3人兄弟の「次男」が大学へ入学!“子ども3人なら大学無償化”と聞いていたのに、入学金と授業料で「100万円」近く支払うことに! 大学無償化に潜むワナとは?
配信日: 2025.05.30

しかし、子どもが3人以上いるからといって、必ずしも無償化の対象となるわけではありません。「実は無償化の対象ではなかった」となってしまうと、私立大学の場合は入学金と授業料で100万円近い予想外の出費が発生します。
また、無償化といってもすべて無料で大学に通えるわけではないこと、今年度は無償化の対象だけど来年度は対象外となってしまう、というケースがあることにも注意が必要です。本記事では大学無償化に潜むワナについて解説します。
目次
子どもが3人いれば無条件に無償化となるわけではない! 無償化の条件と対象外になるケースは?
2025年度から高等教育の修学支援新制度が拡充されたことにより、「子どもが3人以上いる世帯」は所得にかかわらず、「大学無償化」の恩恵を受けられるようになりました。
ただし、要件を満たせば自動的に適用されるというものではなく、入学後に各学校を通じて申し込まなければなりません(2026年度進学予定の高校3年生からは前年度中に事前予約申込が可能)。
また、無償化となるのは学修意欲がある人に限定されています。具体的には、一定以上の成績を収めている、高卒認定試験の合格者である、学修計画書の提出によって意欲や目的を確認できる、などです。
なお、第3子以降に増額される「児童手当」や、第3子以降が無償となる「保育料」のように、第3子以降に適用される制度が多い中、大学の無償化は「子どもが3人以上いれば、第1子や第2子も対象になる」という点が大きな特徴があります。
ただし、これは単に子どもが3人いれば無償化の対象になるという意味ではありません。重要なのは、「税法上、扶養している子どもが3人以上」となっているかどうかです。
3人の子どものうち長男がすでに就職するなどで扶養から外れている場合、扶養している子どもは2人とカウントされ、制度の対象外となります。この判定は、世帯の税情報をもとにマイナンバーで行われます。基準は毎年12月31日時点の扶養状況です。
すでに社会人の長男、今年大学に入学の次男、高校生の長女といった構成の家庭の場合、次男は大学無償化の対象外となります。
なお、修学支援新制度で受けられる入学金・授業料の支援額は、私立大学の場合で最大約96万円(授業料70万円+入学金26万円)です。対象外となったことで、100万円近い思わぬ出費が生じてしまいます。
「初年度無償だから来年度も無償」ではないことに注意が必要
大学無償化制度は、一度対象となったからといって、在学中ずっと支援が受けられるわけではありません。制度の支援対象かどうかは毎年見直され、扶養状況が変化すれば、翌年度から対象外となることがあります。
例えば、長男が大学4年生、次男が今年大学に入学、長女が高校生という家庭では、その年の扶養している子どもの人数は3人となり、長男・次男ともに大学無償化の対象です。しかし、翌年、長男が社会人となって扶養から外れると、扶養人数は2人となり、次男は2年次から支援の対象外となります。
さらに2年目以降は、学修意欲と成果が必要です。具体的には、前年度にある一定以上(上位2分の1以上であること)の成績を残していること、もしくは標準単位数以上を取得し、学修計画書の提出によって意欲や目的を示す必要があります。
仮に子ども3人の要件を満たしていても、学修意欲・成果に関する条件を満たさない場合は、次年度以降無償化の対象外となってしまうのです。初年度が無償だったからといって、在学中ずっと無償が続くとは限らない点は、事前に理解しておく必要があります。
大学無償化の対象なら無料で通えるわけではないことにも注意
「大学無償化」の対象になっても、大学に無料で通えるわけではないことにも注意が必要です。大学無償化制度では、「授業料」と「入学金」のみが支援の対象だからです。例えば、施設整備費、実習費、教材費などは支援の対象外です。
大学によっては、授業料とは別に施設費や教育充実費として年間数万円から十数万円を徴収しているところもありますし、大学の教科書も高額な場合があります。学部によっては、さらに実験・実習費が必要となるケースもあり、こうした費用の負担は避けられません。
つまり、無償化の対象とされても「大学に通う費用が完全にゼロになるわけではない」という点は、事前にしっかり確認しておく必要があります。
「無償化」という言葉だけを信じて学費の準備を怠ると、想定外の出費に直面する恐れがあるのです。
まとめ
大学無償化制度は、子どもが3人以上いる家庭にとって大きな助けとなる制度ですが、「子どもが3人いれば無条件で対象になる」「一度対象になれば在学中ずっと支援される」「全ての費用が無料になる」といった思い込みには注意が必要です。
実際には、扶養人数のカウントには税法上のルールが関係しており、判定は年ごとに行われます。また、支援の対象となるのは授業料と入学金に限られ、それ以外の支出は自分でまかなわなければなりません。
支援を過信せず、制度の条件や対象範囲を正しく理解した上で、進学に向けた準備を進めることが、将来的な家計リスクを防ぐことにつながります。
出典
文部科学省 令和7年度から、子供3人以上の世帯への大学等の授業料等の無償化を拡充します!(「高等教育の修学支援新制度」の拡充)
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士