分譲マンションの「玄関ドア」を塗り直そうとしたら、管理組合から「共用部分だからダメ」との返答が! 自宅のドアは「専有部分」じゃないの? うっかりリフォームで“無駄な出費”を防ぐために知っておきたいポイントを解説

配信日: 2025.05.21

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分譲マンションの「玄関ドア」を塗り直そうとしたら、管理組合から「共用部分だからダメ」との返答が! 自宅のドアは「専有部分」じゃないの? うっかりリフォームで“無駄な出費”を防ぐために知っておきたいポイントを解説
分譲マンションは、区分所有者(各戸の所有者)が所有権を有する「専有部分」と、それ以外の「共用部分」に分かれています。
 
区分所有者としてリフォーム等の工事ができるのは、原則として「専有部分」に限られます。玄関ドアや廊下に面した外側は「共用部分」であり、区分所有者が勝手に手直しはできません。室内の壁も、となりの家や外部との境になっているところは主要な躯体(建物の骨格部分)であり、穴をあけることは禁止されています。
 
「専有部分」と「共用部分」の区分けは「マンション管理規約」で定められていますが、難しい点もあると思います。リフォーム業者でも間違った対応をする場合があるようです。
 
間違ってリフォームしてしまい、元に戻すことになっては無駄な出費となります。逆に共用部分については、各区分所有者から集めた修繕積立金を活用した修繕などを管理組合がしてくれることもあります。
 
本記事では、マンションの専有部分・共用部分の違いや注意点を解説します。

「専有部分」「共用部分」「専用使用権」とは何か

区分所有者が所有権を有する「専有部分」については、区分所有者でリフォームが可能です。それ以外の部分は区分所有者全員で利用することが想定されますので「共用部分」といいます(「共有部分」とはいわず、「共用部分」といいます)。
 
この「共用部分」の中でも、特定の区分所有者だけが使用できる権利を持つ箇所があります。この権利を「専用使用権」、利用できる箇所を「専用使用部分」といいます。バルコニーや玄関扉外側が専用使用部分の一例です。
 

「専有部分」「専用使用権」「共用部分」の具体的な内容

「専有部分」「専用使用権」「共用部分」について、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では詳細には定義されていません。各マンションの「マンション管理規約」で定められます。
 
国土交通省の「マンション標準管理規約」(以下「規約」)に基づいて、専有部分・専用使用権・共用部分の区分けを説明します。マンションにより若干違うこともありますので、リフォームの際は自身のマンションの管理規約を確認してください。
 

「規約」に定める専有部分の範囲

区分所有権の対象となる専有部分は、「住戸番号を付した住戸」とされています。 そして、天井、床および壁については「躯体部分を除く部分」、玄関扉は「錠および内部塗装部分」がいずれも専有部分とされています。なお、「窓枠および窓ガラスは、専有部分に含まれない」と明記されています。
 

規約に定める「専用使用権」

区分所有者が専用使用権を持つものとしては、「バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、1階に面する庭および屋上テラス」が挙げられています。
 

「規約」に定める「共用部分」

共用部分の範囲については、主に次のものが挙げられています。
 

・内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」
・オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管等専有部分に属さない「建物の附属物」

 

玄関扉の取り扱い(外側のリフォームは不可)

規約第7条第2項第2号で「玄関扉は、錠および内部塗装部分を専有部分とする」とされているとおり、玄関扉の外側は専用部分ではありません。「専用使用権」はあるものの区分所有者が独自にリフォームすることは許されません。
 
自宅の玄関扉なのに、なぜリフォームできないのでしょうか。玄関扉外側はマンションの外観の一部です。不統一になると、外観を損ね、マンション全体の資産価値を損ないます。玄関に設置されたオートロック設備などもマンションで統一されているはずであり、自由なリフォームは許されません。
 
なお、室内のドアは専有部分であり交換なども可能です。
 

窓枠、窓ガラス等の取り扱い(無許可のリフォームは不可)

玄関扉同様に、マンションの外観の一部です。外観変更はできません。
 

天井、床、壁の取り扱い(建物の躯体として共用部分)

天井、床、壁の内装は区分所有者がリフォームできますが、例えば、くぎを打ったり穴をあけたりすることは許されません。エアコンの増設のために室外機用に別の穴をあける、といったことはできません。建物の躯体であり、強度が損なわれる可能性があるからです。
 

ベランダ、バルコニー等の取り扱い

区分所有者に専用使用権は認められていますが、緊急時の避難通路になります。避難を妨げる物置やサンルーフなどを設置することはできません。
 

そのほか設備交換等の際の留意点

これら以外にも、リフォームの際には電気容量を確認する、設備移設時に配管に影響しないか確認する、といった注意が必要です。管理会社や管理組合にあらかじめ確認しましょう。
 

リフォームの際には必ず管理組合や管理会社と相談すること

国土交通省の「マンション標準管理規約」では、「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」として、専有部分の修繕や共用部分の窓ガラスの改良工事の制限などについて、理事会の承認の要否・承認の条件、届出の要否などが詳細にまとめられています。
 
必要に応じてこれを一読し、リフォーム前に、管理組合や管理会社とよく相談して対応することをおすすめします。
 

出典

国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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