子ども3人を「大学までエスカレーターの私立」に入れるというママ友。「学費が300万円以上免除されるから」とのことですが、どういうこと? 具体的な“免除額”をシミュレーション
配信日: 2025.05.16

公立に比べて、私立は学費などが高いイメージはありませんか? 中には、生活費を切り詰めて子どもの教育費を確保する家庭もあるかもしれません。
近年では、高校無償化、大学無償化など、政府がさまざまな少子化対策を打ち出しており、数年前とは状況が変わってきています。とはいえ、「学費が300万円以上免除されるから」というのは事実なのでしょうか。
本記事では、2025年度からスタートしたこども未来戦略について詳しく解説し、具体的な免除額をシミュレーションしてみます。また、子ども3人を高校から私立に入れた場合の総コストについても計算し、現実的な視点からその負担を見ていきます。
現在の教育費の支援がどう変化しているのか、ぜひ参考にしてください。

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こども未来戦略とは?
2023年12月に策定された「こども未来戦略」は、安心して子育てができ、子どもたちが笑顔で暮らせる社会の実現を目指しています。2025年4月からは、これをさらに進める「加速化プラン」がスタートし、支援内容の充実が図られました。
その1つに、高等教育(大学など)の授業料や入学金を、減額または免除する制度が導入されています。この制度では、3人以上の子どもを扶養する多子世帯を対象に、国が定めた一定額までの学費軽減が行われます。
さらに、この支援には所得制限がなく、世帯年収に関係なく利用できる点が特徴です。これまで支援の対象外だった中間層以上の家庭でも、学費の負担軽減を期待できるようになっています。
具体的な免除額のシミュレーション
「学費300万円免除」が正しいかどうか、現在決まっている支援内容をもとに、具体的な免除額をシミュレーションしてみましょう。ここでは、子ども3人以上を扶養していて、最大限の支援が受けられる状況を想定しています。
【私立高校】※2026年4月以降適用予定
私立高校の授業料については、就学支援金制度を通じて、最大45万7000円が支援されます。上限額が支給された場合、3年間の合計免除額は137万1000円となります。
【私立4年制大学】
私立大学の授業料減免の上限額は、入学金が26万円、授業料が年間70万円です。上限額が支給された場合、4年間の合計免除額は306万円となります。
このことから、私立高校から大学までの7年間で、約443万円免除されることが分かります。
子ども3人を高校から私立に入れた場合の総コスト
続いて、子ども3人を高校から私立に入れるといくらかかるのか、計算してみましょう。今回は、慶應義塾高等学校と慶應義塾大学を例に解説します。
まず、慶應義塾高等学校と慶應義塾大学(経済学部)の学費等は図表1の通りです。
図表1
慶應義塾高等学校 学費/奨学金、慶應義塾大学 2025年度大学学部学費 を基に筆者作成
高校の学費については、3人とも同じように支援が受けられ、3年間の免除額の合計は137万1000円です。免除額を除いた1人あたりの負担は、206万2000円で、3人合わせると618万6000円となります。
一方、大学の学費支援は扶養人数によって異なるため、やや複雑です。今回は2学年差で大学に入学し、4年で卒業した後は就職する場合を想定してシミュレーションします。
1人目は、入学金20万円と学費70万円が支援の対象となり、4年間の支援合計は300万円です。4年間の学費の総額は527万3100円なので、負担額は227万3100円となります。
2人目は2年間支援を受けることができるため、合計免除額は160万円となり、負担額は367万31000円です。3人目は支援の対象外となり、全額自己負担になります。
子ども3人分の大学4年間の負担額を合計すると、約1122万円となり、高校の学費を合わせると最終的には約1740万円の負担が発生します。
まとめ
「こども未来戦略」がスタートし、少子化対策の拡充が進んだことで、これまでよりも教育費の負担軽減が期待されます。
例えば、子ども3人を大学までエスカレーターでいける私立に高校から入れた場合、支援額の合計は約870万円にのぼり、「300万円以上の免除」というのは正しいといえるでしょう。
しかし、負担額も1740万円以上となるため、子ども3人を高校から私立に通わせるのが、高額であることには変わりありません。今後制度が変わることも考えられるため、最新情報に注意し、教育方針を検討することが大切です。
出典
こども家庭庁 こども未来戦略
慶應義塾高等学校 学費/奨学金
慶應義塾大学 2025年度大学学部学費
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー