためには人材の確保のために人件費を上げなければならず、それが価格上昇を招きます。その結果、お金があってもサービスが受けられない時代がやってくる可能性が指摘されます。
 

3. 地方消滅・インフラ縮小

就労機会の減少などにより、若者が地元を離れ都会に集中することで、経済活動が成り立たない地域が増加します。
 
すでに、具体的な傾向がみられていますが、例えば 銀行・病院・バス・電車などの社会インフラのなかには、経営が成り立たないため撤退することも予想されます。その結果、「住み慣れた町に住み続けられない」未来も視野に入ってきます。
 

4. 税金や社会保険料の負担増

少ない納税者・加入者で、大きな福祉を支える構図にならざるを得ません。具体的には、働き盛り世代にじわじわと増税・社会保険料負担が重く押し寄せてくる可能性が高まるでしょう。
 

5. 子育て世代は「選ばれる側」へ

子育て世代は、働き手や納税者としての「希少価値」が上がるため、住宅補助や保育・子育て支援を強化する企業や自治体が現在でも増加中ですが、この傾向は今後さらに加速することが見込まれます。したがって、子育て世代はさまざまな支援を受けられる可能性が高まるでしょう。
 

家計への具体的影響は?

これらを踏まえて、家計にはどのような影響があるのかを図表1にまとめてみました。
 
図表1

図表1
 

将来に備える

こういった背景の変化から、私たちが今から意識しておくべきことは、以下の3点にまとめられるかと思われます。
 

1. 公的年金に“過度に依存しない”老後資金設計を考える

現状では、公的年金制度は維持していくのは極めて難しいといわざるを得ません。老後の生活設計は、自己責任が前提の時代がやってきます。iDeCoやつみたてNISAを活用して、若いうちから「自分年金」の準備を意識することが求められます。
 

2. 教育・医療・介護サービスを「選択できるだけの情報や金銭的余裕」を蓄える

教育、医療や介護などの人件費に依存するサービスは今後、人材不足から料金が高騰する可能性が高くなります。自分が受けたいサービスを享受できるように情報収集に努めると同時に、金銭的な準備を心掛ける必要があるでしょう。
 

3.不動産や地域資産は“未来の価値”で見直す

今後、人口減少に伴い地域によっては、就労機会減少による人口流出が予想されます。今は便利でも、将来インフラ縮小のリスクがある地域になりうるかどうかの見極めが必要です。したがって今後は、「将来価値」に目を向けることが求められます。
 
以上のことを念頭におき、将来のために備えておきましょう。
 

出典

厚生労働省 令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口 ―令和3(2021)~52(2070)年― 令和5年推計
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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