高校無償化は「低所得者向け」ではない? 世帯年収「1200万円」でも高校無償化が適用されるって本当?

配信日: 2025.05.07

この記事は約 3 分で読めます。
現在高校の授業料は、国公立・私立ともに国の支援金制度により「実質無効化」が実現されています。ただし、世帯の構成や世帯年収により支給額の上限が定められており、世帯年収が一定額を超えると対象外となる場合があります。
 
さらに、東京都をはじめ都道府県ごとに上乗せ支援なども開始され、所得制限なしに全ての世帯で恩恵を受けられる場合もあります。本記事では、今後の展望を含め、高校無償化の動向について確認していきます。
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

現行の国による高等学校等就学支援金制度

前述のとおり、高校の授業料は国公立・私立ともに実質無償化されています。ただし、国公私立問わず無償化の対象となるのは、一定の年収以下の世帯に限られているため、注意が必要です。なお、令和2年4月から私立高校等の場合の支援が手厚くなっています。
 
また、支給額の判定基準となる「世帯年収」とは、生計を同一にする世帯の全員が1年間に得た収入を合算したものを指します。例えば、共働きの夫婦と高校生の子ども1人が同じ家で暮らし、生計を立てている家庭の場合、「夫の年収+妻の年収」で計算します。もし子どもにアルバイト収入があれば、これも合算して計算することになります。
 
【図表1】

図表1

出典:文部科学省 「高等学校等就学支援金制度リーフレット」
 
図表1のように国の支援金は、世帯年収910万円未満の世帯に対して年間11万8800円が支給され、さらに、私立高校に通う590万円未満の世帯には加算があり、最大39万6000円が支給されています。
 

都道府県ごとの上乗せ支援

本記事のタイトルにある世帯年収1200万円の世帯の場合は、国の支援金制度の対象にはなりません。
 
さらにこの国の支援金制度と併せて、都道府県ごとに異なる支給額や所得制限が設けられている場合があります。
 
最も多額の財源を保有する東京都は先行して、2024年度から高校授業料無償化の所得制限を撤廃する方針を決定し、都内在住の全ての高校生は、国公立私立問わず高校の授業料が実質的に無料になっています。タイトルのような世帯年収1200万円の世帯も、東京都に在住していれば、実質無償化の恩恵を受けることができます。
 
なお、2025年3月現在で所得制限をなくしているのは、東京都と大阪府の2つのみ(一部の県で生徒2人以上の世帯を所得制限なしで免除)となっており、他は所得制限が設けられています。
 
これによって、例えば、東京都に所在する高校に通う生徒が東京都在住の場合と他県在住の場合で授業料の負担に差異が生じるなどの問題も生じています。住所地の制度の詳細については、各自治体のホームページなどで確認してください。
 

所得制限の撤廃と支援金の拡充へ

2025年度予算に盛り込まれる「高校の授業料無償化」では、2025年4月から公立・私立を問わず、一律に年間11万8800円の就学支援金の所得制限を撤廃し、公立高校を実質的に無償化することが決まっています。
 
併せて、低中所得世帯を対象に教材の費用などを支援する「奨学給付金」や、私立の無償化の影響を受ける公立の工業や農業など専門高校の施設整備の支援を拡充することとしています。
 
また、2026年4月からは私立高校に対する就学支援金の上限額について、これまであった所得制限が撤廃され、私立の全国平均の授業料である45万7000円に引き上げることとされました。これにより、図表1にある910万円の「所得制限」が撤廃されるとともに、上段の私立高校の就学支援金が45万7000円に引き上げられることが明記されます。
 

まとめ

少子化の影響もあり、公立高校の無償化が所得制限なしに進められ、私立校の支援金拡充により、たとえ大学等への進学実績が高い県内有数の公立高校であっても定員割れとなるなどの問題も生じています。
 
高校無償化は、経済的な事情で希望通りに進学できない子どもに対して、学ぶ機会を均等に与えることができる可能性を高める一方で、逆に格差を助長する、公立高校の定員割れを招くなどの懸念もあります。この制度は今後も改正されていくことが想定されるため、住所地のある都道府県の制度の内容などにも注視していくことが必要となるでしょう。
 

出典

文部科学省 高校生等への修学支援
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

  • line
  • hatebu

【PR】子どもの教育費はいくらかかるの?かんたん30秒でシミュレーション

【PR】
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集