現金を多めに引き出そうとしたら「1日50万円」まででした…。ATMでお金を引き出すのに「上限」があるのはなぜでしょうか?
配信日: 2025.05.13

ほとんどの銀行のATMには、1日あたりの引き出し限度額が設定されており、一度に多額の現金を引き出すことができません。ATMでお金を引き出すのに「上限」があるのはなぜでしょうか?
本記事では、ATMの引き出し上限がある理由とその制限を解除する方法について説明します。

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
ATMの引き出し上限がある理由
ATMで現金を引き出す際に金額の上限が設けられているのは、キャッシュカードの偽造や盗難・紛失の被害、高齢化社会における認知症によるトラブルを防ぐためです。
特に近年は、高齢者の口座について引き出し限度額を引き下げる金融機関も増えています。本章では、ATMを利用した主な犯罪について解説します。
偽造カードによる不正引き出しのリスク
偽造カードを使った不正引き出しは、ATMを利用した犯罪のなかでも特に警戒されている手口の一つです。スキマーという装置をATMに仕掛け、カードの磁気情報を盗み取ったり、偽のATMや店頭端末を使って情報を抜き取ったりする方法があります。
こうしてつくられた偽造カードを使い、不正に現金を引き出されるケースがあとを絶ちません。
盗難・紛失時に狙われるキャッシュカード
キャッシュカードを紛失したり盗まれたりすると、不正に現金を引き出されるリスクが高まります。特に、財布やかばんと一緒にカードを盗まれた場合、免許証や保険証などの個人情報をもとに暗証番号を推測されかねません。
認知症による金銭トラブル
厚生労働省によれば、2025年には65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症を患うと見込まれており、2012年の数字から大幅な増加が予想されています。
さらに三井住友信託銀行株式会社(東京都千代田区)によると、2020年時点で認知症高齢者が保有する金融資産は約250兆円と推計されており、今後も増加が見込まれています。
認知症になると、支出の管理が難しくなり、預金を何に使ったか忘れてしまったり、詐欺に巻き込まれたりすることも少なくありません。
ATMの引き出し上限を解除する方法
ATMの引き出し上限は銀行によって異なりますが、一般的には1日50~100万円程度に設定されていることが多いです。ただし、一時的に多額の現金が必要な場合には、上限の変更が可能です。本章では、ATMの引き出し上限を解除する主な方法を紹介します。
銀行の窓口に行くかカスタマーセンターに連絡する
引き出し額を増やしたい場合は、銀行の窓口に行くかカスタマーセンターに連絡し、手続きするのが一般的です。
例えば、ATMで1日あたりの引き出し限度額の初期設定が50万円の場合、これを超える金額を引き出したいときに個人の利用者はカスタマーセンター、個人事業主や法人の場合は法人営業推進部へ問い合わせることで、原則100万円まで一時的に上限を引き上げることが可能な場合があります。
急な出費や高額な現金が必要な場合は、事前に銀行へ相談し、適切な手続きを行いましょう。
また、手続きには本人確認書類が必要になる場合もあるため、余裕をもって準備しておくとスムーズに進みます。銀行によって対応が異なるため、自分が利用している金融機関のルールを確認しておくと安心です。
キャッシュカードの種類を変更する
キャッシュカードは種類によって上限額が異なるため、より高いグレードに変更することで、より多くの現金を引き出せるケースがあります。
例えば、通常のICキャッシュカードの場合、多くの銀行ではATMの種類を問わず11日の上限は50万円程度に設定されています。一方、生体認証情報を登録済みのICキャッシュカードを生体認証対応ATMで使用することで、100万円(銀行によっては最大200万円)まで引き出せる場合があります。
カードのグレードだけでなく、使用するATMの種類によっても引き出し上限が異なることを把握しておきましょう。状況に応じてカードを見直すことで、より柔軟な資金管理が可能になります。
ATMの引き出し上限を理解して計画的に利用しよう
ATMの引き出し上限は、利用者の安全を守るための重要な対策です。万が一、不正にキャッシュカードが利用された場合でも、一定額以上の現金が引き出せないことで、被害を最小限に抑えることができます。
また、多額の現金が必要な場合は銀行の窓口に行ったり、カスタマーセンターへ連絡したりする必要があります。キャッシュカードのグレード変更によって、一時的に制限を調整可能です。
ATMの引き出し上限を事前に確認し、急に多額の現金が必要になった際にも焦らないようにしましょう。
出典
厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)
三井住友信託銀行株式会社 認知症高齢者の保有する資産推計について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー