就活が終わり、来年から社会人として働くことになりました。引越し費用だけでもギリギリなので、できれば「1万円」程度かかるという健康診断は受けたくありません…!「拒否」することはできるでしょうか?
配信日: 2025.05.20

もし、会社から健康診断を受けるようにいわれた場合、拒否できるのでしょうか。
そこで今回は、会社の健康診断を拒否できるかどうかについて解説します。

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会社の健康診断は受診拒否できない
労働安全衛生法第66条5項によると「労働者は、事業者がおこなう健康診断を受けなければならない」と定められています。そのため、原則として会社の健康診断は受診拒否できません。
また、労働安全衛生法第66条には、事業者に対しても「労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならない」と定められており、受診機会を設けなかった場合は、違法行為として50万円以下の罰金を科せられるケースがあります。
定期健康診断は、常時使用する労働者に対し年に1回、特定業務に従事する労働者は6ヶ月ごとに1回実施しなければいけません。
従業員側は、健康診断を拒否しても法律上の罰則はないようですが、「就業規則に健康診断の受診義務が明記されている」にもかかわらず、何度も受診拒否をした場合は、業務命令違反として懲戒処分の対象となるケースもあるため注意が必要です。
健康診断の費用負担は誰がするのか
会社がおこなう健康診断の費用は、事業者が負担します。その理由は「健康診断の実施は、労働安全衛生法によって事業者の義務とされている」ためです。
健康診断は、生活習慣病の悪化防止や脳・心臓疾患の発症予防などを目的に実施されるものであり、労働者側にも受ける利点があります。
従業員にとっては、費用負担なく自分の健康状態を知るキッカケとなるため、会社の指示にしたがって受診しましょう。
会社の健康診断を受診しなくてもよいケース
従業員は、会社の健康診断は受診する義務がありますが、受けなくてもよいケースが2つ存在します。
法で定められている項目以外の検査
1つ目のケースは、法で定められている項目以外の検査を受ける場合です。年に1度実施される定期健康診断には、労働安全衛生法にて必須の検査項目が定められています。
・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査および喀痰検査
・血圧の測定
・貧血検査
・肝機能検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・尿検査
・心電図検査
上記の必須項目以外の検査であれば、従業員は拒否することが可能とされているようです。また、必須項目であっても、妊娠中の人は胸部エックス線検査といった一部の検査が受けられないケースもあります。
主治医や受診先の医療機関で検査を止められた場合は、その項目を受ける必要はありません。ただし、検査しなかった項目は会社に報告する必要があるため、注意しておきましょう。
必要な検査項目を満たした健康診断を自ら受診する
もう1つのケースは、必要な検査項目を満たした健康診断を自ら受診する場合です。例えば、人間ドックや市町村で実施している健康診断などを個人で受診した場合、会社の健康診断を受ける必要はありません。
ただし「労働安全衛生法で定められている項目をすべて実施している」「診断結果の写しなどを事業者に提出する」など、条件を満たす必要がある点に注意が必要です。
会社の健康診断はかならず受診しよう
会社がおこなう健康診断は、従業員にとって「受ける義務」があるため、原則拒否することはできません。健康診断は、従業員の健康を維持・増進するため、企業の生産性を高めるために実施されるものです。健康診断をおこなう意味を理解し、自分の身体を守るためにも、意欲的に受診しましょう。
出典
e-Gov 法令検索 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)
厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー