「高校無償化」でも足りない?「私立高校」に進学予定の子どもがいますが、親の負担はいくら必要でしょうか?
配信日: 2025.04.30

本記事では、支援金制度の対象範囲と私立高校進学時に親が負担する費用の目安を解説します。

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高校無償化とは?
「高等学校等就学支援金制度」とは、高校の授業料を支援する制度です。2020年4月の制度改正で、私立高校等の支援金の上限額が引き上がったことで、国公私立高校の授業料が実質無償化されました。ただし、全ての費用が無料になるわけではありません。
この制度が対象となるのは、あくまで「授業料」のみです。また、世帯所得に応じて金額も変わります。
さらに、入学金や施設利用料、教材費、修学旅行費などは支援の対象外です。そのため、私立高校に進学する場合は、授業料以外の費用についても十分に考慮しなければなりません。
私立高校への支給額はどのくらい?
国の就学支援金は、私立高校の全日制に通う生徒に対し、年額39万6000円(月額3万3000円)を上限に支給されています。これは、世帯年収が約590万円未満の家庭が対象です。
一方、世帯年収が年間590万~910万円の場合、支給額は公立高校と同じ年額11万8800円までとなり、私立の加算分は受け取れません。また、世帯年収が910万円を超える場合は、就学支援金の対象外となり、支給額はゼロです。
しかし、2025年4月から世帯年収910万円までの制限が撤廃され、全ての世帯が対象となり、年間11万8800円の就学支援金が支給されることになりました。さらに、2026年4月からは私立高校対象の加算支給についても、所得制限がなくなり、全国平均の授業料である「45万7000円」に引き上げられる方針です。
なお、この就学支援金ですが、保護者に振り込まれるのではなく、学校に支給されます。
私立高校進学、親の負担額は?
私立高校の学費は、公立高校と比べて高くなる傾向があります。総務省統計局の「令和5年度子供の学習費調査」によると、私立高校に通う生徒1人あたりの年間学習費総額は、約103万円となっています。
仮に国の上限額である39万6000円が支給されたとしても、残りの約63万円は家庭の負担です。しかも、学校によっては授業料が平均より高い場合もあり、その分、支援金だけでは賄いきれないケースもあります。
東京都の場合、都独自の助成も加えると少なくとも年額48万4000円まではカバーされますが、東京都「令和7年度 東京都内私立高等学校(全日制)の学費の状況について」によると、授業料の平均額が令和7年度には50万648円に達する見込みです。
さらに入学金25万4311円、施設費3万5715円、その他費用19万7397円と平均48万7423円が入学初年度に別途必要です。進学を検討する際は、こうした初期費用への備えも欠かせません。
学費以外にもかかる費用
私立高校では、独自の教育方針に基づいた授業やカリキュラムを提供している場合が多く、その分、教材や施設使用料などの負担も増える傾向にあります。「令和5年度子供の学習費調査」では、公立高校と私立高校での学習費には大きな差があり、表1の通りです。
表1
区分 | 詳細 | 公立高校 | 私立高校 |
---|---|---|---|
学習費総額 | 59万7752円 | 103万283円 | |
学校教育費 | 35万1452円 | 76万6490円 | |
入学金 | 7398円 | 4万7993円 | |
入学時に納付した施設整備費等 | 5409円 | 2万3970円 | |
入学検定料 | 5255円 | 7093円 | |
授業料 | 4万5194円 | 23万3102円 | |
施設整備費等 | 0円 | 5万4339円 | |
修学旅行費 | 2万9680円 | 4万8433円 | |
校外学習費 | 6772円 | 1万860円 | |
生徒会費 | 1万1086円 | 1万2441円 | |
その他の学校納付金 | 1万3219円 | 2万2831円 | |
PTA会費 | 6581円 | 7995円 | |
後援会費 | 4367円 | 9116円 | |
寄付金 | 382円 | 5534円 | |
教科書費・教科書以外の図書費 | 3万7507円 | 4万2434円 | |
学用品・実験実習材料費 | 2万4785円 | 3万2131円 | |
教科外活動費 | 4万9371円 | 5万6800円 | |
通学費 | 5万5020円 | 8万6646円 | |
制服 | 2万8328円 | 4万2497円 | |
通学用品費 | 1万4390円 | 1万3527円 | |
その他 | 6708円 | 8748円 | |
学校外活動費 | 24万6300円 | 26万3793円 | |
補助学習費 | 20万1764円 | 17万1888円 | |
その他の学校外活動費 | 4万4536円 | 9万1905円 |
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査(1 学校種別の学習費)」を基に筆者作成
例えば、修学旅行費の平均は公立で2万9680円に対し、私立では4万8433円です。通学費は、公立の5万5020円に対し、私立は8万6646円となり、制服代も、公立は2万8328円なのに対して私立は4万2497円と、いずれも私立の方が高額になっています。
また、学校外活動費も私立では高くなりがちです。補助学習費(塾代など)は私立の方が少ない一方で、「その他の学校外活動費」は私立が公立の2倍以上に上ります。部活動や課外活動の内容によっては、さらに費用がかかることもあるため注意してください。
このように、授業料以外の負担も含めて、私立高校の進学にはある程度の資金が必要です。
計画的な資金準備で私立高校に進学しよう
私立高校に進学するには、公立高校よりも多くの費用がかかりますが、各種支援制度をうまく活用することで家庭の負担を軽減することは可能です。まずは国の就学支援金制度について理解し、次に自治体独自の補助制度があるか確認しましょう。
同時に、入学前から資金計画を立てておくことで、安心して進学を迎えられます。「高校無償化」といっても全額無償にはならないため、制度を活用しながら計画的な資金準備を進めてください。
出典
文部科学省 高等学校等就学支援金制度
文部科学省 支給期間・支給限度額一覧
東京都 都庁総合ホームページ 所得制限なく私立高校等の授業料支援が受けられます 6月20日からオンラインで申請開始
文部科学省 令和5年度 子供の学習調査 1学校種別の学習費
東京都 令和7年度 東京都内私立高等学校(全日制)の学費の状況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー