マンションの家賃を「5万円値上げする」と言われました。オーナーがかわったそうですが、従うしかないのでしょうか?
配信日: 2025.05.23

そこで本記事では、家賃が値上げされる条件や、値上げを告知された際にできることについて解説します。家賃が値上げされる背景についても触れますので、ぜひ参考にしてください。

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家賃の値上げができる条件と対処法
オーナー側が家賃の変更を請求するには、いくつかの条件があります。借地借家法の第32条「増減請求権」に基づき、家賃の増額を請求できる条件と、言われたときの対応について解説します。
家賃の値上げを請求できる条件
借地借家法第32条「増減請求権」では、借主・貸主どちらでも以下のような事情があれば、家賃の見直しを請求できるとしています。
・土地や建物にかかる税金などの負担が増えたり減ったりしたとき
・土地や建物の価値が上がったり下がったりしたとき
・経済状況の変化(インフレーション・デフレーション)があったとき
・周辺の似たような物件と比べて家賃が不当に高い/安いとき
契約書に何と書いてあっても、これらの事情があれば家賃の変更を求められます。ただし、「〇年間は家賃を上げない」といった特約がある場合は、その条件が優先されるため変更はできないでしょう。
家賃の値上げを告知されたとき
家賃の値上げは双方の合意が望ましいとされています。家賃の値上げを告知された際、まずは値上げをする根拠やデータなどをオーナーに確認しましょう。
その際、落ち着いて話し合いをすることがポイントです。また、周辺の家賃はいくらくらいなのかを調べて交渉してみるのもいいかもしれません。
なお、一方的に値上げを拒否したり、突然支払いをやめたりすることはしないようにしましょう。思わぬトラブルにつながる可能性があります。
もし家賃の値上げに納得できず、話し合いでも解決しない場合、家賃の増額が妥当であるかを裁判で決めることになるかもしれません。
裁判で家賃の増額が妥当と認められるまでの間は、相当と認められる家賃を払えばいいとされていますが、最終的に「もっと払うべきだった」となれば、その差額+年10%の利息を付けて支払うことになります。
家賃の値上げで考えられる背景
家賃の値上げには、いくつかの要因があると考えられています。
まず1つ目は、建築費や修繕費の高騰です。人件費や資材の価格が大きく上がったことで、新しく建てる建物の費用や、古くなった物件を修理するための費用が、2020年ごろから大幅に上昇しているといわれています。
このため、物件のオーナーは増えたコストを家賃に反映せざるを得なくなってきているようです。
2つ目は、一人暮らしの世帯が増えていることです。今後も単身世帯は増え続けると予測されており、持ち家を持つ割合が低くなると見込まれています。これも、賃貸住宅の需要を高める要因の一つでしょう。
3つ目は、マイホームの購入がますます難しくなっていることです。さまざまな要因から収入が伸び悩む一方、不動産価格は上昇しており、家を買いたくても買えない家庭が増えているといわれています。
こうした事情から、もともと持ち家を選ぶことが多かったファミリー層なども、賃貸住宅を選ぶケースが増えているようです。賃貸の需要がさらに高まった結果、家賃の上昇につながっているといえるでしょう。
5万円も値上がりするのは妥当?
国土交通省が公表する「不動産価格指数」から、家賃の値上げが妥当であるかを解説します。
不動産価格指数とは、2010年の平均不動産価格を100とした場合の、不動産価格の動向を月単位で表したものです。
2025年1月のマンション(区分所有)は「210.7」なので、2010年と比べると2倍以上になっていることが分かります。
この数値だけでは、5万円の値上がりが妥当であるかどうかは判断できません。ただし、不動産価格が上昇している傾向を見ると、長年家賃が変わっていない状況であれば「値上げは妥当」とされる場合もあります。
家賃の値上げには条件がある。拒否もできるがまずは話し合いが大事
家賃の値上げはいくつかの条件により可能となっています。値上げを拒否することも可能ですが、話がまとまらない場合は値上げが妥当か否かの裁判に発展する可能性があるでしょう。
値上げを告知されたら、まずは落ち着いて話し合いをすることをおすすめします。支払いが難しい場合は値下げ交渉をすることも手段の一つです。
一方的に拒否をしたり、家賃の支払いをやめたりすることは、無用なトラブルにつながりかねません。値上げに納得がいかなくても、まずは今までと同じ額の家賃を払い続けた方がいいでしょう。
出典
国土交通省 不動産価格指数 不動産価格指数(住宅)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー