売れなくて「0円」で譲渡される戸建てがあるようですが、なにか注意点はありますか?

配信日: 2025.06.04

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売れなくて「0円」で譲渡される戸建てがあるようですが、なにか注意点はありますか?
近年、「0円物件」や「無償譲渡」といった言葉を耳にすることが増えてきました。少子高齢化や空き家問題の影響で家の買い手がつかず、売却も難しい戸建てが全国各地に存在しています。そのため、所有者が「無料でいいから誰かに譲りたい」と考え、0円で戸建てを手放すケースも出てきているのです。
 
一見すると、住宅が無料で手に入るというのは非常に魅力的な話に思えるでしょう。しかし、実際には数多くのリスクや注意点が潜んでいます。
 
本記事では、なぜ0円で譲渡される戸建てが存在するのか、その背景や注意点、取得後にかかる費用などについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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なぜ「0円」で戸建てが譲渡されるのか?

まず、なぜ住宅がタダで譲られるのか不思議に感じる方もいるでしょう。その理由の多くは、以下の3点に集約されます。
 
1つ目は、空き家の急増です。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家数は900万2000戸、空き家率が13.8%と過去最多で、この数十年で右肩上がりに増えています。特に地方や過疎地域では深刻な問題となっており、住む人がいなくなった家は維持管理をする人もいないまま、放置されることが多くなります。
 
2つ目は、維持コストの負担です。空き家であっても固定資産税や都市計画税は発生し、草刈りや修繕などの維持管理にも手間と費用がかかります。放置することで近隣トラブルや倒壊リスクが生じる可能性もあり、所有者にとってはお荷物となってしまうのです。
 
3つ目は、売却が難しい状況です。立地が不便だったり、建物が老朽化していたりする物件は市場価値が低く、売りに出しても買い手がつかないことが少なくありません。そこで、「売れないなら無料でも譲りたい」と考えるようになるのです。
 

0円物件を取得する際の注意点とリスク

無料で手に入るとはいえ、物件取得にはさまざまな注意点があります。特に気をつけたいのは、次の4つのポイントです。
 
1. 贈与税の問題
 
不動産を無償で譲り受けた場合、固定資産税評価額が年間110万円を超えると贈与税が課税されます。親族間の居住用譲渡では、特例が適用される場合もあります。
 
2. 法的責任の範囲
 
無償譲渡の場合、原則として「契約不適合責任」は適用されませんが、譲渡者が欠陥を故意に隠した場合は不法行為責任が問われる可能性があります。
 
3. 物件の状態調査
 
古い家屋は水回りや基礎部分の劣化が深刻な場合があり、修繕に多額の費用がかかることがあります。専門家による建物診断(ホームインスペクション)の実施が推奨されます。
 
4. 登記手続きと費用
 
売買契約に基づく所有権移転登記を行う場合、原則として固定資産税評価額に対して2%の登録免許税が課されます。司法書士に依頼する場合は、数万~10万円程度の費用がかかります。さらに、売買契約書を作成する際には契約金額に応じた印紙税が必要です。
 
0円物件は魅力的に見えても安易に飛びつくのではなく、リスクや譲渡後に発生するコストをしっかり理解したうえで慎重に判断しましょう。事前の調査と専門家への相談が、後悔しない物件取得への第一歩です。
 

取得後に発生する可能性のある費用

無料でもらえたと安心していても、物件を取得した後にはさまざまなコストが発生します。
 
まず、リフォームや修繕費用が代表的です。例えば、屋根の張り替えや水道管の交換、耐震補強などを行うとなると、数十万~数百万円単位の出費が見込まれることもあります。
 
次に、固定資産税です。たとえ評価額が低くても、課税標準に基づいた税金が毎年課されます。また、都市計画区域内であれば都市計画税も発生します。不動産を取得した年に一度だけ支払う不動産所得税も忘れてはいけません。
 
その他、不用品の処分費用や、庭木の伐採・除草、害虫駆除など、維持管理に関わる費用も忘れてはなりません。場合によっては、近隣住民への対応や自治会の加入など、地域特有の慣習にも対応する必要があるかもしれません。
 
さらに、火災保険や地震保険などの加入も検討しておくと安心です。
 
このような費用や手間をあらかじめ把握し、計画的に準備することが大切です。
 

0円物件はお得だけではない。慎重な判断を

「0円で家が手に入る」と聞くと、お得に思えるかもしれません。しかし、実際には隠れたリスクや将来的なコストが多く存在します。無償譲渡の背景には、所有者がその物件を持ち続けることに強い負担を感じているという事実があります。つまり、タダで譲られるということは、それだけ管理や再生が難しい物件である可能性が高いのです。
 
物件の状態や立地、法律上の問題、今後の維持費などをしっかりと見極めたうえで、慎重に判断することが求められます。気になる物件がある場合は必ず事前に調査を行い、可能であれば建築士や不動産会社、税理士など専門家に相談しましょう。
 
不動産は一度所有すると、簡単には手放せません。0円物件という甘い話に飛びつくのではなく、リスクとリターンのバランスを冷静に見極めることが大切です。
 

出典

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果
総務省 固定資産税
総務省 都市計画税
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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