4月から始まった多子世帯の「大学授業料無償化」。子ども3人以上の世帯が対象らしいけど、ほかにも条件はある?
配信日: 2025.05.20

本記事では、大学授業料無償化の具体的な利用条件や、実際にどの程度の経済的メリットがあるのかについて詳しくご紹介します。

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大学授業料無償化の利用可能条件
大学授業料無償化は、子どもの人数、学校、学修意欲や成績の条件をすべて満たしていれば利用できます。この制度は、3人以上の子どもがいる世帯を対象としています。ただし、対象となる子どもは保護者の扶養に入っていなければならず、第1子が就職などで扶養から外れた場合、第2子や第3子も制度の利用ができなくなります。
多子世帯向け大学授業料無償化の制度を利用できる対象校は、限定されている点にも注意しましょう。具体的な対象校のリストは文部科学省のホームページで確認することができます。
また、採用基準として、学修意欲や成果条件が設けられています。採用時の条件は表1の通りです。
表1
予約採用 | 在学採用 | |
---|---|---|
高校3年生 | 大学1年生 | 大学2~4年生 |
高校2年次(申請時)までの評定平均値 3.5以上:進路指導において学修意欲を見る 3.5未満:レポートまたは面談により学修意欲を確認する |
次の1~4のいずれかに該当する 1.高校評定平均値が3.5以上 2.入学試験の成績が入学者の上位2分の1以上 3.高卒認定試験の合格者 4.学習計画書の提出を求め、学修意欲や目的、将来の人生設計等が確認できる |
次の1か2に該当する 1.在学する大学等における学業成績について、GPA等が上位2分の1以上 2.次のいずれにも該当する a.標準単位数以上の単位数を取得している b.学修計画書から、学修意欲や目的、将来の人生設計等が確認できる |
文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」を基に筆者作成
また、この制度は学業成績に関する条件も設けています。例えば、取得単位数が標準単位の6割以下の場合は、支援の打ち切り対象となる可能性があります。さらに、GPAが基準値を下回った場合には、警告や支援の停止対象となります。
GPAとは、学業成績を数値化した平均値のことで、例えば「AA=4点、A=3点、B=2点、C=1点、D=0点」のように評価されます。ただし、病気や災害などのやむを得ない事情で単位の取得が困難になった場合は特別な配慮がされ、支援が継続されることがあります。このような特例によって、経済的な心配をすることなく学び続けられるでしょう。
大学授業料無償化が適用されると、どれくらいお得になる?
多子世帯向けの大学授業料無償化制度には上限額が設定されています。文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」によると、学校種別ごとの上限金額は表2の通りです。
表2
国公立 | 私立 | ||
---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 |
28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」を基に筆者作成
文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」によると、令和5年度の国公立大学と私立大学の入学金、授業料の目安は以下の通りです。
●国立大学:入学金28万2000円、授業料53万5800円
●公立大学:入学金37万4371円、授業料53万6191円
●私立大学:入学金24万806円、授業料95万9205円
このことから、上限金額まで制度を利用した場合、国公立大学では授業料が実質無料となり、入学金についても差額の2000円の自己負担で済む可能性があります。
一方私立大学の場合は、入学金の支払いが不要になり、授業料も一部負担で済む可能性があります。例えば、授業料が年間約96万円かかる大学であれば、負担額は26万円程度におさえられます。4年間で考えると104万円程度で通えるため、非常に大きな経済的支援となるでしょう。
令和7年から多子世帯向けの大学授業料無償化の適用範囲は広がり、扶養している子どもが3人以上いる世帯であれば、上限金額まで支給してもらえるようになりました。ただし、第1子が就職して扶養から外れると対象外になります。国公立であればほぼ全額、私立大学でも4年間で約280万円の負担軽減となるため、多子世帯の家計には大きな支援といえるでしょう。
大学で授業料以外にかかる費用はあるのか
「大学授業料無償化を利用すると、大学で必要な費用がほとんどかからなくなる」というわけではありません。大学では、入学金や授業料以外に、教材費がかかったり、子どもが一人暮らしをするのであれば仕送りをしたりするケースもあります。
日本政策金融金庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」によると、大学受験などの準備期間も含め、大学では表3のような費用が発生します。
表3
短大 | 大学 | |
---|---|---|
受験料 | 24万8000円 | 30万3000円 |
一人暮らしの初期費用 | 約38万7000円 | |
一人暮らしの仕送り代 | 約95万8000円(年間) |
日本政策金融金庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」を基に筆者作成
また、教材費については学部や学校によって異なるものの、1年間で数万円かかると考えてよいでしょう。教材費は一度のみではなく卒業するまでに複数回発生する費用のため、大学4年間で考えるとさらに必要な費用は増加します。
入学金や授業料のように、大学授業料無償化制度で補える部分以外にも家庭で負担しなければならない費用は多数あるため、計画的に金銭を準備しておくことが大切でしょう。
大学授業料無償化を利用するには、学修意欲なども必要
大学授業料無償化は、扶養している子どもが3人以上いる世帯に適用されるもので、第1子が就職などで扶養を外れたら適用外となります。高等学校を卒業してさらにしっかり学びたい学生や、高等専門学校で専門的な知識を深めたいという学生が、経済的な心配をすることなく学べるきっかけになるでしょう。
ただし、子どもの数以外にも、対象の学校が決まっていたり、学修意欲、成績が必要になったりするため、申請すれば必ず利用できるとは限りません。
大学や短期大学などに進む場合は、大学授業料無償化で補える授業料や入学金以外にも、受験料や教材費、仕送りなども発生します。大学授業料無償化の制度に頼るだけでなく、計画的に準備を進めることも重要です。
出典
文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ
文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移(令和5年度)
日本政策金融金庫 令和3年度 教育費負担の実態調査結果
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー