4月から「育休の手当」が拡充されると聞きました。「月収40万円」の夫と「月収30万円」の私が育休を取得すると、どれくらい手当が増えますか? 金額をシミュレーション
配信日: 2025.05.12

本記事では、出生後休業支援給付金を受給する要件、月収40万円の夫と月収30万円の妻がそれぞれ追加で受け取れる給付金はいくらになるか解説します。
目次
育児休業と育児休業給付金
育児休業は、子どもが1歳になるまで夫婦ともに分割して2回まで取得可能です。
なお、男性は通常の育児休業に加えて、産後パパ育休(出生時育児休業)を最大28日間、産後8週間までに2回に分割して取得できます。つまり、産後パパ休業を2回に分割し、通常の育児休業を2回に分割すれば、最大4回に分割して育児休業を取得できるのです。
休業期間中、最初の180日間は「休業開始時賃金日額」の67%、それ以降は50%を育児休業給付金として受け取れます。休業開始時賃金日額とは、開始前直近6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額です。
なお、産後パパ休業中は出生時育児休業給付金として受け取ります。67%の給付を受け取れる期間は、出生時育児休業給付金と育児休業給付金を通算して180日です。
4月から始まった「出生後休業支援給付金」とは?
2025年4月からは、従来の育児休業給付金に加えて、休業開始時賃金日額の13%を出生後休業支援給付金として受け取れます。出生後休業支援給付金を受け取る条件は、次の対象期間内に両親ともに14日以上の育児休業(産後パパ休業を含む)を取得することです。
●男性(または子が養子の場合):「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間
●女性:「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間
ただし、配偶者がいない、配偶者が無職、自営業やフリーランスのため雇用される労働者でない場合は、配偶者が育児休業を取得していなくても、出生後休業支援給付金を受け取れます。
出生後休業支援給付金はいくらになる?
それでは、月収40万円の夫と月収30万円の妻の場合、夫婦で出生後休業支援給付金がいくら受け取れるのかを具体的に計算してみましょう。
まず、休業開始時賃金日額を算出します。これは、前記したとおり休業開始前直近6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180日で割った金額(2025年4月1日時点で1万5690円の上限あり)です。
例えば、月収40万円の夫の場合、直近6ヶ月間の給与総額は240万円になるため、休業開始時賃金日額は約1万3333円となります。この場合、出生後休業支援給付金はその13%が最大28日分支給されるため、約4万8500円が受け取れる計算です。
一方、月収30万円の妻の場合、直近6ヶ月間の給与総額は180万円で、休業開始時賃金日額は1万円で、同様に28日間で約3万6400円が受け取れることになります。
したがって、夫婦合計で手当の支給額は約8万4900円増えるのです。
手取り10割相当とは?
出生後休業支援給付金がもらえる期間は、育児休業給付金と合わせて、休業開始時賃金日額の80%を手当として受け取れることとなり、これは「手取り10割給付」といわれます。しかし、「80%しかもらえていないのでは?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
こういった表現がされる理由は、育児休業給付金には社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)や税金(所得税・住民税)がかからないからです。
通常の給与では、社会保険料や税金が差し引かれるため、手取り額は額面の8割程度になります。つまり、給付金として80%であれば実質的に通常時の手取り額と同じ水準になるのです。
4月からはさらに育児休業を取得しやすくなる環境へ
2025年の4月からの出生後休業支援給付金の導入により、手取り額が実質的に通常時と同じ水準になる「手取り10割」が誕生しています。これにより、育児休業中の経済的負担が軽減され、これまで以上に夫婦で育休を取りやすくなることが期待できそうです。
また、夫婦で育児休業を取得しやすくなることで、家庭内での育児負担の分散や、キャリアと家庭の両立がしやすくなる効果も見込まれます。新たな制度を活用し、家族で無理のない育児計画を立てることで、安心して育児に専念できる環境が整ってほしいものです。
出典
厚生労働省 そのときのために、知っておこう。育児休業制度
厚生労働省 育児休業給付の内容と支給申請手続
厚生労働省 2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士