更新日: 2019.06.19 その他
子育て世代が接する機会の多い「育児休業給付金」について解説
これは、受給要件を満たす従業員が、子供(特別養子縁組による養子を含む)を養育するために休業した場合、その子供が所定の年齢に達するまで給付金をもらえる制度となります。
今回は、子育て世代が接する機会の多い、この育児休業給付金について説明させていただきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
「育児休業給付金の受給要件」
育児休業給付金の受給要件は、給付を受けようとする従業員の雇用契約が、契約期間の定めのない正社員などの無期契約労働者であるか、契約社員などの契約期間の定めのある有期契約労働者であるかによって異なります。
無期雇用契約者の場合、育児休業を開始する以前の2年間の内、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある場合に受給要件を満たすことができます。
有期雇用契約者の場合は受給要件が厳しくなっており、無期雇用契約者の受給要件を満たすことに加えて、同一事業主の下で1年以上継続して勤務しており、子供が1歳6ヶ月に達するまで労働契約の期間が満了することが明らかでないことが必要です。
ただ、数は多くありませんが協定によりこれらを満たさない場合でも育休の対象としてくれる事業所もありますので、個別に確認を行ってみることが大切です。
これらの受給要件を満たせば、男女の別なく、たとえ配偶者が専業主婦(夫)などで育児に専念できる状況であっても取得することができます。
「受給手続きはどうする? 」
原則として、休業しようとする1ヶ月前までに事業主に申し入れることによって取得することができますが、従業員本人が希望すれば、本人が勤務する事業所を管轄するハローワークに申請を行うことができます。申請は原則2ヶ月ごとに行う必要があります。
初回の申請には、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書と、賃金の額および支払い状況を証明する書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿またはタイムカードなど)のほか、母子手帳など育児を行っている事実を確認できる書類が必要です。
2回目以降は、ハローワークから交付される育児休業給付支給申請書と、賃金の額および支払い状況を証明する書類の2点で申請を行うことができますが、持参する書類が多いので事業主に実施してもらうほうが無難でしょう。
「給付金はいくらもらえるのか? 」
育児休業給付金の支給額は、1日あたり休業開始前の6ヶ月の賃金の総額を180で割った金額の67%となります(育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%)。この賃金は保険料等が引かれる前の金額で、賞与の額は含みません。
また、給付金の支給を受けているときに就労して収入を得た場合、収入額に応じて支給額が減額または停止されます。ここでの就労とは育休前の職場だけでなく、アルバイトなども含むので注意が必要です。
「支給期間はいつまで? 」
育児休業給付金の支給期間は、原則として養育している子供が1歳になる前々日までとなりますが、一定の場合において1歳6ヶ月と2歳まで延長を受けることが可能です。
一定の場合とは次のような状態を指します。
1歳6ヶ月への延長は、保育所へ申込みを行っているが入所できていない、いわゆる「待機児童」状態である場合と、1歳に達する以後に養育を行う予定であった人が離婚・死亡・負傷や病気、精神障害や出産を控えているなどの理由で養育が困難になった場合に適用を受けることができます。
2歳への延長は、基本的に1歳6ヶ月の延長のときと同じ条件ですが、本制度が平成29年10月より始まったため、支給期間の延長は平成28年3月31日以降に生まれた子供のみが対象となっています。
「まとめ」
2019年10月から実施される「幼児教育・保育無償化」により、全世帯で3歳から5歳までの児童の認可保育所や幼稚園の保育料が無償化され、0歳から2歳の児童の保育料に関しても住民税非課税世帯に限り無償化されます。
この制度の開始により、従来は保育所などを利用していなかった世帯の申込みが増加すると予想されます。その結果、保育所などの受け入れ人数を上回ってしまい、保育所などへ通うことのできない「待機児童」が増加すると見込まれています。
育休取得率は女性のほうがまだまだ高いですが、男性の育休取得率もここ数年で大きく上昇しており、これからますます子育ては男女共同参画の色合いを強くしていくでしょう。
今後は男女ともに育休取得が身近になっていくと思われますので、制度の概要を明らかにしておくことが重要です。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表