子どもが独立したので、高齢の親と「同居」するために実家を建て替え予定です。無人になる自宅を使って実家の「建築費用」を捻出する方法はありますか?

配信日: 2025.05.24

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子どもが独立したので、高齢の親と「同居」するために実家を建て替え予定です。無人になる自宅を使って実家の「建築費用」を捻出する方法はありますか?
人生100年時代、将来的に生活資金が枯渇して生活が立ちいかなくなる不安を抱える高齢者は少なくありません。
 
資金不足を解消するために、住宅資産を現金化する方法があります。「住宅資産活用」には、通常の方法による売却のほか、リバースモーゲージやリースバックがあります。
 
本記事では、リースバックを中心に活用方法や留意点について解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

住宅のリースバックとは

住宅のリースバックとは、自宅を不動産業者に売却して一括の資金を受け取り、同時に賃貸借契約を結んで、売却後は毎月賃料を払いながら契約で定めた期間、同じ家に住み続ける不動産取引です。借家として今の家に住み続けながら、資金を得られる点がメリットです。
 
自宅を売却して利益が出たとき、「譲渡所得」として所得税・住民税がかかります。譲渡所得は、譲渡価額から取得費や譲渡費用などの必要経費を差し引いて求めます。
 
自宅を売却したときに、税額を計算する際、譲渡諸時金額から3000万円の特別控除がありますので、通常は売却時の税金は心配しなくていいでしょう。
 

メリット

多くの場合、利用者の年齢にかかわらず利用できます。不動産を通常の方法で売却するのに比べ、短期間(早ければ数週間程度)で売却できます。
 
売却代金は一括で受け取ることができ、使途は自由です。例えば、高齢者施設への入居一時金、建築資金の一部、老後の余裕資金、相続前の不動産処分、住宅ローン等の借入金の返済資金、子どもの教育資金等に活用できます。
 
賃貸借契約のため、固定資産税等の税金や修繕費等の費用を支払う必要はありません。また、売却した自宅を買い戻せる場合もあります。
 

留意点

近年、高齢者世帯を中心に住み替え・建て替えの資金の確保等を目的として、リースバックを活用した不動産取引が増えています。
 
一方、契約内容や将来の収支計画について、理解が不十分なまま強引な勧誘でリースバック契約を締結してしまい、トラブルに発展するケースが多発しています。
 
一つの不動産事業者の営業トークを真に受けず、家族とともに複数の事業者の話を聞き、きちんと契約の条件や内容を理解しないかぎり契約しないことが大切です。
 
自宅の売却は、契約が成立してしまうとクーリングオフはできません。市場での取引価格より著しく低額な代金を提示される場合もあるので、提示された売却価格について、複数の事業者の意見を聞いてみることが大切です。
 
また、解約の際に違約金を支払うことで生活資金が少なくなったりするなど、今後の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります。賃貸であるため、リースバック期間中に新規に設備を導入する際は、事前にリースバック事業者の承諾を得なければならないケースも想定されます。
 
リースバックで結んだ賃貸借契約においては、身近な普通借家契約ではなく、期間が定められる定期借家契約が多く、ずっと住み続けられる保証はありません。家賃が相場より高額に設定されてしまうことや、契約更新時に家賃が値上げされることもあり、経済的事情の変化により支払えなくなる事態が生じる場合もあります。
 
契約の条件次第で、売却した自宅を買い戻すことが可能ですが、買い戻せる条件や買い戻し価格によっては買い戻せない場合もあります。
 

リバースモーゲージとの違い

多くのリバースモーゲージは、住宅を担保に現金を借りて、生存期間中に利息のみを支払い、契約者の死後に元本を一括返済する融資契約です。一方、リースバックは、住宅の売買契約と同住宅の賃貸契約の複合です。
 
リバースモーゲージ固有のリスクには、不動産価格の下落リスク、金利上昇リスクがありますが、リースバックでは住宅の所有権は不動産業者に移転するのでこのようなリスクはありません。その代わりに、賃料を支払い続ける必要があり、契約更新時に家賃が値上げされるリスクがあります。
 
なお、リバースモーゲージ、リースバックとも「長生きリスク」があります。長生きすれば、利息や賃料の総額が増え当初の現金受領額を上回り、資金が枯渇するリスクということです。契約前に、住み続ける期間、毎月賃料を支払えるかシミュレーションすることが大切です。
 

まとめ

不動産取引は、複雑です。リースバックを契約する前に家族・親族など信頼できる方に相談し、一人で対応しないようにしましょう。お住まいの自治体の消費生活センター等に相談することも、選択肢です。
 
また、住宅を現金化する方法は、ほかにもあります。複数の不動産業者や金融機関に相談して、ご自身のライフプランに合った方法を選びましょう。
 

出典

国土交通省 住宅のリースバックに関するガイドブック
国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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