生活が苦しいという「高齢の母」は「生活保護の申請」を検討しているそうです。やはり「持ち家の実家」は手放さなければならないでしょうか…?
配信日: 2025.05.29

今回のケースでは、生活に困窮している高齢の母親が生活保護の申請を検討しているようですが、その際、持ち家の実家を手放す必要はあるのでしょうか。
本記事では、生活保護を受ける場合に家を必ず手放さなければならないのか、受給者被保護者の実態調査結果なども交えて解説します。

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生活保護の種類
厚生労働省によると、生活保護の種類は生活を営む上で必要な各種費用に対応して、「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」に分けられ、実費での支給または医療機関・介護事業者への直接支払いが行われます。
生活保護制度を利用するためには事前の相談、申請ののち、「生活状況等を把握するための実地調査」や「預貯金、保険、不動産等の資産調査」、「扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査」などを受ける必要があり、これらの調査をもとに、保護が決定されます。
資産価値のある「持ち家」は売却が原則
厚生労働省では、生活保護を受けるための要件を「世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提」としています。
ここでの資産とは「預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等」を指しますので、資産価値が高い持ち家であれば売却し、生活費に充てることが「活用」とみなされる場合もあるでしょう。
ただし、生活保護の目的が「健康で文化的な最低限度の生活の保障」であることから、諸事情で新たな住居を用意できなかったり、病気や高齢のためバリアフリー住宅でないと暮らせなかったりといった、持ち家がなくなると生活を維持できない場合は、例外となる可能性もあります。
また、例えば家屋の築年数が経過していて土地も狭小な場合など、資産価値がほとんど残っていない場合も持ち家に住み続けられる可能性があるでしょう。
居住用の「持ち家」があっても「生活保護の申請」はできる
実際に生活保護を受けている方のデータから見ても、持ち家に住み続けている方は一定数存在しています。
厚生労働省が実施した「令和5年度被保護者調査」の統計表によれば、被保護世帯の住居区分総数162万6263世帯に対し、持ち家で生活しているのは4万6737世帯です。つまり、生活保護を受けている方のうち、約2.9%が持ち家で暮らしているということが分かります。
また、厚生労働省ホームページの「生活保護を申請したい方へ」では「生活保護の申請について、よくある誤解」のひとつとして「持ち家がある人でも申請できます」とした上で、「利用しうる資産を活用することは保護の要件ですが、居住用の持ち家については、保有が認められる場合があります。まずはご相談ください」と注意喚起していますので、売却は必須ではないといえるでしょう。
ただし、持ち家に住宅ローンが残っている場合は事情が変わってきます。住宅ローンの返済を生活保護費で充当する状況になった場合、生活保護制度の趣旨に反してしまうためです。残債の金額や返済期間などにより左右される可能性があるため、まずは自治体の窓口に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
持ち家には土地も含め「資産価値」がありますので、生活保護の要件にある通り生活費としての「資産の活用」が原則ですが、実際は持ち家に住み続けている被保護者の方もいらっしゃいます。
転居が難しい・資産価値が低いなどの場合は手放さずに済む可能性があるものの、生活保護は世帯ごとにケース・バイ・ケースの性格が強いため、まずは住んでいる地域を所管する福祉事務所へ足を運んでみましょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護を申請したい方へ
e-Stat政府統計の総合窓口 厚生労働省 被保護者調査/令和5年度被保護者調査/年次調査(基礎調査、個別調査)令和5年7月末日現在 確定値 表番号9-1 被保護世帯数、住居区分・床面積別上限額の適用状況・世帯類型・世帯人員・級地別
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー