入院費100万円でも実際の自己負担はおよそ9万円となるケースも? 高額療養費制度の概要や最新の動向を解説

配信日: 2025.08.02

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入院費100万円でも実際の自己負担はおよそ9万円となるケースも? 高額療養費制度の概要や最新の動向を解説
高額療養費制度を利用したいけれど、制度の概要や計算方法などがいまいちよく分からないというような悩みを抱えている方は意外と多いのではないでしょうか。
 
この記事では、高額療養費制度の基本的な仕組みから最新の動向を分かりやすく解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは、日本の公的医療保険における仕組みのひとつです。医療機関での窓口負担が、その月(1日から末日)において、年齢や所得に応じて設定された上限額を超過した場合、その超過分が後日支給される制度です。
 
70歳未満の方のひと月の自己負担上限額について、表1にまとめました(2025年7月時点)。
 
表1

適用区分 ひと月の自己負担上限額 多数回該当時
(4回目以降)
年収約1160万円~ 25万2600円+(医療費-84万2000円)×1% 14万100円
年収約770万~1160万円 16万7400円+(医療費-55万8000円)×1% 9万3000円
年収約370万~770万円 8万100円+(医療費-26万7000円)×1% 4万4400円
~年収約370万円 5万7600円 4万4400円
住民税非課税者 3万5400円 2万4600円

出典:厚生労働省「高額療養費制度について」を基に筆者作成
 
一般的な医療受診では、窓口での自己負担は医療費の1~3割です。
 
例えば、70歳未満・年収500万円の方が月間100万円の医療費を要した場合、本来の窓口負担は30万円(3割負担)ですが、高額療養費制度を利用することで実際の自己負担は8万7430円となり、残りの21万2570円は高額療養費として支給されます。
 

対象となる費用は?

高額療養費制度の対象となる費用は、「公的医療保険が適用される診療にかかる医療費」に限定されている点に注意しましょう。これは、病気やけがで病院や診療所、薬局などで受けた保険診療の自己負担分が対象になるということです。
 
高額療養費制度の対象外となる費用の一例は、以下の通りです。
 

・差額ベッド代(個室や特別室などを患者が希望して利用した場合の追加料金)
・入院中の食事代・居住費
・先進医療にかかる費用(保険適用外の最先端治療の技術料など)
・自由診療費(美容整形、インプラント、レーシックなど保険適用外の治療)
・入院時の日用品代(パジャマ、タオル、テレビカードなど)
・通院や入院時の交通費
・診断書や証明書などの発行費

 
特に入院が予想される場合は、対象外となる費用も別途予算を確保し、総合的な医療負担に備えましょう。
 

高額療養費制度を利用する際の注意点

高額療養費制度は医療費の自己負担を抑える仕組みですが、利用にはいくつかの注意点があります。
 

支給までに時間がかかる

高額療養費制度の払い戻し(支給)には、受診した月から少なくとも3ヶ月ほどかかる点に注意が必要です。高額療養費制度を利用する場合は、一時的に医療費を立て替える必要があり、家計に負担がかかる可能性があります。
 
こうした負担を軽減するために設けられているのが「高額医療費貸付制度」で、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で借り入れることができる場合があります。
 
高額療養費制度は、支給までに時間がかかるため、制度の利用や事前の貯蓄などを行い生活への負担を減らしましょう。
 

月をまたいだ申請はできない

月をまたいで治療した場合、治療費の合算ができない点に注意しましょう。高額療養費制度は「1ヶ月間(その月の1日~末日)」ごとに医療費を集計します。
 
急を要さない場合は、同月内で治療したほうが経済的な負担を抑えられるということです。なお、同じ医療保険に加入していて同一世帯にいる他の方の受診については、窓口でそれぞれが支払った自己負担額を1ヶ月単位で合算することができます(世帯合算)。
 

【重要】2025年制度改正の最新動向

高額療養費制度の最新情報は次の通りです。
 
2025年8月から段階的に実施される予定だった高額療養費制度の改正について、政府は2025年3月7日、実施を見送ると発表しました。この改正では、すべての世代における被保険者の保険料負担を軽減することなどを目的として、年収に応じた自己負担限度額の引き上げが予定されていました。
 
改正見送りの背景には、国民生活への影響や制度の持続可能性について、慎重な検討が必要だという判断があったとされています。そのため、現在の制度が継続されることとなり、利用者にとっては当面の間、現在の負担水準が維持されることになります。
 

高額療養費制度を活用すれば医療費の負担を軽減できる

高額療養費制度を活用することで、医療費の負担が軽減できます。しかし、利用には注意すべき点もあり、月をまたいだ合算ができないことや、適用できる費用とできない費用があることは頭に入れておいたほうがよいでしょう。
 
治療に専念するためにも、高額療養費制度の特徴を把握して、制度を正しく使えるようにしておくことをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 高額療養費制度について(3ページ、8ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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