体調が悪くても「予定していた旅行」に行くべき?「キャンセル料がもったいないから」と、無理して行った場合の“損失”とは
配信日: 2025.05.26

しかし、このキャンセル料は経済学でいう「サンクコスト(埋没費用)」に該当します。冷静に割り切ることも重要です。
ツアーのキャンセル料
観光庁および消費者庁が定めた「標準旅行業約款」によれば、国内ツアーのキャンセル料は図表1の通りです。例えば、予約時に10万円の旅行代金を支払って、前日にキャンセルをする場合は4万円がキャンセル料となります。
図表1 国内ツアーのキャンセル料
取消日 | キャンセル料率 |
---|---|
旅行開始日の20日~8日前 | 20% |
旅行開始日の7日~2日前 | 30% |
旅行開始日の前日 | 40% |
旅行開始日の出発時刻前 | 50% |
旅行開始日の出発時刻後/無連絡不参加 | 100% |
国土交通省「標準旅行業約款」を基に筆者作成
サンクコストとは
サンクコストとは、すでに支払ったお金や費用で、どんな選択をしても取り戻せないものを指します。
旅行を申し込んだ後、出発日が20日前以内になると、行く行かないにかかわらず、キャンセル料はもう取り戻せない費用になります。その費用を惜しむあまりに非合理的な判断をすると、さらに大きな損失を招く可能性があります。これを「サンクコストの誤謬」と呼びます。
サンクコストの誤謬が生む損失
例えば、体調が悪い状態で旅行に行く場合を考えてみましょう。キャンセル料が惜しくて無理をして出発した結果、体調がさらに悪化し、旅先で病院に行く羽目になったり、一緒に旅行する人に心配をかけたりする可能性があります。それに加えて、帰宅後も体調不良が続き、仕事や日常生活に支障が出ることも考えられます。
これでは、元のキャンセル料以上の損失が発生してしまうことになりかねません。キャンセル料は確かに一時的には心理的な負担となりますが、サンクコストは過去のものであり、未来に目を向けることが重要です。
旅行の計画時にキャンセルの発生を想定しておく
友だちと旅行を計画する際には、キャンセルへの対応ついてあらかじめ話し合っておくことをお勧めします。なぜなら、一人の事情で複数の人のキャンセルが発生する可能性があるためです。自分の都合が原因の友だち分のキャンセル料をどう負担するのかについては、たびたびネット上で話題になっています。
旅行を予約する際、キャンセル料に関して手当てをしておくこともできます。例えば、旅行キャンセル保険に加入するという方法があります。旅行キャンセル保険は商品によって、補償内容が異なるので、加入にあたっては、補償対象になるキャンセル理由や保険金として支払われる補償割合をあらかじめ確認をしておきましょう。
また、柔軟なキャンセルポリシーを提供している航空券や宿泊先を選ぶことで、急な旅程の変更にも対応しやすくなります。こうした選択肢を検討しておくことで、予期せぬ事態に備えることができます。
まとめ
旅行は楽しむためのものです。無理をせず、体調や状況が整ったときに改めて計画を立て直すことで、よりよい経験を得られる可能性が高まります。キャンセル料を冷静に受け入れ、未来の自分のために前向きな選択をしてみましょう。
出典
国土交通省 観光庁 旅行業法及び省令等
執筆者:新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA