「米屋」の倒産が増えている!? お米の価格は下がらないのになぜ?

配信日: 2025.05.03

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「米屋」の倒産が増えている!? お米の価格は下がらないのになぜ?
2024年度、全国で88件の「米屋」が廃業・倒産しました。これは過去5年間で最多の件数です。倒産の理由は「米が売れないから」ではないようです。米の価格は上がっているのに、なぜ米屋は追い詰められているのか? その裏には、日本の食と農業を揺るがす構造的な問題がありました。
FINANCIAL FIELD編集部

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米屋の廃業・倒産が過去最多に

株式会社帝国データバンクの「『米穀店(米屋)』の休廃業・解散(倒産)動向(2024年度)」によると、2024年度、全国の米穀店(いわゆる「米屋」)の休廃業・解散件数は88件に達していることが分かりました。前年度(80件)から、2年連続で増加しています。これは、コロナ禍以降の過去5年間で最多の数字です。
 
その背景には、米の供給不足や価格高騰、そして価格転嫁の難しさが影響しているようです。特に小規模の米屋では、経営者の高齢化も進んでおり、事業継続を断念するケースが増加しています。
 
同調査によると、2024年度の米屋における損益状況では、25.2%の米屋が前年度から「減益」となり、22.4%は「赤字」に転落し、赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は47.6%にのぼったということです。これらの要因が重なり、米屋の廃業・倒産が増加していると考えられます 。
 

生産コストの上昇に苦しむ農家

米価が高騰しているにもかかわらず、稲作農家の経営は厳しさを増しています。2024年、稲作農家の倒産・廃業件数は過去最多を更新する見通しです。
 
同社の「『米作農業』の倒産・休廃業解散動向(2024年)」によると、2024年に米農家の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は6件、休廃業・解散(廃業)が36件と、合計42件発生しており、2023年の通年35件を上回るペースで推移していることが分かります。
 
その背景には、肥料や農薬などの生産資材の価格高騰が続く一方で、米価は低迷しており、コスト増を価格に転嫁できない状況が続いていることが挙げられます。
 
このような状況では、農家に利益が残らず、翌年の生産に必要な費用がねん出できず、米作りを断念するケースも多くなっています。
 

市場任せの政策が招いた供給不足

2023年産米の供給不足と価格高騰により、米屋は仕入れ困難な状況に直面しています。
 
農民運動全国連合会(以下、農民連)の報告によると、2023年産米の作況は全国平均で平年並みの101でしたが、作付面積が前年比9000ヘクタール減の124万2000ヘクタールとなり、収穫量は前年比8万トン減の661万トンとなったようです。さらに、昨年の夏の酷暑により、特定米穀の発生量も前年比16万トン減となっています。
 
一方、米の需要は増加しており、2024年2月末の業務用向け販売は前年同月比で6.1%増、家庭用向け販売も前年同月比8.0%増となりました。
 
この結果、米屋では在庫が枯渇し、仕入価格が高騰しても販売価格に転嫁できず、経営が圧迫されています。農民連は、市場任せの政策が需給の混乱を招いており、価格・所得補償や備蓄制度の確立が求められていると指摘しています。
 

まとめ

米屋の倒産が相次いでいる現状は、単なる経営上の問題にとどまらず、農業政策や流通構造の課題を浮き彫りにしています。今後、持続可能な米の生産と流通を実現するには、価格や所得を補償する制度の導入に加え、備蓄制度の強化が求められます。さらに、中小規模の米屋への支援や、農家の経営を安定させるための対策も重要です。
 
こうした施策により、消費者には安定した価格で米を届けられ、農家や米屋の経営基盤の強化にもつながります。持続可能な米の流通体制を築くには、関係者全体の協力が不可欠であるといえるでしょう。
 

出典

株式会社帝国データバンク
 「米穀店(米屋)」の休廃業・解散(倒産)動向(2024年度)
 「米作農業」の倒産・休廃業解散動向(2024年)
農民運動全国連合会 新聞「農民」売る米がない! 米屋さん悲鳴 市場まかせの米政策破綻 生産と供給安定のため価格・所得補償・備蓄制度の確立を(2024年05月13日 第1600号)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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