手取り16万円、貯金ができず「将来は生活保護を」と考えています。「貯金ゼロで無収入」なら、受給できるでしょうか?

配信日: 2025.05.05

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手取り16万円、貯金ができず「将来は生活保護を」と考えています。「貯金ゼロで無収入」なら、受給できるでしょうか?
毎月の給料が低いと、月々の生活は何とかなっていても、思ったように貯金ができないというケースもあるでしょう。しかし、こうした生活では貯金がほとんどない状態で職を失ってしまうと、たちまち生活が立ち行かなくなり、困窮してしまうことも考えられます。
 
このような場合、生きていくためのとりでとして「生活保護」が思い浮かびますが、生活保護を受けるにはどのような条件が必要なのでしょうか。また、生活保護を受ける前にできることはあるのでしょうか。
 
本記事では、生活保護の受給要件と、生活保護を申請する前に受けられる支援について解説していきます。
新川優香

単身世帯の平均的な生活費はいくら?

総務省統計局の2024年の「家計調査報告 家計収支編」によると、単身世帯での月の平均消費額は16万9547円となっています。この調査では、住宅費は平均2万3373円となっていますが、調査対象者の中には持ち家の所有者など、住宅費がほとんどかからない人も含まれています。
 
そのため、もし都心に近いところや住宅費の高い地域に住んでいる場合、この金額よりも負担が増えることが考えられるでしょう。これらをもとに考えると、手取り16万円では貯金ができないどころか、マイナス家計になってしまう可能性があるのです。
 

生活保護の受給要件とは

基本的に生活保護は世帯単位で行われるので、世帯全員で協力して生活を切り盛りしていく必要があります。そのため、離れて暮らしていても家族や親族からの援助が受けられる状況にある場合は、その援助が生活保護よりも優先されます。
 
家族や親族からの援助がなく、生活保護の支援が必要な場合であっても、「自活」できるように、財産の整理をしたり就労の努力をしたりしなければいけません。具体的には生活保護の申請者に預貯金があれば、その資産を生活費に回すのはもちろん、生活に使われていない土地や家屋がある場合は、それらを売って生活費に充てていきます。
 
また、少しでも働くことができる場合は、自分の能力に応じて仕事をする努力も必要です。就労していなくても、公的な年金や手当など、ほかの制度で給付を受けることができる場合は、それを活用していくことになります。
 

生活保護っていくらもらえるの?

生活保護の支給額は、厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と世帯の収入を比較し、不足分が補填(ほてん)される仕組みです。最低生活費は地域や世帯の人数、年齢などによって異なるので、具体的な金額は住んでいる地域の役場に問い合わせるようにしましょう。
 
例えば、単身世帯で最低生活費が12万円と設定された場合、収入が5万円なら、不足分の7万円が支給されるという仕組みになっています。ただし、「収入」は給与のほかに、年金や手当も含まれるため、これらを差し引いたうえで支給額が決まることを覚えておきましょう。
 

生活保護に頼らず暮らしていくにはどうしたらいいのか

生活保護で生活をすると、所有する不動産や財産に制限が出てくる可能性があるため、できれば生活保護を受けたくないという人もいるでしょう。
 
そのような場合は、生活保護を申請する前に、自治体の「生活困窮者自立支援制度」を利用することをおすすめします。この制度は、失業や病気などで働けなくなり、生活が苦しい人を支援するもので、状況に応じたサポートを受けられます。
 
まず、収入がなくなると困ることが「住まいの確保」です。収入が減り家賃の支払いが困難になった場合は、生活困窮者自立支援制度の「住居確保給付金」を利用しましょう。
 
一定の資産収入等に関する要件や就職に向けた活動などの条件はありますが、対象者は一定期間、家賃の補助を受けることができます。また、長期的に収入が減る可能性がある場合は、公営住宅のような家賃の安いところに入居を検討するのも1つの方法でしょう。
 
生活困窮者自立支援制度では、将来の収入を確保するために、職業訓練や仕事探しのサポートも行ってくれます。それでも働くことが難しい場合は「家計相談支援」を利用すれば、現状の家計の見直しや、必要に応じた貸付のあっせんをしてもらうことが可能です。
 
このように、個人の工夫と合わせて自治体の制度を利用すれば、生活保護を受ける前に生活を立て直すこともできる可能性が高くなります。
 

生活保護は国民の権利。困ったときは申請を

生活保護を受けるにあたって、まずは家族での助け合い、財産の整理、収入の確保など個人でできることをおこなうことが必要です。また、職を失ったからといってすぐに生活保護を申請するのではなく、自治体の窓口で生活基盤を整えるサポートを利用することも考えましょう。
 
生活保護の支援金は、国民の税金で賄われています。やみくもに申請するのではなく、まずは自分にできることを1つでも実行してみることが大切です。ただし、生活の困窮度合いや緊急性は個人によって異なります。生活保護の受給は、国民が健康で文化的な生活を送るための権利でもあるので、本当に困った場合は自治体に受給の申請をするようにしましょう。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活困窮者自立支援制度
 
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級

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