中1の息子に「テストで1教科90点超えたら、1000円ちょうだい」と言われました。毎月“お小遣い”もあげてますが、良くないって本当ですか? やる気を奪う「アンダーマイニング効果」とは
配信日: 2025.06.07

努力のきっかけになるのなら……とは思うものの、心のどこかで「お金目当てになってしまわないだろうか」と不安に感じることもありますよね。月のお小遣いとは別に、成果に応じた報酬を与えることは、果たして子どもの学習意欲にとって、良いことなのでしょうか。
実際、心理学の世界では「アンダーマイニング効果」といって、外からの報酬が本来のやる気を損ねてしまう可能性を指摘しています。
本記事では、このアンダーマイニング効果についての解説と、子どもの勉強と金銭的なごほうびとの上手な付き合い方について考えてみます。

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「やる気」を奪う? アンダーマイニング効果とは
アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけ(自分の内側から生じるやる気)で行動していた人が、外部からの報酬を受け取ることで本来の意欲を減少させてしまう現象です。
もともと興味や達成感から行っていた活動なのに、金銭やモノなどの外的報酬が与えられると、行動の目的が報酬の獲得へと変化することがあります。その結果、報酬がなくなった際に活動自体への関心も低下してしまうのです。
子育ての場面では「ごほうび」を使うことがあると思いますが、使い方を間違えると逆効果になってしまう恐れがあるため、注意が必要です。
なぜアンダーマイニング効果が起こるの?
今回のケースでみていくと、月のお小遣いが5000円で、テストで90点以上を取ったときに、1教科あたり1000円をごほうびとして渡します。この場合、5教科とも90点以上を取れば、合計で5000円となり、お小遣いと合わせて1万円になります。
中学1年生が月に使えるお金としては、かなり大きな金額といえるでしょう。このような状況では、勉強すること自体よりも「お金をもらうこと」が目的になってしまう可能性があります。
この状況をアンダーマイニング効果に当てはめてみると、本来「いい点数を取りたい」「もっと賢くなりたい」といった内発的動機で行っていた勉強が、報酬によって外発的に動機づけられることで、「お小遣いをもらうため」の手段に変わってしまうのです。
そのため、お小遣いをあげることをやめたり金額を下げたりすると、勉強をする目的がなくなり、やる気が削がれるという流れになりかねません。
金銭的ごほうびの使い方のコツ
アンダーマイニング効果を避けつつ、金銭的・物質的なごほうびを上手に活用するには、以下のポイントが重要です。
・内発的な動機づけを重視する
報酬だけに頼らず、達成感や成長の実感など、本人の内発的なやる気を引き起こす環境をつくる
・報酬の種類や与え方を工夫する
金銭だけでなく、旅行やテーマパークへのお出かけや言葉による承認など、多様な報酬を組み合わせたり、結果だけでなく行動やプロセス自体を評価したりする
・目標を細分化し、達成感を積み重ねる
段階的な目標設定で達成感を得やすくし、やる気の維持につなげる
また、報酬をサプライズで与えることも有効です。事前に約束するのではなく、行動後に思いがけず報酬を与えるほうが、結果的に同じ報酬を与えることになっても、やる気の低下を防ぎやすくなります。
子どもの学びたい気持ちを育むために
金銭的なごほうびは、使い方を間違えると本来のやる気を損なうリスクがありますが、工夫次第で習慣づけや行動を変えるきっかけとして活用することもできます。
しかし、中学1年生の場合、月のお小遣いが1000~2000円程度が一般的だと考えると、月に5000円もらっている子に、1教科あたり1000円のごほうびを出すのは多いかもしれません。
子どもにとっての勉強が「ごほうびをもらうための手段」とならないよう、内発的な動機づけを尊重してあげられるといいですね。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー