高校に通う子どもがいます。世帯年収「1000万円」ほどあるのですが、国の修学支援は受けられないのでしょうか?
配信日: 2025.05.28

令和7年度より「高校生等臨時支援金」が創設され、返還不要となる授業料支援の対象者について範囲が広がりました。また、「高校生等奨学給付金」の給付額も拡大されたので紹介します。

ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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高等学校(全日制)の学校教育費
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の学習費総額(学校教育費および塾代、習い事などの学校外活動費)を見ると、公立高等学校では約59万8000円(うち学校教育費約35万1000円)、私立高等学校では約103万円(うち学校教育費76万6000円)となっています。
公立高等学校の学校教育費の内訳を見てみましょう。
入学金等1万8052円、授業料4万5194円、修学旅行費等3万6452円、学校納付金等3万5635円、図書・学用品・実習材料費等6万2292円、教科外活動費4万9371円、通学関係費9万7738円、その他6708円となっています。
私立高等学校の場合は、入学金等7万9056円、授業料23万3102円、修学旅行費等5万9293円、学校納付金等11万2256円、図書・学用品・実習材料費等7万4565円、教科外活動費5万6800円、通学関係費14万2670円、その他8748円となっています。
高等学校等就学支援制度
高等学校等就学支援制度とは、所得等の要件(年収約910万円未満)を満たす世帯の生徒に対して、授業料を支援する仕組みです。世帯所得や通う学校種により、支給の有無や金額が異なります。
国公私立を問わず、公立高等学校の年間授業料に相当する11万8800円(全日制)が支給されます。私立高等学校に通う世帯年収590万円未満の生徒には39万6000円(全日制)が支給されます。支援金は設置者が代理受領し、授業料と相殺されます。
※両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上)、中学生1人の子どもがいる世帯
高校生等臨時支援金(創設)
令和7年の通常国会において、高校生で返還不要となる授業料支援の対象者が、これまでより広い範囲に拡充されました。
高等学校等就学支援金制度では、年収約910万円以上世帯は授業料の支援を受けられませんが、年収約910万円以上世帯には「高校生等臨時支援金」創設されました(令和7年度限り)。支援額は、高等学校等就学支援金と同じ年間11万8800円です。
国公私立を問わず、また、保護者の所得にかかわらず高校生は年間11万8800円の授業料の支援を受けられることになりました。
自治体独自の私立高校授業料軽減の仕組み
国の制度に上乗せする形で、私立高校の授業料を独自に支援する自治体があります。
例えば、東京都の場合、生徒と保護者が都内に住んでいる場合には、(公財)東京都私学財団が実施している「私立高等学校等授業料軽減助成金」を申請することによって、保護者の所得に関係なく私立高校の授業料の負担軽減を受けられます。
ただし、これは国の「高等学校等就学支援金」とは別の支援制度であるため、それぞれの制度について個別に申請する必要があります。
国の「高等学校等就学支援金」と「高校生等臨時支援金」と併せて、都内私立高校平均授業料相当額・最大49万円(全日制・定時制)まで支援を受けられます。
高校生等奨学給付金(拡充)
文部科学省のデータを見ると、授業料以外の学校教育費が結構かかります。授業料以外の教育費負担を軽減するため「生活保護世帯・非課税世帯」の高校生等を対象に、授業料以外の支援を行うのが高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)です。
給付年額(全日制)は生活保護受給世帯の場合、国公立は3万2300円、私立は5万2600円です。非課税世帯の場合、令和7年度、第1子の給付額が拡充され、第2子以降と同額の金額と同じになりました。具体的には、国公立14万3700円、私立は15万2000円となります。
国の制度だけでなく、お住まいの自治体の制度もしっかり確認して、対象となる制度はぜひ活用しましょう。
出典
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査の結果について
文部科学省 高校生等への修学支援
文部科学省 高校生等への修学支援 高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)
東京都私学財団 私立高等学校等授業料軽減助成金事業(都の助成制度)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー