ショッピングモールの「駄菓子屋」では「20円」とか「50円」のお菓子がたくさん販売されていますが、これで「テナント料」を稼げるものなのでしょうか?
配信日: 2025.04.26

本記事では、駄菓子屋の収益構造や、ショッピングモールに出店する際にかかるテナント料、そして利益を出すための工夫について、わかりやすく解説します。

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駄菓子屋ってどうやって利益を出してるの?
駄菓子屋といえば、昔ながらの懐かしいお菓子がずらりと並び、子どもたちに人気のスポットです。しかし、1個20円や50円といった低価格で、本当に商売が成り立つのかと疑問に感じる方も多いでしょう。
駄菓子の利益率は情報源により差があり、10~20%とする説や30~50%とする説が存在し、地域や販売戦略により変動します。例えば、30円の駄菓子を販売して15円の利益が出れば良いほうです。これでは大量に売らなければ十分な利益は出ず、単純な物販モデルとしてはかなり厳しいのが現実です。
さらに駄菓子には賞味期限があるため、在庫の管理をミスすると廃棄ロスが発生し、利益を圧迫します。また、レジ袋対応や防犯対策など、駄菓子屋とはいえ必要な設備投資も少なくありません。
ショッピングモールのテナント料ってどれくらい?
ショッピングモールのテナント料は主に「固定賃料」「歩合賃料」「併用型」「最低保証売上方式」の4形態があります。特に「最低保証売上方式」が主流で、例えば「最低保証売上300万円(歩合率10%)」の場合、売上200万円でも30万円の賃料が発生し、売上500万円なら50万円が課されます。
一般社団法人日本ショッピングセンター協会「SC白書2024」によると、物販業種の平均歩合率は10.32%(2011-2022年実績)で、駄菓子屋のような粗利益率20%前後の業態では、テナント料が売上の10%を超えると経営が圧迫されます。
実際の経営では自宅改装やオンライン併用でコスト削減する事例が多く、テナント出店には収支シミュレーションが必須です。
安い商品だけじゃムリ?
そんな中でも、ショッピングモールで駄菓子屋を成功させているお店も存在します。そのポイントは、「駄菓子だけに頼らない」ことです。
例えば、店内に「懐かしのレトログッズ」や「玩具」「キャラクター雑貨」などの利益率が高い商品を並べることで、平均購入単価を引き上げています。
また、「くじ引き」や「ミニゲームコーナー」など、少額でもリピートされる娯楽を導入し、子どもたちの滞在時間を伸ばすことで売上を底上げしているのです。ほかにも「推し活グッズ」や「コレクションアイテム」を追加し、SNS拡散性を高める戦略が最新トレンドだといえます。
さらに、週末や夏休み期間などは、イベントの開催で集客を狙います。「お菓子詰め放題」や「昭和風お面プレゼント」といった企画は、親子連れに好評です。こうした施策によって、単なる“お菓子屋”ではなく、“遊び場”としての価値を提供し、来店頻度や平均客単価の向上につなげています。
SNSの活用も欠かせません。Instagramなどで店舗の雰囲気や新商品、イベントの様子をこまめに投稿することで、地域住民に認知されやすくなり、リピーター獲得にもつながっています。
駄菓子屋ビジネスは成り立つ?
結論として、ショッピングモールに出店している駄菓子屋が、20円や50円の商品だけでテナント料を賄うのは非常に難しいのが現実です。しかし、それは「駄菓子屋=安いお菓子だけの店」という発想に縛られている場合の話です。
売れる商品やサービスを柔軟に取り入れ、イベントやSNSで来店動機を作り、単価を上げる工夫をしていけば、駄菓子屋でも十分にビジネスとして成り立たせることは可能です。
また、駄菓子屋は子どもにとっての“非日常の体験”であり、親にとっての“懐かしさ”を提供する存在でもあります。単なる利益追求だけでなく、地域とのつながりを重視した運営を行うことで、長く愛される店舗を作っていけるはずです。
店舗を開くうえで大切なのは、「どう売るか」ではなく、「なぜこの場所で、誰に届けたいのか」という視点です。その想いがしっかりと形になれば、駄菓子屋というビジネスにも十分な可能性があるといえるでしょう。
出典
一般社団法人日本ショッピングセンター協会 SC白書2024 ⅠSC賃料・共益費 2023(2022年実績)調査結果 概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー