「保育園」の倒産・廃業が増加…今、保育業界で何が起きている?
配信日: 2025.08.02


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保育園の倒産・廃業が急増! 現状と最新データで読み解く業界動向
2025年に入り、保育園の倒産や廃業が過去最多ペースで増加しています。
株式会社帝国データバンクの「『保育園』の倒産・休廃業解散動向(2025年上半期)」によると、2025年1月~6月の保育園事業者の倒産・休廃業・解散は22件で、前年同期の13件から約7割も増加しました。2025年は年間で過去最多だった2024年(31件)を上回る可能性が高いとされています。
この急激な増加の背景には、「待機児童ゼロ」を目指す政策により一気に施設数が増えたものの、少子化加速の影響で園児の確保が困難になったことが大きく挙げられます。ここ数年で全国的に保育施設間の競争は激しくなり、経営難に陥る園が増えました。
倒産・廃業が増加する3つの理由
なぜ倒産や廃業が増えているのでしょうか。その背景には、「人」と「お金」、そして「需給のバランス」といった要因が大きく関わっていると考えられます。
第一に、「園児数(利用者数)の減少」により運営収入が減少していることです。日本は少子化が進行中で、保育園の新規入園希望者も確実に減っています。入園児童減は各園の定員割れ、収入減を直撃していることが一つの要因となっているでしょう。
第二に、「人件費や物価高騰によるコスト増加」です。保育士不足の状態が続くなか、新規採用と定着のために人件費負担が重くなっています。加えて食材費やエネルギーコストも高騰し、経営を圧迫していることが考えられます。
第三には、「助成・補助金による需給バランスの変化」です。保育園には運営費として公的補助が出ますが、これにより施設の数が増えました。しかし、少子化の影響で需要(園児)よりも供給(施設)が上回り、園児獲得が困難な状況になっています。
経営悪化がもたらす影響
保育園の経営悪化や廃業が続くと、保護者や子どもへの影響も深刻です。突然の閉園による転園先探しの混乱や不安、不十分な引き継ぎによる保育の質低下、または希望の園への入園が困難になるケースもあるでしょう。特に私立園の突然の閉鎖は、自治体でも対応が後手に回るケースもあるようです。
一方で、すべての園が手だてなく経営悪化しているわけではありません。保育士の働く環境を改善し、よりいいサービスを提供することで、生き残っている園もあります。
まとめ
今後さらに少子化が進む一方、子育てや働き方の多様化によって保育のニーズも変化していきます。それに柔軟に対応し、地域や保護者と連携しながら新たな価値を提供していくことが、保育園の生き残りの条件となるでしょう。
保育業界が直面する困難は決して小さくありませんが、知恵と工夫、行政支援によって未来を切り開くことは十分可能です。今後も制度改革や経営支援、現場の実践力を高めることによって、子どもと家庭を支える保育のあり方を進化させていくことが求められています。
出典
株式会社帝国データバンク 「保育園」の倒産・休廃業解散動向(2025年上半期)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー