更新日: 2019.06.14 その他

あなたも中小企業の後継者に!? 良い会社を次の世代に引き継ぐための事業承継問題

あなたも中小企業の後継者に!? 良い会社を次の世代に引き継ぐための事業承継問題
「せっかく素晴らしい技術を持っている会社なのに、世代交代がうまくいかずに廃業してしまった」「息子に事業を継がせる準備を何もしなかったので、多額の税金の負担を強いられた」
 
「外国資本に買収されて、これまで培ってきた技術やノウハウのすべてを持っていかれた」
 
このような話がめずらしくない昨今。わが国において、今後さらに顕在化してくると予想される問題として、中小企業・小規模事業者の世代交代(事業承継)の問題があります。
 
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

事業承継問題の解決に向けた国の取り組み「事業承継税制」

事業承継において、まず1つは後継者不足の問題があります。子供や親族の中にしかるべき後継者がいない場合には、信頼できる第三者に事業を承継する道を模索する必要があります。
 
次に、子供が引き継ぐ場合でも同様ですが、事業承継の際に大きな障害となるのが贈与税や相続税の負担の問題です。その問題を解決するために登場したのが「事業承継税制」です。
 
この「事業承継税制」が、2019年4月より今後10年以内に実際に承継を行う者を対象として大幅に拡充されます。その内容を簡単に確認してみましょう。
 

1.事業承継時の贈与税・相続税の現金負担をゼロに

これまでの事業承継税制では、先代経営者から取得した非上場株式のうち、対象となるのは「議決権株式総数の3分の2まで」と上限が決められていました。さらに、相続税の場合の猶予割合は80%となっていましたので、実際に納税猶予される額は3分の2×80%=約53%のみでした。当然残りの部分については課税され、税金の負担が強いられることになります。
 
今回の改正では、対象となる株式数の上限が撤廃されるともに、すべて(100%)の株式が納税猶予の対象となりました。これによって、事業承継の際の贈与税・相続税の金銭負担はゼロとなります。
 

2.雇用の維持要件の撤廃

これまでは、事業承継時の雇用(従業員)数の8割を5年間平均で維持するという雇用維持要件がありました。そして、もし8割が未達となってしまった場合には、猶予されていた税金を全額納付する必要がありました。
 
改正後は、雇用維持要件が撤廃され、8割を維持できなかった場合でも納税猶予が継続されることとなりました。
 

3.親族外の複数の株主からの承継も対象に

これまでは、1人の先代経営者から1人の後継者への贈与、相続だけが事業承継税制の対象となっていました。
 
改正後は、親族以外の方を含む複数の株主から、代表権を有する複数の後継者(最大で3人まで)に事業承継する場合でも対象となることになりました。
 

4.株価の下落に対応した減免措置

これまでは、事業承継の時点での株価を基に、その後の贈与税や相続税を算定していました。例えば、後継者が自主廃業や事業売却などを行う場合に、株価が事業承継時と比べて大幅に下落してしまったケースでは、過大な税負担を強いられることが多々ありました。
 
改正後は、事業承継の時点の株価との差額が生じている場合には、廃業や売却の時点の株価を基に再計算した上で減免措置をとることが可能となりました。
 

5.相続時精算課税制度が子や孫以外でも適用可に

これまでは、相続時精算課税制度の対象は、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫(直系卑属のみ)への贈与のみが適用対象となっていました。
 
改正後は、事業承継税制の適用を受ける場合には、贈与を受けた後継者が贈与者の直系卑属以外でも相続時精算課税を適用できるようになりました。
 

まとめ

2018年に「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という書籍が話題となりました。私も読みましたが、多くの優良な中小企業が後継者難でその存続に苦慮していることを改めて考えさせられる内容でした。
 
今回の事業承継税制の大幅な拡充は、国としてもある意味大盤振る舞いであるといえます。その背景には、わが国の屋台骨である中小企業・小規模事業者の事業承継を何とか支援したいという強い思いが感じられます。
出典:中小企業庁 平成30年度中小企業・小規模事業者関係税制改正について
 
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
 

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