更新日: 2019.06.19 その他
「あの街に住んでみたい…」~そう考えたとき、チェックしておきたい5つのポイント
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
「住みたい」も「街」もあいまいな言葉です
実は「住みたい」という言葉は、かなりあいまいなものです。
そのポイントとされているのは、「交通利便性」「生活利便性」「子育て環境」などでしょうか。あとは「自然環境」「安全性」「資産性」など。そのほかに「地盤の強さ」が挙げられることもあります。
さらに、単身者、新婚カップル、共働き世帯、子育てファミリー、シニア夫婦などなど、住む人の生活スタイルや年齢によっても、判断基準は分かれることでしょう。
そして、「街」もかなりあいまいな表現です。最寄り駅が示されていても、徒歩何分までか、バス便でどこまでを含めるのかなど、駅からの距離・方向・範囲が漠然としているため特定はできません。
こうした、ちょっとあいまいなキーワード「住みたい街」で、マンションや戸建てのマイホーム取得(新築・中古を問わず)を検討しようと思うことがあるかもしれません。
そんなときに、最寄り駅、交通便に関して改めてチェックしておきたいポイントについて、考えてみましょう。
「吉祥寺」を例に見てみると……
例えば、関東の「住みたい街」の各種調査でランキング上位に挙がることの多い「吉祥寺」。
JR中央線と京王井の頭線のターミナル駅があり、商業施設や飲食店が集積するなど利便性が高い一方、井の頭公園に代表されるような自然や緑にも恵まれているイメージが、高い評価につながっているようです。
吉祥寺駅があるのは武蔵野市です。ある不動産検索サイトで「最寄り駅=吉祥寺」で中古マンションの販売物件を検索してみると、350を超える件数がヒットしました。
このうち、物件名に「吉祥寺」が入っているもの(いずれも専有面積は70平方メートルくらい)を少しだけ抽出し、その概略を以下に例示します(検索時点は2019年4月4日)。
ほんの数例ですが、築年数が古かったり駅から遠い(バス便など)と、坪単価で比較しても安めになるようです。マンションは同じ建物内であっても、部屋の階数や向きで価格(単価)には幅がありますが、ある程度の傾向は読み取れるのではないでしょうか。
物件の名称の使用には規制があります
そして、【例2】や【例3】は「吉祥寺=武蔵野市」というイメージと異なり、隣接する三鷹市や練馬区に所在することが分かります。そもそも、住宅の名前は分譲業者などが自由に決めてよいものなのでしょうか。
実は、「不動産の表示に関する公正競争規約」(公正取引委員会の認定を受けて不動産業界が設定した自主規制基準)によって、次のように細かく定められています。
(※より引用)
この使用基準は2006(平成18)年1月4日に施行された改訂版によるもので、改定前は基準があいまいでした。改定前のものの中には、この基準に適合しない物件名になっているケースも見られます(今さら名前の変更を強制されるようなことはないでしょうが)。
まとめ
以上を踏まえて、次の5つのポイントをチェックしておきたいものです。
(あ)最寄り駅から(徒歩便でもバス便でも)遠くなったり築年数が古くなるほど、価格(坪単価)は安くなる傾向がある。
(い)バス便の場合は、バス停までの距離や、実際に乗車する時間帯でのバス便の多さ、そして通勤時間帯や雨天の日の駅までのルートの渋滞状況などを充分調べておく。
(う)駅から遠くなると、居住地が最寄り駅とは別の市区町村になる場合がある。そのため、行政サービスや公立施設(学校を含む)などを、最寄り駅のエリアとは異なるところで利用することになるケースもある。
(え)物件名に最寄り駅名が付いていても、実態は千差万別。マンションの場合は建物銘板や住所の表示などで継続使用される機会もあるが、戸建ては新築販売時のものが完成後も引き続き使用される機会がない(単なるイメージ名称に過ぎない)ことも多々ある。
(お)価格(単価)について、「価格は高めだけど駅に近い」と「駅から遠かったりバス便利用になるけれど価格は安め」の選択肢には、予算や価値観など個人差があるので正解はそもそもない。
「あの街」にマイホームを持ちたいとぼんやりと考えたときには、上記のような視点も頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
出典:
※一般社団法人全国公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約及び施行規則」
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士