子連れ離婚を考えています。昨年離婚した友人が「話し合いが面倒なので養育費はもらっていない」と…… 今はもらわない人が多いのですか?
配信日: 2025.06.17


CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
養育費の取り決めをしているシングルマザーの割合
実際に、養育費の取り決めをしている人といない人の割合は、どのくらいなのでしょうか。
厚生労働省の調査によれば、離婚したシングルマザーのうち、相手と養育費の取り決めをしている人は46.7%(令和3年)です。ただ、平成23年には37.7%、平成28年には42.9%だったので、養育費の取り決めをする人が増えていることが分かります。
(出典:厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」、厚生労働省「平成23年度 全国母子世帯等調査結果報告」)
同じ調査(令和3年)で、養育費の取り決めをしなかった理由については以下のとおりです。
・相手と関わりたくない:34.5%
・相手に支払う意思がないと思った:15.3%
・相手に支払う能力がないと思った:14.7%
離婚を決意して「相手と関わりたくない」という人は多いと思われますが、養育費は「子どもの生活や教育に必要なお金」です。子どもの父親が離婚して離れて暮らすようになっても、父親であることには変わりなく、扶養する義務もなくなりません。
今は「自分一人でなんとか頑張るから」と思っていても、子どもの教育費が想定以上にかかり、後悔する可能性もあります。子どもの健やかな成長を経済的に支えるために、養育費の取り決めをしておくことをお勧めします。
養育費の決め方
新しい生活をスムーズに始めるためにも、養育費の金額、支払方法、支払期間などは、できるだけ離婚前に話し合って決めておきましょう。
(1) 金額
養育費の金額は、双方の収入、子どもの人数と年齢などに応じて決めます。裁判所が「養育費算定表」(※1)を公表しているので、それを参考にして話し合いを進めるとよいでしょう。
「算定表」では子どもの人数と年齢(0~14歳または15歳以上)、夫婦それぞれの収入により、養育費の目安金額が記載されています。例えば、14歳以下の子どもが1人で、父親の年収が500万円、母親の年収が250万円とすると、父親から受け取る養育費の目安は月4~6万円です(※2)。
ただし、養育費はそれぞれの家庭の状況に応じて決められるものなので、双方が納得すれば増額してもらうことも可能です。また、養育費を受け取っている期間にどちらかが病気で働けなくなった場合など、状況が大きく変わった場合は、養育費の額を変更することも可能です。
(2) 支払期間
養育費の支払期間は、離婚した直後から子どもが社会的・経済的に独立するまでと考えるのが一般的です。子どもが大学や専門学校に進学したいと希望する場合に、経済的な理由で進路を狭めることがないよう、大学・専門学校卒業までの養育費も、あらかじめ取り決めておくとよいでしょう。
(3) 支払方法
養育費は毎月、銀行振込で支払われることが多いようです。養育費の月額だけでなく、「毎月・月末までに」などの支払時期、それに加え振込先の銀行口座を取り決めておきましょう。また、話し合いで双方が納得すれば、ある程度まとまった金額を支払ってもらうことも可能です。
決めたことは書面にして残す
養育費に関して話し合いで取り決めた事項を、書面に残しておくことは必須です。養育費の支払いは、長い期間にわたって続きます。書面に残さず口約束のみの場合、夫婦それぞれの記憶に食い違いが生じてしまい、トラブルになることが心配されます。できれば公証役場に公正証書にしておくと安心です。
公正証書とは、公正役場において公証人に作成してもらう文書のことです。公文書として取り扱われるため信頼性が高くなります。万が一、相手が養育費を支払ってくれなくなった場合にも、一定条件を満たしているこの公正証書があれば、強制執行を実施でき、養育費を支払ってもらうことができます。
話し合いが進まないとき
相手が話し合いに応じてくれないときやもめてしまったときは、家庭裁判所に家事調停の申立てをしましょう。調停委員が間に入ってくれて、夫婦の話し合いの場を設けることが可能です。話し合いの場でも決まらないケースにおいては、家事審判手続きに移ることになり、裁判で決めることもできます。
このようなことは、子どものためにも避けたいのですが、知識として知っておくとよいでしょう。
まとめ
新しい生活をできるだけ不安なくスタートさせ、子どもが健やかに成長していくためにも、離婚前に養育費ついて相手と話し合い、取り決めをしておくことをお勧めします。話し合いに不安を感じるようなら、まずは、自治体のひとり親家庭支援の窓口や法テラスで、相談してみてはいかがでしょうか。
出典
(※1)最高裁判所 平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
(※2)最高裁判所 (表1)養育費・子1人表(子0〜14歳)
厚生労働省 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査
厚生労働省 平成23年度 全国母子世帯等調査結果報告 17 養育費の状況
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者