「高額療養費制度」の自己負担限度額引き上げの影響は? 年収510万円で100万円の医療費がかかった場合「約3万円以上」の負担増加に!?
配信日: 2025.05.01

そこで本記事では、高額療養費制度の基本と、見直される内容について解説します。今後の負担についてもご紹介しますので、参考にしてください。

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高額療養費制度の基本
高額療養費制度とは、医療費の負担を軽減する制度で、1ヶ月の間に支払った医療費が一定の上限を超えた場合、その超えた分があとから払い戻される仕組みです。年齢や所得によって医療費の自己負担限度額が決まり、条件によってはさらに負担を軽くできる特例措置も設けられています。
なお、世代間の公平を保つために2017年に制度の見直しが行われています。
高額療養費制度見直しの背景と内容
厚生労働省が2025年1月に公表した資料を基に、制度見直しの背景と具体的な内容を解説します。
制度が見直される背景
この制度が見直される背景は、高齢化が進んだことや値段の高い薬が増えたことで、制度を利用する人が増え、その支給総額も年々高くなっていることが挙げられます。その結果、現役で働く世代を中心に、保険料の負担が重くなってきました。
こうした状況をふまえ、安心して医療を受けられる制度(セーフティネット)を守りながらも、すべての世代の保険料負担をなるべく軽くするために制度の見直しが行われます。
見直されるポイント
見直されるおもなポイントは、以下の2つです。
・自己負担上限額の見直し
・外来特例(70歳以上のみ)の見直し
各所得区分によって異なりますが、自己負担上限額が2~15%程度引き上げられるようです。また、所得に応じてより細かい区分を設け、住民税非課税世帯以外の所得区分をさらに細分化することで、自己負担上限額が引き上げられます。
また、制度は年齢ではなく「負担能力」に応じた仕組みへの転換も検討されています。70歳以上に適用されていた「外来特例」を見直し、低所得の高齢者への影響をおさえながら、すべての世代で支え合う仕組みの構築を目指しています。
具体的な変更内容
自己負担の限度額は、2025年8月~2027年8月の間に3段階で増額される予定です。第一段階である2025年8月からの変更(70歳以上の方)について、表1にまとめました。
表1
年収 | 現行の自己負担上限額 | 引き上げ幅 | |
---|---|---|---|
引 き 上 げ 幅 ・ 自 己 負 担 上 限 額 |
約1160万円~ | 25万2600円+(医療費-84万2000)×1% | +15% |
約770~1160万円 | 16万7400円+(医療費-55万8000)×1% | +12.5% | |
約370~770万円 | 8万100円+(医療費-26万7000)×1% | +10% | |
~約370万円 | 5万7600円 | +5% | |
住民税非課税 | 2万4600円 | +2.7% | |
住民税非課税 (所得が一定以下) |
1万5000円 | +2.7% |
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」を基に筆者作成
その後、さらに所得区分(住民税非課税を除く)を細かく分けて、それぞれの所得に対して限度額が増額される予定です。
例えば、年収が約510万円(70歳以上)の方が100万円の医療費がかかった場合、以下のようになります。
・2025年8月~:自己負担限度額8万100円+(医療費-26万7000)×1%で約8万7430円
・2026年8月~:自己負担限度額10万800円+(医療費-33万6000)×1%で約10万7440円
・2027年8月~:自己負担限度額11万3400円+(医療費-37万8000)×1%で約11万9620円
2025年8月から比べると、年収510万円の方に100万円の医療費がかかった場合、2027年8月には約3万2190円も増額する見込みです。
なお、厚生労働大臣は「2025年8月に予定されている見直し全体については一度立ち止まり、改めて方針を検討し、決定する」と述べ、自己負担限度額の引き上げを見送る意向を示しています。今後どのような方針で進めるのか、見守る必要があるでしょう。
自己負担額は3年に亘り引き上げられる予定。年収510万(70歳以上)で100万円の医療費がかかった場合約3万円以上増額する可能性も
2025年8月から3年に亘り、自己負担限度額が引き上げられる予定となっています。年収510万円で100万円の医療費がかかった場合は、2027年8月以降約3万円以上も負担が増える可能性もあります。
ただし、高額療養費制度の引き上げについては見送るとした意向もあるため、今後の動向に注意が必要でしょう。
出典
厚生労働省 高額療養費制度の見直しについて(1~5ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー