「初任給30万円だから」と、家賃10万円のマンションに住む娘。さすがに「新社会人には高すぎる」と思うのですが、家計のやりくりは大丈夫でしょうか? 親として多少“援助”すべきですか?

配信日: 2025.06.05

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「初任給30万円だから」と、家賃10万円のマンションに住む娘。さすがに「新社会人には高すぎる」と思うのですが、家計のやりくりは大丈夫でしょうか? 親として多少“援助”すべきですか?
初任給の引き上げが話題となっている昨今、社会人デビューしたてでも月給30万円を超えるケースも珍しくない時代となっているようです。初任給が20万円台前半だった世代からすると、理解はしていても複雑な気持ちになるといったところでしょうか。月給が30万円あれば生活の自由度も上がり、家賃に支払える金額も多くなりますね。
 
本記事では、初任給30万円の娘が家賃10万円のマンションに住もうとしているケースを取り上げます。親は高すぎるのではないかと心配しているようですが……果たして生活できるのでしょうか。計算してみましょう。
八木友之

月給30万円の手取りは約24万円

給与は額面の金額をそのまま受け取れるわけではありません。社会保険料や税金などの控除額があり、これらの合計は額面の2割ほどになります。よって、月給30万円の手取りは約24万円ほどでしょう。
 
新社会人の場合は、前年分の給与がないことから住民税は天引きされないので、もう少し手取り額は多い可能性があります。ただし、初任給に30万円を出せる会社となると大企業が多いと考えられ、そういった会社では企業年金基金や持株会などの天引きがある可能性が高いことを考えると、気にしなくてよい誤差でしょう。
 

ひとり暮らしの生活費平均は約15万円

総務省の家計調査によると、単身者世帯の生活費の平均は家賃を除いて約15万円となっています。そこに10万円の家賃がかかるとすると、1ヶ月に必要なお金は約25万円です。手取り額24万円であることから、毎月の収支は1万円ほどマイナスとなる可能性が高いでしょう。「貯蓄なんてとんでもない」という生活になるかもしれません。
 
初任給が30万円あるからといって、家賃10万円の家に住むのは不可能ではありませんが、生活が苦しくなる可能性が高いといえるでしょう。
 

生活費の援助に対して贈与税はかからない

それでも社会に駆け出した娘を応援するため、当面の間は援助をしてあげようという親もいるかもしれません。しかし、社会人として自立した子どもに対してお金を渡す行為には、何かしらの税金がかかるのか心配になるところです。
 
結論から申し上げると、生活費の援助に対して贈与税はかかりません。なぜなら相続税法第21条の3に、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」には贈与税はかからないと規定されているからです。
 
つまり、子どもが社会人であろうと、親子はお互いに扶養する義務があることに変わりはないため、通常の生活を送るために必要なお金であれば贈与税はかからないのです。
 
先ほどの例で、親が毎月1~3万円程度の援助をした場合、毎月の収支はプラスマイナスゼロ、もしくは1~2万円の余剰資金が生まれます。
 
この分を貯蓄に回したり、突発的な支出に備えたりすることもできるでしょう。あくまで家庭の事情をふまえてのことですが、社会人2年目以降で給与がアップするまでの数年間に限り、親から1~3万円程度を援助することは一つの選択肢といえるかもしれません。
 

まとめ

初任給30万円の手取りは約24万円なので、家賃10万円のマンションに住むのは不可能ではありませんが、生活は苦しくなる可能性が高いと言えるでしょう。貯金はボーナス頼みになるか、ボーナスの有無や金額によっては貯金が一切できないかもしれません。
 
親が生活費の援助をする場合には、贈与税の心配は不要です。親が子どもの生活費を補填する行為は、「甘い」云々の意見は別として、扶養義務者としては当然だからです。
 
一方で、家賃は給与の3分の1以内が目安といわれるように、手取りの3分の1以内で考えるほうが現実的かもしれませんね。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
e-Gov法令検索 相続税法
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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